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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第三章 街合宿編
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28話 クエストをやったらおつかいでした

合宿二日目


本日から本格的にギルドメンバーとして活動することにした。テスラはリフォームの仕事があるため引き続き作業をしてもらい、俺は残りのメンバーを引き連れてギルドに向かった。


ちなみに合宿メンバーが所属しているギルドは以下の通り。


鍛冶ギルド:ホワイトリー

仕立ギルド:プラム

料理ギルド:ジョージ

芸術ギルド:マリー

大工ギルド:テスラ


見事に全員バラけたな・・・俺が所属する冒険者ギルドと商人ギルドを入れてもかぶるものは一つもない。


・・・・・・・・・・・・・・

ギルド


俺達は自分達の仕事をこなすためそれぞれ自分が受けたい仕事を選ぶことにした。俺達は全員ギルドに入ったばかりのためランクは当然最下位、受けられるクエストも簡単なものばかりだ。


「それじゃあ、皆それぞれの所属ギルドから自分が受けられるクエストを取ってきて。それでクエストを受けたらここに集まろう」


俺がそう指示するとそれぞれ自分のギルドがある場所へ向かった。俺も冒険者ギルドに向かいクエストを選ぶことにする。


冒険者ギルドのある部屋に入ると壁には大量の文字が表示されたモニターがズラーっと並べられていた。それぞれに依頼内容や条件などが書いてあり、まるでファンタジー世界のクエストボードを近未来化させたような感じだった。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。初めて依頼を受けられるのですか?」


俺がボードを見ていると後ろからミルさんと同じ制服を着た女性が話しかけてきた。


「ええ、出来れば簡単なクエストを受けようかと思いまして・・・」

「なるほど、でしたらこちらはどうでしょう?本日依頼が来たものなのですが『ゴリランチ出前従業員募集』、『オーロンペットショップ、バトルウルフの散歩50匹分』、『ユーバラ牧場の芝刈り』・・・どれも収入は大きいですよ」


それ・・・バイトじゃん!いや、このギルドのことを考えたらそういう依頼があって当たり前か・・・いや、でもこれってクエストなのか?物凄く雑用でテンションが下がるのだが。


「あの・・・もう少し冒険者らしいクエストってありませんか?「討伐系」とか「納品系」とか・・・・」

「そうですね・・・『討伐系』はここ最近冒険者が急増したせいもあって、近くにいる魔物とかはあらかた狩り尽くされましたから・・・『納品系』も誰も出来るクエストはすでに他の冒険者たちが済ませていますから・・・・・」


ああ・そうだよな。ゲームとかだと必ずあるようなクエストだけどこれは現実。『特定のアイテム20個納品』というクエストとかあっても100人が同じクエストを受けられるわけじゃない・・当然一番乗りとかあるはずだ。


「あ・・一つだけありました。『薬草の調達』報酬は2000E・・・報酬は安いですが」

「それ受けます!」


これだよこれ!薬草の調達!ファンタジー世界の定番中の定番のクエスト。こういうクエストだから異世界って気分になれるんだ!


俺は迷わずそのクエストを受けることにした。


「かしこまりました、ではまず前金を支払います」

「え?クエスト受けるのにお金かかるの?」

「ええ、ですがクエストが完了しましたら報酬と共に全額返金します。クエストを受けて放置したり勝手に破棄される冒険者を減らすためにこの制度が導入されています。このクエストをお受けになるのでしたらこちらのモニターに触れてください」


なるほどね・・・前金は報酬の約半分、ただ受ければ良いってわけではなさそうだ。しっかり自分が出来る範囲でやらないと逆に損する可能性がある。そういえば、こういう設定のゲームも以前遊んだことがあるな・・・・名前は忘れたが。


女性がモニターを俺に見せ、内容を確認して『受注』のボタンを押した。

すると俺の所持金が少し減少したのが確認できた。


「では、これでクエストが受注されました。今日から2週間以内に指定の品を持ってきていただいたらクエストはクリアとなります」


俺がモニターを確認すると新たに『クエスト』という文字が表示され現在自分が受注しているクエスト名が表示された。


その後、俺は受けられないがどんなクエストがあるのか色々と見回った。


「『古代遺跡ババルの調査』、『邪龍退治』・・・うへぇ、こんなクエストなんかもあるのか・・・お、『一日門番』もある、あのオバチャンが受けていた奴だな」


簡単なアルバイトから上級冒険者が受けそうな難関クエストまで幅広い依頼がモニターに映っている。やはり、上級であればあるほど条件は厳しく、『薬剤師スキル5以上』や、『ギルド秘書試験1級合格者』とかランクのみでは受けられないクエストが多かった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

廊下


「あれ?ワイト、もうクエストは受けたのか?」


クエストの確認を終え、集合場所に向かうと廊下の隅でワイトがポツンと1人だけ立っていた。


「はい・・・鍛冶ギルドのクエストは殆ど長期間で行われるクエストが多いので数はそこまで多くありませんでした」


ああ、確かに武器とか作るのにも沢山の工程を踏んで作業を行うのが多い・・・ゲームとかだとすぐに作れるけどこっちの世界だとそうじゃないのか。


「それで?何を受けたんだ?」

「『アイアンソード3本納品』です・・・正直簡単すぎかと思いましたが受けられるのがこれしかなく」


おお、これもゲーム定番のクエストだな。鍛冶スキル持っているわけだし今度入ってみようかな?


