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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第一章 ダンジョン創作編
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1話 モンスター作ったら無理ゲーでした

気がついたら俺は玉座に座っていた。宝石で装飾されたような椅子ではなく、シンプルな木でできた椅子。だけどどこか芸術性が感じられ高級感はある。


「ここってまさか本当に俺の作ったダンジョン?」


周りを見渡すと俺がプログラミングしたダンジョンと内装が似ていた。中世の時代をイメージしたお城のような敷き詰められた石畳、部屋の中央には立派な赤い絨毯、天井には豪華なシャンデリアが吊るされていた。


「気が付きましたか、コウキさん」


隣に顔を向けると俺をここに連れてきた自称神のエイミィが立っていた。金髪ストレートにスレンダーな体型、そしてローマ神話に出てくる神が着ていそうな純白な服。街で歩いていたら間違いなくモデルと勘違いしそうな美貌の持ち主。


「コウキさん、改めてお礼を言わせてください。このような素晴らしいダンジョンを作っていただき本当にありがとうございます」

「いや、だけど・・・本当にこれ俺がプログラミングしたダンジョンなのか?・・・・信じられないんだが」

「もちろんこのダンジョン全てコウキさんが作ったものですよ・・・ほら、地図をみてください」


エイミィが何かを念じると、俺達の前に青く透き通った円柱が現れた。SF映画などで登場する立体映像と言ったら想像しやすいかもしれない。


「『オリジンのダンジョン』、階層は上に44階層、地下44階層、合計88階層。形状は円柱。空へ続く天空の塔と思いきや、裏ダンジョンとして地下のダンジョンを用意・・・難易度は最高ランクの冒険者12人で臨むことを推奨・・・・なかなか面白いですね」


エイミィは俺が設定したプログラムの説明を淡々と述べた。


「なあ、エイミィ・・・なんで俺にこのダンジョンを作らせた?説明してくれないか?」

「ええ、そうですね。作って貰った後に言うのも変ですが、コウキさんには知る権利があります。まずこの世界についてお話します」


この世界はアルヴラーヴァ。地球でいうファンタジーの異世界だ。文明も定番のファンタジーらしく中世レベルの文化。少し前までは大きな戦争が続いていたらしいが、今は終戦して落ち着きを取り戻しているらしい。エイミィはこの世界の神として人々から信仰を受けており、その恩恵として人々に魔法の能力を与えている。信仰する人々全て平等に能力を与えるエイミィを人々は次第に自分たちの物だけにしようと考え、『神狩り』が始まった。そしてその噂は次々と広まり、ついにエイミィ争奪戦が始まった。これまでもいくつかのダンジョンを作ったらしいが、プログラミングスキルが低いせいかバグだらけのダンジョンで、すぐに倒壊してしまったらしい。


「・・・つまり、このダンジョンはお前を守る砦ってわけか?」

「・・・はい、申し訳ございません。勝手に作らせてしまい。説明したら断られるかと思いまして」

「じゃあ、なんでこの世界にいるんだ?逃げるんだったら、ずっと別の異世界にいれば良かったんじゃないか?神狩りなんて一時的なもんだろうし。神の感覚からすれば数百年経っても別に平気なんじゃ?」


「そんな、無責任なことはできません!いくらあの人たちが私を狙っているからって、世界そのものを放置するわけにはいけません!それに神狩りをする国だって世界中から見ればほんの一部です。私を純粋に信仰してくれる方は大勢います!」


どうやらエイミィは思った以上に真面目な性格らしい。


「そういえば、俺にプログラミングさせた時、あれって自分で作ったのか?」

「はい。私なりにダンジョンを作ったのですが上手くいかず。そこでダンジョンを作れるコウキさんを見つけ作って貰ったのです」


つまりこの世界でダンジョンを作る=ゲームのプログラミングってことか。


ビー!ビー!


部屋中に響き渡る警報音のような音で俺は椅子から跳ね上がった。


「なんだ?!」

「どうやらさっそく、冒険者が来たようですね」


エイミィがそう言うと、巨大なモニターが俺達の目の前に映しだされた。映像はこのダンジョンの入り口で、扉の前には20人くらいの武装した兵士たちだった。


「女神エイミィよ!我々は誇り高き聖・メゾン王国の兵士!我が国の繁栄のためにご同行を願いたい!もし拒否する場合はこちらから強制的に連れて行くよう命じられている!」


兵士長らしき人がそう叫んでいた。一応エイミィのことは神として丁寧そうに言っているが。要するんに無理やりにでも連れて行くってことだろ?


