27話 友達が欲しかったから死霊を呼びました
今回は初の他キャラの過去話です。
今後もメインキャラ以外のストーリーも書いていこうと思います。
目が覚めたとき僕はガラスのケースの中にいた。
「目が覚めたみたいやな・・・といっても、今の君には目は無いか。この場合『気がついた』が正しい表現なんやろうか?」
僕の目の前には黒いフードをかぶった褐色肌の少年が見上げるように言った。
目が無い?でも、はっきしと僕は彼を見れている。
自分の身体を確認しようと下を向くと360度回転、横を向こうとすると360度回転。
何故だろう、身体を動かしたつもりなのに変な風に景色が回る。
だが、今ので分かったことは僕には身体が無いということ
そして今の僕は死霊となっているということだ。
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少年の名前はゾア。ここはダンジョンという建物の中らしく、彼は地下22階のフロアボスを担当しているらしい。
正直、何を言っているのかは分からない。ダンジョンとは何なのか、フロアボスとは何なのか・・・いや、それよりも自分は何なのかが分からない。
「君はワイの研究で呼び出した『死霊』や・・・ちょっと実験に付き合ってほしくてな・・・まあ、話し相手がほしいというのもあるんやけど」
ゾアはヘラヘラとした顔で子供くらいの大きさの人形を取り出した。見た目は人間、肌の色が少し白い。
「これは『器』。ワイが実験で作ったホムンクルスの身体や。これから君はこの身体に入ってもらう。これに入れば人間と同じ五感が働くようになる・・・・はずや」
ゾアが指パッチンで音を鳴らすとガラスケースは消え僕は自由に動けるようになった。
このまま逃げ出すということを考えたが、現状を考えてそれは得策ではない。というよりも逃げる理由が無い。僕は、ゾアが用意した器に入ることにした。
なんというか不思議な感じだった。死霊であるためか器に触れると吸い込まれるように入り込み、一瞬真っ暗になったら今度は視点が変わり目の前にゾアがいた。
「どうや?身体のほうは問題ないん?」
さっきまでと違い、身体は重く感じるがこれは死霊であった感覚がまだ残っているせいだ。さっきまで、視覚と聴覚しかなかったが、今は空気の流れを感じる触覚、舌から伝わる味覚、部屋の異臭を感知する嗅覚・・・人として持つ五感を今しっかりと確認できた。
僕はゆっくりと頷きゾアは満面な笑みを浮かべた
「よっしゃ!実験は成功のようやな・・・ではさっそく君の名前を教えてくれ」
「・・・・無い」
「ナイ?・・・君の名前はナイ?」
「いえ・・・記憶がないのです・・・思い出そうとすると頭の中が真っ白になって・・・ですからあなたに教える名前も分からないのです」
ゾアは一瞬困った様子だったが、すぐに切り替えたのか再び笑う。
「そうか・・ならしゃーない。なら名前はワイが決めるな。・・・・君は死霊だったからワイト・・・頭が真っ白・・・ホワイト・・・ホワイトリーなんてどうやろうか?」
ホワイトリー?
「ホワイトリー・・・うん、これでええやろう。今日から君の名前はホワイトリーや!」
ホワイトリー・・・それが僕の名前
「ええか、ホワイトリー。今日から君はこのダンジョン住民1号や・・・まあ、コウキさんには内緒やけど。しばらくはワイの助手として働いてもらうで」
ゾアは僕の話を全く聞かず、勝手に話を進めていた・・・だが、ダンジョンの住民。それは何故か心が安らぎ・・・受け入れられた気持ちになれた。
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数日後
僕はゾアの助手としてダンジョンの掃除や実験の手伝いの日々を送った。また、勉強などを教えてもらい様々な知識を吸収していった。
ホムンクルスである自分は食事の必要は無く、空気中にある魔素を吸収すれば生活は出来るらしい。もちろん、味覚があるので食事をしようと思えば食事をすることも出来る・・・まあ、この部屋に食べられるものがあればの話だが。
地下22階・・・・フロアボス、ゾアがいるこのフロアには二つの部屋しかない。一つはダンジョンに挑んできた冒険者と戦うためのスペース。このスペースだけで22階層の7割以上を占拠している、そして残りの3割がゾアの私室・・・もとい研究所である。
3割といっても、物凄く広い。ゾア曰く『トウキョウドーム1つ分の広さ』らしい・・・トウキョウドームって単位のことだろうか?
