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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第三章 街合宿編
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31話 誘惑しようとしたら惚れました

※誠に勝手ながら29話、30話に登場したトーマス・ジェファーソンの名前をトーマス・ドゥーリーに変更しました。話の内容はそのままですのでご了承お願いします。

私の名前はタマモ。

妖人族・九尾種で出身は地下24階層。


かつては妖怪・九尾としてダンジョンで生まれたが、フロアボス・エドワード様によって妖人族として進化を果たしました。


私は他の住民と比べて知能が高い。九尾として生まれた時点でその知能は一般のポップモンスターたちの中でも上位に入るほど。進化したことで知能が大幅に上がり、さらに宴の時、エイミィ様からレアスキル【解析】を授かったのです。そしてその頭脳を買われダンジョンの最重要部門とも言われている『ダンジョン管理部門』の一員として働くことになった。


ダンジョンに住む者にとって誰もが憧れる部門。その理由は一つ、ダンジョンマスターであるコウキ様直属の部下として働くことが出来るからなのです!


「まあ、私なら当然よね♪」


元九尾である私の性格は他人から見たら良いとは言えないでしょう。それはそうよ。だって、私は九尾。人を騙し、おちょくることを何よりも楽しみにしている。


自分の容姿にも自身を持っている。流石にエイミィ様やメリアス様のような神々しさは無いが、それでも多くの男たちを魅了する自身は持っていた。


コウキ様も私の魅力で誘惑しよう・・・そう考えていた

・・・・・・・・・・・・・・・・・

管理室


「はじめまして・・・今日から君たちと一緒に働く神埼・エドワード・光輝だ、よろしく」


私たちの目の前にはあのダンジョンマスターである、コウキ様が立っていた。さすが最重要部門に選ばれるメンバーというべきか、全員が平常心のままコウキ様を見ていた。と言っても、心の中では興奮と緊張が暴走状態になっているのは明白だ。ただ顔に出さないように必死に堪えている。


ここはダンジョンの中を監視するためにコウキ様が特別に作った部屋。壁にはダンジョンの図面らしき巨大モニターとその周りに20以上の映像が映し出されている。中にはモンスターと戦っている冒険者の姿があった。


「さて、現在このダンジョンには何百人もの冒険者達が次々とダンジョンに挑んでいる。君たちの仕事は彼らの行動を監視すること。たまに冒険者達がやられたときに道具を落とすから待機している回収班の指示も任せたい」


聞いている限りだと仕事は実に退屈な内容だ。これなら私じゃなくても余裕じゃないかと思った。

・・・・・・・・・・・・・


「B区、冒険者30名が全滅。回収班はこちらの指示に従って動いてください」

「J区にいる回収班、冒険者が近づいています。すぐに撤退をしてください!」

「H区オークジェネラルが接近しています。すぐに撤収してください」

「G区!さっきから反対の方向行っているじゃないか!下に向かいなさい!・・だから違う!」


前言撤回!余裕なんてレベルじゃない!


次々とやられる冒険者たち。そして、光の粒子となって消えた冒険者がいたところには武器や防具が落とされている。


回収班の手が足りず、効率の良いルートを的確に説明しなければならない。伝達係である私たちも頭がパンクして説明もおかしくなっている。隙あらばコウキ様を虜にしようと思っていたがそんな暇は全く無かった。


そんな混乱状態にいる監視室にコウキ様は余裕な表情でモニターを見ていた。


「コウキ様、これじゃ収集がつきません!」


監視チームの1人、蟲人族・蜻蛉種のフライがボサボサの頭を抱えながらコウキ様に言う。


「ん~これは予想以上だな・・・仕方ない。回収できる範囲で構わない、もし冒険者達が近くにいたらすぐに撤退するように」

「え?でもそんなことをしたら冒険者たちに回収されてしまいますよ」


「構わないさ。それよりも回収班たちに何かあった方がマズイ。管理チームは冷静にマップを見て彼を誘導してくれ。回収班も無茶な行動は慎むように、もし危険だった場合は回収しないで街に転送してくれ。今日は初日だ、失敗したって構わない。次に活かせ」


コウキ様の言葉には【精神魔法】でもかかっているのだろうか?さっきまで慌てていたメンバーや文句を言っていた回収班が落ち着きを取り戻した。


『「「「「「了解しました」」」」」』


その後、コウキ様も時々指示を出してもらい回収は順調に進んだ。いくつかの防具は運よく見つけた他の冒険者の物となったが、こちらの利益と比べたら微々たるものであったと、総合データを見て理解した。