「そうか、でも工房はどうする?あの別荘にはまだ工房が作られていないと思うが」

「・・・鍛冶ギルドが所有している施設にメンバー用の工房があるのでそこで作業します」


なるほど。さすがギルド、ちゃんと作業場まで設けているとは。


「・・・出来ればもっと難しいのを作りたかったのですがまだランクが低いので高いクエストは受けられないのです」


まあ、それはそうだ。俺だって受けられるクエストはそこまで無かったし。


しかし、ワイト・・・自分のこととかに関してはネガティブになるのに鍛冶となるとかなり強気だよな


「ワイトって武器を作るのが好きなのか?」

「・・・好きというか。自分が出来ることはこれくらいなので。ゾア様ともよく一緒にロボットの改造をしたりしていましたし。武器のことも色々と勉強していました」


あいつ、子供に何教えているんだよ!


「それに僕はこの力でコウキさんの役に立ちたいから・・・これくらいしか取り得ないですし。僕が頑張らないと街の住民としていられないような気がして・・・・」


なるほどな・・・ゾアからも聞いていたがやはり自分が違うことを気にしているのか。


「ワイト・・・そんなことは無いぞ。お前はお前らしく暮らしていいんだ。それに、皆お前のことを仲間と受け入れてくれている」

「・・・コウキさん・・・僕に同情しているのですか?今朝から僕に対する感情が違います」

「何故そう思うんだ?」


俺の質問にワイトは真っ直ぐ俺を直視した。すると彼の蒼い瞳が段々薄く変色していくのが見えた。


「僕に嘘は通用しませんよ。僕は皆と違う・・・このスキルがあるから」


普通に聞いていると『俺はお前ら下等な存在と違うんだ!』と捉えそうなセリフだが、彼にとっては逆。自分は皆と異なっている・・・自分だけがおかしいのだと思っている。


「ワイト、それはユニークスキルなのか?」


ユニークスキル・・・この世界に限られた者だけが手にすることが出来る特別なスキル。エイミィが【恩恵】で与えられるスキルと異なり、個人が生まれ持った『才能』とも言えるスキルで、ある国ではユニークスキルを持つ者は無条件で宮廷魔導師あるいは聖騎士団に入れるなど、高い地位を約束されているところもあるらしい。


「はい、僕のユニークスキルは『魂眼こんがん』・・・相手の魂を色と形で見分けることが出来ます。そして、魂の変化によって相手の考えていること、感情などが分かることが出来ます」


なるほど、ミーシャの『心眼』に近いスキルだな。あいつの目も人の考えや、物に込めた感情とかを視る事が出来る。だが、ワイトのは対人に特化したスキルのようだ。


「なるほどな・・・だが、それだけで住民ではないという理由にならないぞ」

「それだけではありません・・・僕はゾア様に・・・『召喚された死霊だろ?』・・・え?」

「昨日、ゾアと連絡を取ってお前のことを教えてもらった・・・だから気にするな、知った上で俺はお前がダンジョンの住民だと・・・」


俺はそうやさしく言ったが、俺がワイトの正体を知っていると知った瞬間、彼俺に背を向けて走り出した。


「おい!ワイト!・・・クソ!もう少し落ち着いてから話すべきだったか。ああ、何で俺はいつもこういう事に失敗ばかりするんだよ!」


俺は自分に毒づきながら走り出すワイトを追いかける。


廊下には他の冒険者やギルドメンバーが歩いており、小柄なワイトは隙間を見事にすり抜けるが、大人の俺は思うように動けない。気が付くとワイトの姿は見当たらない。


「コウキさん!何かあったのですか?」


振り向くと驚いた様子のプラムが大量の本を抱えてやってきた。


「プラム・・スマン、ワイトがいなくなった。あいつを探すのを手伝ってくれ」

「わ、分かりました。他の皆さんはどうしますか?」

「あ、そうだった。俺が全員に連絡する。プラムはあっちを探してくれ。俺は出口の方に行く!」


その後、クエストを受けた他のメンバー達に連絡を取りワイト捜索を命じた。

だが、誰もワイトを見つけることが出来ず、一日が終わろうとした。


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