まだ、地下22階層以外の部屋には行ったことがないが、いずれ行けるようになれるとゾアに言われた。時々、ダンジョンの話をしてくれて、その話はとても興味深く僕の楽しみの一つでもあった。またダンジョンマスターである、コウキ様の話をするときはなんかいつもより嬉しそうな顔をしていた。
「ワイトは外に興味があるんか?」
始めはホワイトリーとちゃんと呼んでもらっていたがいつの間にか『ワイト』と省略された・・・まあ、自分も言いづらいからこっちの方がしっくりくる。
「はい・・・ゾアからダンジョンのことを聞いて自分ももっと色んなことを知りたくなりまして」
立場上、ゾアは僕の上司となるので二人で話すときは呼び捨て、誰かいるときは『さん』か『様』付けで呼ぶようにしている。まあ、いまだ二人だけだからまだ彼のことを様付けで呼んだことはない。
ゾアから、このダンジョンを守るフロアボス、ダンジョンマスターであるカンザキ・エドワード・コウキ、そして神様であるエイミィのことを聞いた。いずれ会わせてくれるらしく、その時が楽しみだ。
現在コウキ様は人間が住む近くの村か町に出かけているらしい。
「せやな・・・ワイはフロアボスとしてここを離れることは滅多に出来ないけど。ワイトなら許可さえあれば出られるはずや」
「ところで、ゾアこれ何の実験なんですか?」
ゾアの実験は身近で見ていたが未だに何の実験なのかは理解できない。目の前には『DS-021』
と書かれたゴーレム・・・ゾア曰く『ダンジョンセキュリティー21号』の略らしく、ゴーレムではなくて『ロボット』というモンスターらしい。モンスターといっても生物ではなく無機物らしく、正確には生きてはいないらしい。それでもダンジョンの中ではモンスターとして登場するらしい・・・実に謎である。
「いま、この21号君をパワーアップさせようと思って改造を施しているんや。足の部分にロケットエンジンを搭載して、肩には小型ミサイルを・・・いや、ここはレーザービームのほうがええやろうか・・・・22号君と連携するシステムを入れて・・・・合体させるちゅうのもロマンあるな!」
ゾアが口にする単語は理解できないが本人が楽しそうなら別にいいだろう。
「始めはワイトの身体もホムンクルスではなく、こっちのロボットにしようか悩んだんやで。そうすれば、ワイトを最強に改造できたんやけどな」
今、初めて自分の器がホムンクルスであったことに感謝した。そして、ゾアが危険人物であることを再確認した。
「・・・・・」
「冗談や・・・本気にせんで」
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さらに数日後
コウキ様が戻ってきたらしく、すぐに会議が行われた。ゾアが戻ってくるとかなり真剣な様子だった。
「ワイト、これから広間でデカイ実験を行う・・・今ワイの担当しているフロアに存在するポップモンスターたちが転送されるからお前も来てくれ」
ゾアの言葉の意味を理解できなかったが、彼が頼むということは何か大きなことに違いない。
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地下22階層 ボスの間
広間には大量のロボットや機械を身につけたゾンビみたいなのがいた。中には僕と同じようなホムンクルスもいる。
「これが全部、ポップモンスターですか?」
「せやな・・・これでも少ない方やで。地下フロアは基本的に強力なモンスターが出現するから、その分ポップの率が低いようになっているからな」
「それで、これからどうするんですか?」
「今から、ワイの魔力を分ける・・・そしたら、お前達は晴れてこのダンジョンの一員や」
ゾアがそういうと僕の頭に手を乗せて何かが流れ込むのが感じた
「君はワイにとって特別や、せやから先に渡しておくで」
そのまま、意識を失い目が覚めた時には僕の周りには会ったこともないヒト達が沢山横たわっていた。
「ここは・・・研究室?」
起き上がるとすぐ近くにあったガラスケースに反射した自分の姿が見えた。
姿は相変わらず子供であるが、髪の色が黒から白と灰色のグラデーションに変色、肌の色もやや白くなり見るからに不健康そうな姿。だが身体に異常は無くむしろ快調と言える。目の色も灰色であったが今は透き通るような青い目をしている。
「やっぱり、先に起きたのはワイトやったな」
振り向くとゾアがどこから出したのか大きなベッドで横たわっていた。そして、今まで見たこともないくらい、衰弱していた。
「ゾア、これはいったい」
「まずは、おめでとう。元々死霊だったせいかホムンクルスの身体と混ざって君は『屍人族』に進化したみたいやな」
進化?・・・何のことだ?