「お疲れ様・・・皆初日お疲れ様。このデータから見ても良い結果なのは間違いないね」


現在、ダンジョンにいる冒険者の数は約150名。あの大群の中でたったこれだけの冒険者が生き残ったと考えると冒険者とはかなり軟弱な生き物だなと思った。現在、ダンジョンにいる冒険者たちは確かに生き延びたがそれはあくまで運よく生き延びたに過ぎない。


私がいた地下24階にいるモンスターが相手だったらおそらく冒険者側は全滅になっていたに違いない。殆どの冒険者が安全地帯と設定されている場所で休眠を取っている。何人かは未だにモンスターとの戦闘を行っているがあと少ししたら負けそうだなと思った。


「失礼します。夜チームが揃いました、引継ぎをしたいのですがデータはありますか?」


部屋に入ってきたのは私たちと同じ管理チームで夜のダンジョンを担当するメンバーたちだった。流石に24時間ずっと見ているのは厳しいと考えたコウキ様は朝、昼、夜の3チームに分けることにした。


「はい、これが引継ぎのデータ。現在殆どの冒険者たちが安全エリアで休眠を取っているから、これが安全エリアの映像、こっちがまだ探索をしている冒険者の映像で・・・・」


引継ぎチームにあらかた説明も終わり私たちの仕事をようやく終わった。流石に体力的にかなりきつく早く休息を取ろうと思い街へ転送する。


・・・と思ったのだが


「コウキ様?まだ仕事をされるのですか?」


コウキ様を見ると今日一日のデータをまとめた資料を見ながらモニターを操作していた。


「ん?ああ、これからフロアボス達に現状を報告しようと思ってね。そのために集めた資料を見やすくしようと思って・・・よし出来た」


大量に積まれていたデータを簡潔にまとめた資料が完成されるとコウキ様の前に9束の資料が出現した。


「あの、今一体何をしたのですか?」

「君たちが纏めてくれたデータを俺のモニターに読み込んでそれを見やすく纏めたものをアイテム化させたんだ・・・これ便利なんだよね。一度作っちゃうとダンジョンの魔力を少し消費するけど簡単に量産できるんだ」


詳しいことは知らないけど、おそらくコウキ様だけが使える特殊スキルなのだろう。ダンジョンマスターであるコウキ様はダンジョンに堪った魔力を自由に使ってアイテムなどを出すことが出来る。アイテムの質によって消費される魔力は変わるらしく、紙程度なら簡単に作れるらしい。


「フ、フロアボスたちですか?ではエドワード様も?」

「そういえば、君はエドの担当フロア出身だったね・・・そうだ、このデータの報告するの手伝ってもらえないかな?今後俺がいないときでも皆に伝達できるようにしたいし」


何を言っているのですかこの方は!それは私に対して死刑宣告しているようなものです!何故私がフロアボス様たちが集う場所に・・・


生まれてまだ1ヶ月も経たない私だが走馬灯のように過去の記憶がよみがえってくる



ああ・・・私ここで死ぬんだな。せめてもう一度あの宴で食べた肉が食べたいな



「おーい、タマモさん?大丈夫か?」


我に返るとコウキ様が覗き込むように私を見ている。


「は、はい!ご一緒させていただきます!」


頭が混乱し、コウキ様の要望を思わず承諾してしまった。だがもう後の祭だ、こうなったら当たって砕けるのみよ!さらば私の人生。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コウキ様が纏めてくれた資料は非情に見やすかった。一応今日一日のデータは全て記憶してあり説明する自信はあった。だけどコウキ様の資料には今後の課題や今日の良い点、これから先の予測データなどしっかりと明記されており、自分が考えている以上に記載されていた。


「それじゃあ、説明をお願いしてもいいかな?」

「はい・・・ですが、いいのですか?私なんかがフロアボス様たちが集まる場所に行っても?」

「大丈夫さ・・・それに君がいればあいつも余計な発言はしないだろうかな」


コウキ様が誰のことを言っていたのかは分からなかったが、おそらくフロアボスの中でもコウキ様が少し苦手としている方がいるのかもしれない。


私が知っているフロアボス、エドワード様はコウキ様のことを崇拝しているし、実に深いことをよく言うから少なくともエドワード様ではないでしょう。


フロアボス達が集う部屋は思ったより狭かった。天井には光を放つ筒見たいのなのが設置されており、部屋の中央にはいくつかの白いテーブルがくっついた状態で置かれている。置くには白い壁みたいな置物があり『ダンジョン運営初日会議』と殴り書きされた文字があった。


