34話 地位底上げのためにランクアップしました
裁判が終了した後、俺達はトレスアールさんに無罪となったから今までどおり自由にしていいと言われた。だが、その前に色々と話があるそうだからギルドに来て欲しいと言われた。
俺達は言われたとおりギルドに向かう・・・元々無関係だったジョージとワイトはそれぞれ持ち場に向かうようにと言ったが、あの事件があった後では俺の身に何かあっては問題だと言われトレスアールさんに頼んで、ジョージのクエストは後日まで保留、ワイトも一度トーマスさんのところに戻り事情を説明してギルドで合流することになった。
・・・・・・・・・・・・・・・
ギルド
「やあ、コウキ君ワイト君から聞いたが貴族と喧嘩したんだって?ははは、現場にいなかったことが残念だ」
ワイトと合流したら、師匠のトーマスさんまで一緒に来ていた。もう、ホワイトリー君ではなくワイトと呼ぶようになっていた・・・まあ、呼びやすいからね
「トーマスさん、どうしてここに?」
「ウィリアムの奴に呼ばれたんだよ。町長を含めてギルド会議を開始するとか言い出して・・・まあ、大方の内容はワイト君の話を聞いてピンときたわい」
ああ、なるほどね。多分この事件をきっかけに町のことを話すのだろう。
受付のミルさんに会うとすぐさまギルマスのウィリアムさんがいる部屋へと案内された。
部屋にはウィリアムさん、秘書のカンナさん、町長のトレスアールさん、そして才の仲間であるヒュウさんだ。
「やあコウキ君、災難だったようだね。すぐに駆けつけられなくて申し訳なかった」
「いえ、ギルドがモーランの悪事を暴いてくれたおかげで俺達は無罪になれたんだし。ギルドには本当に感謝しています」
「しかし、あのような者がこの町にいるのは問題でしょうね・・・これだから、貴族は・・・・やはり警備をもっと厳重にすべきでしょうか?」
「カンナちゃん、その話は後でしましょう・・・今回は別の話で呼んだのですから」
カンナさんは何かブツブツ貴族のことを言い始めだした・・・もしかして貴族と何かあったのかな?
「そうだ今回、モーラン元男爵がマリーさんを奴隷として買おうとした件なのだが・・・コウキ君、すまない我々がもっと注意しておくべきだった。今回の事件は我々の責任とも言えたのだ」
そう言いだし、ウィリアムさん、カンナさん、そしてトレスアールさんまでもが頭を下げた。
「え?あの、一体どういうことなんですか?」
「ノフソの森出身である君たちは知らないのも無理ではないのだが、この国は4年前まで魔国・ゼノと敵対していたのだ。社長・・・英雄サイのおかげで現在は友好的な関係を築いているが未だにその溝は残っている。特に貴族たちは未だに人間種以外の者を受け入れようとしない者が多い」
魔国・ゼノ、たしか5大国の一つで唯一魔王が治めている国だ。人間はおらず、ダンジョンの町みたいに人間以外の様々な種族が暮らしている国だ。才が以前、魔王と勝負したといっていたが、もしかしてこの国のことなのかな。
だがなんとなく理解できた。テスラが捕まりそうになったとき誰も彼女達を助けようとはしなかった、それどころかやけにあっさりと買収されるものがいるなと思っていたがそういう背景もあったのか。
「今回の事件は特に珍しいことではない。未だテオ王国ではそういう差別を持った奴が問題を起こす事件は多発している・・・まあ、トレスアールにとっては初の他種族問題だったかもしれないが」
ヒュウさんが軽く説明すると、トレスアールさんは苦虫を噛み潰したかのように睨んでいる。
「なるほど、そういうことですか。では、我々が呼ばれた理由はなんですか?」
「今回の事件をきっかけに、人間以外の種族に対して偏見を持つ者が出始めている・・・それを解消するために、君たちにはギルドメンバーとしての活躍を願いしたい。もちろんランクはギルマスである儂の権限で上げる」
なるほどね・・・この町の人間は簡単に言えば実力主義な思考の持ち主。魔人族や屍人族の合宿メンバーが活躍すれば、種族として見る目は変わるだろう。いうなれば俺達は架け橋のような役目を持つことになる。
ワイトなんかは鍛冶現場でもう受け入れられているみたいだし。ジョージも店に馴染んでいる。彼らの実力を見て頼んでいるのだろう。
「そちらの意見は分かりました・・・ですが、こちらも二つ条件を出してもいいでしょうか?」
「・・・何かね?」
「今後、ノフソの森に住む他の仲間たちが彼らのように技術を身につけるためにギルドに加入するつもりです。5、6名とかではなく何十人ものヒトがここに来るかと思います」
今は試しとして5人がここにいるが、今後はもっと多くの住民たちに技術を身につけてもらいたい。始めは技術を身に付けた合宿メンバーたちがダンジョン街で教える方向だったが、ここで学ぶ方が効率が良いと思った。
「分かった、それくらいならお安い御用だ」
それを聞いたウィリアムさんはあっさりと了承してくれた
「だけど、住む場所はどうする?あの別荘では少々厳しいんじゃないか?」
「はい、なので二つ目の条件は土地を売ってください」
「ん~あの辺りは一等地だからお金はかかるけど・・・うん、コウキちゃんの仲間だったらいいかな・・・特別価格で売ってあげる」
土地問題はトレスアールさんが了承してくれた、しかもかなり破格な安さだった・・まじでいいのかよ
「分かりました・・・なら大丈夫です。お前達もいいよな?」
俺が皆に確認を取ると頷いてくれた。ランクが上がるため仕事の幅はかなり広がったことに嬉しそうな顔をしていた。
本来、ランクアップするためには大量の仕事をこなしてポイントを稼がないといけない。それもかなりの時間が必要だ。
「とりあえず、儂の権限でCランクまで上げられる・・・本当ならAランクまで上げたいのだが、いきなり上げすぎると周りからの反感を買う恐れがあるかなら」
いきなり低ランクから上の下、Cランクまで上げてくれるなら文句は言わない。俺達はモニターを開いて、ウィリアムさんに見せる。そして、ウィリアムさんが自分のモニターを操作すると、俺達のステータスが変更されたのを確認できた。
「これで君達はCランクだ・・・まあ、ランクがCというだけで資格付きのクエストには受けられないが、そこは自身の実力で頑張ってくれ」
資格か・・・そういえばギルドでは試験とかあったな。
「そうだ、コウキ。社長から君に渡して欲しい物があるって言われていたんだった」
思い出したかのような顔をしたヒュウは、鞄から一つの包みと手紙を取り出した。
「なんか祝いの品だとか言っていたぞ。何のことか知らんが」
手紙の中身には『ダンジョンオープンおめでとう』と一言添えてあるだけ、そして包みの中身は分厚い本・・・だが、ページは真っ白だ、
「それ鑑定辞書じゃないですか!グランドマスターなんて高価なものを・・・」
カンナさんが物珍しそうに本を凝視していた・・コットジュ?そんな名前なのかこの本は?
「コットジュとは古代言語で『辞書』という意味を持っているのだ。それは特殊な本でな登録者が【鑑定スキル】を持っていると今まで鑑定したものが記録される仕組みになっておる・・・人生辞書とも言われておりとても高価な魔法の本なのだ」
俺が不思議そうに本を見ると、ウィリアムさんが説明してくれた。なるほど・・・それは面白そうだ
「今度、才にお礼を言わないとな・・・人生の辞書か・・・」
出合ったモノ、動物の生態・・・それらが全てこの本に記される。まるで図鑑みたい・・・・・
あれ?
「・・・これ、使えそうだな」