「ダンジョンマスターである、コウキさんはポップモンスターたちを消すことを拒み、全員をこのダンジョンの住民として受け入れた。せやから、ワイらフロアボス達はモンスターたちが生活しやすいように進化させたんや」
つまり、周りで寝ているヒトたちは皆、ゾアが担当しているフロアに出現していたモンスターたちということ?
「しかし、流石に疲れたわ。ワイ、フロアボスの中じゃ一番魔力少ないせいか、今は殆ど空っぽ。今ならスライムにすら負けそうな気分や」
ゾアは愚痴りながらもやりきったようにニコやかに言った。
「スマンが、ワイはしばらく休ませて貰うで。起き上がった住民達にはワイトが説明しておいてくれ」
っちょ!何を言っているんですか!
「説明って何を!」
「もう直皆を歓迎する宴を開催するから、それまで待機と伝えておいて」
そう言い残し、ゾアはベッドにもぐりこみ爆睡状態になった
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ゾアが寝てから数時間後、次々と起き上がる新たな住民達に僕は一生懸命状況を説明した。
「・・・・・なので、ここのフロアボスであるゾア様が起きるまではここで待っていてください」
住民達は意外と大人しく僕の話を聞いてくれたおかげで変な騒ぎを起こさずに済んだ。また、お互いのことを知るためにいろいろと情報交換などした。
僕と同じように屍人族もいれば、ロボットが進化した機工人、獣人・キメラ種などかなり興味深い人たちだった。
「では、ワイトさんはゾア様の助手なのですか?」
「ええ・・そうなりますね」
おお~
ゾアの助手ということで何故か住民達から崇める目で見られた
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「やぁ皆。ワイが地下22階層のフロアボス・ゾアや!よろしゅうな!」
ゾアの陽気な挨拶で住民達の間ではかなり緊迫した空気になっている
「・・・ワイト、ワイなにか変なこと言ったか?」
「それは、ゾアが起き上がっていきなり皆を集合にかけたからです」
ゾアが起き上がったのは寝始めてから丸二日・・・その間僕達はやることがないからフロアの整備や談笑などして時間を消化させた。
「なんや、そんなことか・・・えー皆、ワイトから話は聞いておると思うが、これから皆を宴に招待するために地下45階層へ移動させる。そこには君たちと同じように元々ポップモンスターであった住民達が集まる。今までもそうやったけど、これからは同じ場所で暮らす仲間。ダンジョンマスターであるコウキさんも仲良く暮らすことを望んでおる。せやからもし揉め事とか起こしたら承知せんで!」
最後のは脅しとも取れる発言だが、少なくともここにいる者達が理由も無く暴れることはないだろう。
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地下45階
ゾアに案内され転送装置で地下45階に着くとまぶしい光が全身を包み込んだ。薄暗い研究所と違い見たこともない緑色の絨毯や天井は空色に青かった。
「ゾア・・・あれって」
「あれは、太陽系魔法が天井に施されていてダンジョンの外と同じように明るさが自然と変わるようになっている。あと、地面に生えているのは草という植物や。ワイのフロアにはない物ばかりやからワイトたちにはいい刺激になったかもな・・・さすがコウキさんや。ワイらが考えていることの遥か先を見ておられる」
正直、そうなのだろうか?と疑問に思ったが、コウキ様が自分達のためにこの場所を用意してくれたのは間違いなさそう。そしてゾアについていくと、僕達以外の住民達がすでに集合していた。キメラ種のように毛深い人や、ゾアみたいに耳が尖った人・・・でも肌の色は白くて金髪、背の小さいオジサンや、背の高いお姉さんなど・・・自分の世界が一気に広がったのを感じた。ゾアに聞くと自分達を含め2000人以上いるらしい。