「あ、あの本当にここで会議をするのですか?」

「そうだよ。皆まだ来ていないようだしとりあえず資料を椅子の前に置いてくれるかな」


コウキ様の指示通りに資料を置き、フロアボス様たちが来るのを待った。そして10秒も経たないうちに1人目が入り口に転送してきた。


「コウキ様。運命の理によりただいま戻りました・・・」


最初に現れたのはエドワード様だった。そういえばエドワード様ってどこかコウキ様と似たところがあるのは気のせいだろうか?そして、エドワード様を見たコウキ様の顔は少し引きつった様子で「偵察、お疲れ様エド」と言った。


そして、次々とフロアボス達が入ってくる。最後にエイミィ様がやってきてこの小さな部屋にダンジョンの最重要人物達が勢ぞろいした。


本当、私だけ場違いな気がして仕方ない。


「皆集まってくれてありがとう。皆も気になっている今日のダンジョンの報告をしようと思う。手元にある資料を見てくれ」


切り出しはコウキ様がしてくれた。だが後は私に任せるという風に私を見るとコウキ様も資料を広げて席に座った。


「それと、今後俺がいない時でもダンジョンの状況を通達するために彼女にも会議に参加してもらった」


コウキ様がそういうと全員の視線が一気に突き刺さる・・・


ヤバイ、もしヘマなんか仕出かしたら絶対殺される!


見ただけでフロアボスの力量はバケモノクラス。冒険者たちがこんなヒト達を相手にすると考えるとご愁傷様としか言えない。


落ち着けタマモ!私は気高き九尾種!常に平然として話すのよ!九尾とは優雅であるべし。これは一種の試練でもあるのよ!乗り越えろ!そして更なる高みへ!


そして丁度その時、頭の中で声が聞こえた


【リンク】によって以下のスキルを習得しました

【精神魔法:沈静化】、を習得しました


天よ、ありがとう!


急いでスキルを発動させるとさっきまでの緊張感が嘘みたいに無くなる。そして一度深呼吸をした後に説明を開始させた。


「はじめまして、地下24階層出身、妖人族・九尾種のタマモと申します。本日はダンジョン管理部門の1人として皆様にダンジョンの現状をお伝えしたいと思います」


それからは疲弊した脳に鞭打って、フロアボス様たちに説明をしていく。皆様は始めは冒険者たちへの愚痴などを言っていたが、真剣にダンジョンのことを考えてくれているのがわかった。


エドワード様も何か嬉しそうに資料を黙々と見ていた。


「じゃあ、以上を持って会議を終了する。皆今後も気を引き締めて臨んでくれ」


コウキ様が最後に締めると全員が元の担当フロアに戻って行った。まさに嵐のようなヒト達だ。


「タマモもお疲れ様。はじめての会議なのにあんなに落ち着いて説明できるなんて凄いな」


残ったコウキ様に褒められて嬉しく感じたが丁度その時、沈静化が解除されたみたいで足の力が急に抜けて座り込んでしまった。


「は、ははは。お見苦しい所をお見せしました」


私は足に力を入れようとしても、動く気配が全く無かった。ヤバイ、これ完全に腰が抜けちゃっているよ。


「ほら、立てる?」


そう言ってコウキ様は優しく私に手を差し伸べて立ち上がらせてくれた。


「ゴメンないきなりこんな役目を任せちゃって」

「い、いえそんなことは・・・・」

「これからもよろしくな!」


その言葉を聞いた瞬間私の心の高鳴りが全身に衝撃を与えた。何だろう、この感じ。嬉しいとか興奮とかそういうレベルではない・・・何か心の底から沸き立ち満たされる気持ちにさせられる。


「明日も仕事だ。期待しているよ」

「は、はい!」


始めは慢心な気持ちでこの職場に就いた。でも今は違う、私は自分の強い意志でこの職場にいたい・・・そう思えた。そして、この人の傍で一緒に・・・・


『ちょっと、コウキ。今いい?さっきのデータで聞きたいことがあったんだけど。すぐ来てくれない』


丁度その時、コウキ様のモニターが開きエイミィ様の姿が映し出された


「お前な・・・分かった今行くよ。それじゃ、タマモまた明日な」


呆れた様子で言いながらもコウキ様は少し嬉しそうにモニターを操作して転送したコウキ様。残された私は心に満たされた何かが一気に対抗心の炎に変換されるのを感じた。


「ふ・・ふふふ、いいでしょう。相手が神でも受けて立ちますわよ!コウキ様の隣にいるのはこの私!タマモなんですから!」


それが決して生易しいことではないのは百も承知だが、恋する乙女に『棄権』という言葉は存在しないのだ。





今回はタマモ視点の話です。彼女もまた住民の中で急成長していくメンバーの1人です。今後の彼女の成長と活躍に期待していてください。


タマモ、ワイト、トーマスの詳細を追加しましたのでそちらのほうも見てください。

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