「・・・あんなこと言っていますが、どうします?」

「コウキさん・・・やっちゃってください」


なんだろう、エイミィの笑顔がものすごく怖い。


「しかし、20人で第一階層じゃあすぐ攻略されそうだな。確か12人で攻略設定だからな」


そんなこと言いながら、俺はモニターを見た。扉は全員が入った瞬間に閉じるようになっており、その瞬間ダンジョン攻略の開始の合図でもある。


「た、隊長!あれ!」


兵士の一人が叫び壁に張り付いている魔物に剣を向けた。


「ま、まさか!サラマンダー・・・だと!馬鹿な!あの化け物は火山大陸にしか生息していないはず!」


お、この世界でもサラマンダーはいるのか。第一階層の突破方法は、単純に広い部屋にいる10匹のサラマンダーを倒すことだ。火のブレスにさえ注意しておけばなんとかなるだろう。ダンジョンのプログラミングをしている時、レベル設定とかあったからとりあえず45にしてある。最高は100らしいから、高い難易度のダンジョンの序盤としてはまあまあのレベルだろう。


「ひ、怯むな!かかれ!」


兵士長が先陣を切って突撃し、サラマンダーに突撃する。サラマンダーの動きはけっこう鈍く、すぐに間合いに入られた。


「はぁああ!」


兵士長の剣はサラマンダーの額に直撃するが、サラマンダーの鱗には傷ひとつついていなかった。それどころか攻撃されたことに気付いていないかのように平然とした表情をしていた。


「な!どうなっている!」


困惑する兵士長を見た俺は疑問に思った。


「あれ?サラマンダーの表面ってそんなに固いのか?何度か斬りかかったら倒せると思ったんだが」

「ねぇ、あのサラマンダーのレベルってどれくらい?」

「ええと、序盤だから大体45にしてあるが」

「45?!・・・っちょ!それって上級精霊クラスよ!それが10体って・・・戦争でもするつもり?!」


どうやら、俺が思っていたよりもこの世界のレベルは低いらしい。


「でも、最高は100なんだろ?その半分ぐらいだったらそこまで強くないんじゃ?」

「レベル100はこの世界最強の数値!魔王ですら大体60前後よ!・・・コウキさん、改めて聞きますがこのダンジョンにいる魔物、全部そんなに強いのですか?」

「・・・確か表ダンジョンは45〜70、裏ダンジョンは60〜95にしていたな」


それを聴いたエイミィの顔色は真っ青だった。


「何を考えているんのよ!あんた、魔王を超える戦力をどんだけ作ったのよ!」


あ、もうやっちまったZEって展開だった。だが生み出しちまったものは仕方がない。


「人間でも最高で50前後なんです!いくら強いダンジョンでも限度があるでしょ!」

「いやでも、魔法とかあるじゃん・・・それを考慮すれば、意外と進められるかも・・・」

「・・・・コウキさん、あの兵士長たちをよく見てください」


ジド目でモニターに指を指すエイミィ。言われるまま、恐る恐る俺は兵士長たちを見た。すると彼らの周りに文字が出現した。


名前:ベン・コサック

職業:兵士長

レベル:21




「・・・・・」




レベル21対レベル45・・・・・うん、普通に考えたら無理だな。


そうこう、考えているうちにサラマンダーたちが兵士たちに襲いかかる。逃げまわる兵士たちに追い打ちをかけるようにファイアーブレスを放ったり、閉まった門を必死に叩く兵士を背後から切り裂くなど・・・見ているこっちが気持ち悪くなる。


兵士たちの断末魔が部屋に響き渡る。サラマンダーのブレスによって身体は焼かれ、中には噛み付かれて指を失っている兵士もいた。


そして兵士長たちが息絶えると、身体は光の粒子となって消えた。


「っちょ!まさか殺したの?いくら私を狙っているからってちょっとあんまりじゃ!」


焦るエイミィだが光の粒子となって消えたのを見て俺は設定していたプログラムが作動したのを確信した。


「ああ、大丈夫。あいつらなら・・・たぶん」


画面が切り替わると、そこはダンジョンの入り口だった。門前には気絶した兵士たちが横たわっている。さっきまでの戦闘で負った傷は無くなっており、失った体の一部も元通りだった。


「どうなっているの?」

「俺はゲームプログラマーだよ。戦闘不能になったら五体満足で入り口に戻るのが定番じゃん。入り口に戻ったら元通りになるように設定してあるんだ」

「え?じゃあ、あの人たちは無傷ってこと?」

「まあ、精神的なダメージは残るけど、肉体的には元通りだね」



それを聴いた瞬間、エイミィはホッとした表情を見せた。




「しかし、レベル調整が必要だな・・・いくら何でもこれは無理ゲーだろ」

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