僕達が整列すると、目の前には見たことがない鉄の台が設置されており、その上に男女が立っていた。男の人が前に立つと全員に聞こえるように【拡声魔法】がかかったのが見えた。
「皆、はじめまして。俺がこのダンジョンを任されている神埼・エドワード・光輝だ。そして、ようこそ俺達のダンジョンへ。君達は生まれたばかりで何をしたらいいのか分からないかもしれない。でも今はいい。これから学べばいいんだ。君達がダンジョンから生まれ、元は魔物だろうが、種族が違おうがそんなの関係ない!君達は『生きている』!生きて学び、生きて成長し、生きて助け合う!俺が理想とする未来はそんな場所だ。だから・・・これは俺からのお願いだ!全力で生きてくれ!共に理想とする未来を創ってくれ!」
『生きている』・・・・その言葉に僕は今までにないくらい胸の高鳴りを感じた。元死霊であり今は『屍人族』である僕にとって『生』とは無縁なものだと思っていた。だが、あの人は僕達のこと・・・僕のことを『生きている』と言ってくれた。ゾアがあの人のことを気に入るのが分かった気がした。僕もまた、この人のために尽くしたい・・・この人の理想を叶えたい、そう思えた。
コウキ様の演説が終わり沈黙した空気の中、先に拍手をしたのがゾアの隣に立っていた男性。それに続き他のフロアボス、そして僕達住民達が歓声を上げながら拍手をした。
後で知ったことだが、彼は地下33階層のフロアボス。エドワード様で、コウキ様と同じ名前を持つ人だった。
そして、コウキ様と入れ替わるように前に立ったのは綺麗な金髪の女性だった。
「皆さん・・・ようこそアルヴラーヴァへ。私は、三大神の一柱、『創造の女神:エイミィ』です。皆さんが生まれたこと、この場に集ったこと・・・そして、これからの未来に祝して私、『創造の女神』から祝福を与えたいと思います」
皆は彼女を見た瞬間よどめきだした。彼女がゾアの言っていた神様?フロアボスが守るもう1人の方。
エイミィ様が祈りを捧げるポーズを取ると、全身が光だし僕達を優しく包み込んだ。
何が起きたのかは分からない・・・おそらくこれがエイミィ様の祝福なのだろう。頭の中に聞き覚えの無い声が聞こえた。
『神・エイミィからの祝福を受けたことにより、以下のスキルを習得しました。また、ユニークスキルの開放に成功しました』
【鍛冶スキル:レベル5】
【ユニークスキル:魂眼】
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その後、僕達はフロアボスたちによって歓迎の宴が開かれた。
出された果実はとても美味しく、生まれた初めて味覚を堪能した。
食事を堪能しているとゾアかが『鍛冶スキルを持った奴は集合』といわれ、僕も集合場所に集まった。数は大体30人くらい。この住民の数を考えたらごく少数である。
「スマンな食事中の者もいたと思うが・・・これからカルラとエドワードが食材を運んできてくれるんやけど。肉をさばく為の道具が足らんのや、せやから力を貸してほしい」
つまり、ゾアは僕達に肉をさばく為の道具を作ってほしいわけだ。これはダンジョン住民初めての共同作業とも言える。
ゾアはさっそく、石包丁を作るための素材を用意した。すぐに使うため、とりあえず包丁として使えれば良いといっていたが、作る以上しっかりとしたものを作りたい。それは他の住民達も同じだったようで、手抜き作業は全くせず、僕達は作業に取り掛かった。
石包丁用の石をまず別の石で叩きながら形を作り、研ぎ石で刃を研ぐ。その流れ作業を行ってから1時間、大量の石包丁を作り【料理スキル】を持った者達がカルラ様たちが運んできた猪をさばき始める。
「ご苦労様・・・いや~、鍛冶スキル持っている者がいて助かったわ。今後街の発展には君たちの力が必要になると思うからその時はよろしゅうな」
その後、僕達の作った包丁でさばいた肉が運ばれ食事を再開した。
自分の作った物が人の役に立てる喜びを僕は誇りに思えた。
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宴が終わり、僕達が暮らす街づくりのため、コウキ様はフロアボス達に新たな役割を与えた。ゾアは『技術開発部門』を担当し、主に街の発展を担う役割を任されている。当然僕も自分の鍛冶スキルを活かすために、大人たちに負けないくらい道具を作っていた。
大人たちよりも凄い道具を・・・コウキ様のためにがんばろう。一心不乱に街づくりに貢献していた。その思いが通じたのか大人たちも僕のことをただの住民としてではなく同じ作業場で働く仲間として接してきてくれるようになった。
だが、それと同時に僕は他の住民と違うのではないかと思った。彼らは皆ダンジョンから生まれたモンスターから進化したヒト達。でも僕は違う。ゾアから召喚された死霊であり、ダンジョンで生まれわけではない。
始めは気にしなかったが、次第に自分は他の住民と違うのではないかと思い始めた。同じダンジョンで暮らす仲間達。それは間違いない、彼らも僕を受け入れてくれた。でもそれは彼らは僕が同じダンジョンから生まれた仲間だと思っているから。
では、もし僕がダンジョンから生まれていないことを知られたら・・・・・
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ある日ゾアから通達が来た。
「ワイト・・・実はコウキさんが近いうちに技術向上のために合宿を行う計画を立てたんや。そんで、メンバーの選抜をワイに一任されたわけ」
「・・・合宿って・・・もしかして、ダンジョンの外ですか?」
「せや、ホワイトリー・・・君を合宿メンバーに推薦する」
念願だった外の世界。だが、僕はダンジョンの住民としての資格はあるのだろうか?
「・・・本当にいいのですか?僕なんかで?」
「何言ってんねん!ワイは愛弟子の成長を願っての推薦をしているんや!もっと自信持ち!」
「・・・でも」
「・・・これは命令や!その知識、その探究心、その技術でコウキさんの力になるんや!分かったなホワイトリー」
「了解しました」
そして数日後、僕を含め5名の合宿メンバーが集合した
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光輝の私室
『・・・ちゅうはなしです』
「なるほどな・・・ってか、お前が語っているのに何でワイト視点なんだよ!ってか、これお前が語ったワイトの話なのかよ!なげぇよ!」
『細かい話は無しにしましょう・・・あまりそういうことをツッコむと色々とメタいので。回想シーンは何も言わず見るものですで』
お前の発言がメタいよ!
「つまり、あれか。ワイトはダンジョンから生まれたわけでなく。お前が実験で呼び寄せた死霊ってわけか?」
『そうです。ホンマ、コウキさんには申し訳ないと思っております。自分が勝手な行動をとり、それを秘密にしていて。それに、部下・・・一番身近にいた者の悩みを解決できず、フロアボス失格です』
「いいよ、ワイトのことでお前を攻めるつもりは無いし。何も間違ってはいないさ」
『せやけど、まさかあそこまで気にしているとは思いもしませんでした。この合宿でワイトの成長を期待しているのですが・・・・』
「まあ、その辺は俺が何とかする」
『ホンマ、すんません。本来ならワイが立ち直らせるはずなのですが』
「気にするな・・・それとありがとうな、お前の大事な弟子を託してくれて」
『・・・コウキさん』
「あと、お前が意外とおしゃべりだってことを知れて嬉しいよ。今度から皆がいるときでも話せばいいのに」
『そ、それだけは堪忍してぇな!』
ワイトの過去・・・正直、他人のプライベートを本人の許可無く聞くのはあまり好きではないがやはり悩んでいる仲間・・・しかも子供をほっとくことは出来なかった。
「さて・・・明日からどうしようかな」
俺の合宿生活はいよいよ本格的に始まろうとしていた。




