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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第三章 街合宿編
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25話 暮らすために別荘を探しました

地下12階から地下22階・・・そこは『虚無の皇帝』ゾアが担当しているフロア。

出現モンスターは主に機械兵、ホムンクルス、キメラ、サイボーグゾンビ、エイリアン・・・ファンタジー世界とは全く異なるSF世界に近いステージになっている。当然ドロップする物もそれにちなんだ宇宙食や機械武器などが落ちる設定だ。


魔法とは無縁なフロア・・・だからホラー系の『死霊』が出現することはまずありえないはずのだ。屍人族に進化する場合、ゾアの担当フロアならホムンクルスかサイボーグゾンビがなるはず。だが、現に屍人族であるワイトは元『死霊』と言っていた・・・これは何かのバグなのだろうか?


今すぐにでもゾアと連絡を取りたいが合宿メンバーに余計な心配はかけたくは無い。それにもしワイトがバグとして出現した場合・・・いや、考えないほうがいい。


「・・・コウキさん、また考え事ですか?」


ワイトが不思議そうな顔で見ていたので、俺は急いでモニターを消した。


「いや、すまない・・・街はこの森を抜けてすぐだ。皆あまり余所余所しい行動はとらないようにね」

「「「「「了解しました」」」」」


森を抜けるとそこは雪国・・・・ではなく、立派な塀で囲まれた街が見えた。俺の隣にいた皆は目を輝かせた状態で街を見ていた。俺も初めてこの街を見た時はこんな顔をしていたのだろうか。


門前には以前会ったオバチャンではなく、ゴツイ鎧を身にまとった男性兵士だった。


「そこを止まれ!お前達、どこの者だ。身分証明書を見せろ」


かなり緊張感で包まれた空気の中、俺達はそれぞれモニターを開いた。元モンスターである彼らだがエイミィの【祝福】を受けたことで身分証明書となるステータスを手に入れていた。彼らも俺と同じ出身地が『ノフソの森』となっているため、ノフソの森にある集落の出身者と認識される。


「よし、通れ!ようこそトレスアールへ」


さっきまでの緊張感から一変し歓迎ムードで迎え入れてくれた。街の中は以前とは比べ物にならないくらい活気で溢れ、あたりには見たこともない服装の人たちが歩いている。以前も賑やかで良い街だと思っていたが今日のはお祭り騒ぎと思えるくらいの賑やかさだった。プラムなどは早速デザインのスケッチを取るために筆と紙を取り出す。


「それじゃあ、さっそくギルドに向かおうと思う。そこで君達はそれぞれのギルドに入会してもらう」


全員に確認を取った後、俺達は一直線にギルドへ向かった。相変わらずギルドとは思えない豪邸であり、敷地の整備はしっかり行き届いている。メイドさんたちもそれぞれ自分の仕事をしているも、通り過ぎる俺たちにしっかりと挨拶をしてくれた。


テスラは豪邸に興味を持ち建物を観察をしていた。


「なるほど、この建物はこういう装飾で・・・コウキさん、後でこの建物を見学できないでしょうか?」

「そうだね、時間があったら回るのもいいかも。ウィリアムさんに確認をとってみるか」


俺もゆっくりここを見学できなかったな。エントランスに入ると見覚えのある女性がまじめに仕事をしていた。


「こんにちはミルさん。お久しぶりです」


俺が挨拶をすると、俺に気付きミルさんもニッコリと笑顔で返してくれた。


「お久しぶりですコウキ様。あれからこっちに来ていないからてっきり二度と来ないのかと思っていました」

「はは、あっちはあっちで忙しかったからね・・・ダンジョンが閉まってしばらく挑めなかったから持ち込めるものが無かったんですよ」


悪意は無いのは分かっているが彼女の棘のある言葉に俺の胸はグサリと刺さったが、なんとかポーカーフェイスで持ちこたえる


「あら?売るものが無いから来る必要が無かったのですか?それはそれで残念です」

「え?いや・・・そういうわけじゃなくて・・・本当に忙しくて!」


ミルさんは俺が慌てる姿を見てクスリと笑う。そして何故かマリーさんが「なるほど、そういう方法がありますか」とブツブツ言いながらメモを取っていた・・・おい、何メモしているんだ?


「では、本日は戦利品を持ってきたということですね。後ろにいる方達はコウキ様のお仲間でしょうか?」

「ええ、それもありますが。実は彼らにギルド入会の手続きをしてもらいたく来ました」

「なるほど・・・では、どのギルドに入会するかはすでにお決まりなのですね?」


ミルさんが確認を取ると仕事モードに入ったのかワイトたちにギルドの説明をしはじめた。俺の時と同じように分かりやすい図を見せながら説明してくれる。


「・・・以上を持ちましてギルドの説明を終わります。何か質問はありませんか?」

「はい」


手を上げたのは意外な人物、ワイトだった


「未成年が大人のクエストを受けられるにはどうしたらいいですか?」


そうだった、ワイトとプラムは見ての通り子供だ。当然受けられるクエストは難易度が低いものばかり。子供ってのはチャレンジ精神が強い生き物だ。大人たちがやっていることにすぐ真似したがる。加えて二人はすでに街では大人たちと一緒に作業を行っている。


「未成年でも試験に合格できれば大人と同じクエストは受けられます。もちろん条件に未成年不可とあった場合は受けられませんが。資格さえ持っていれば誰でもクエストは受注できます」

「分かりました、ありがとうございます」


そう言ってワイトは納得した様子で後ろに下がった。その後ミルさんが順番にそれぞれが入りたいギルドに入会手続きを終えて、ギルドマスターであるウィリアムさんに会うことにした。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ギルドマスターの部屋


「いやーコウキ君、久しぶりだね・・・今日はお仲間を連れてきたのかい?」


ボディビルダー顔負けの筋肉を持つ老人、このギルドのギルドマスター(支部長)を任せられているウィリアム・フレムド・ヴァイキングが笑顔で握手してきた。


「お久しぶりですウィリアムさん。今日は皆にギルド入会手続きをしに・・・あとダンジョンでの戦利品の換金を」

「なるほど・・・・っむ?」


ウィリアムが後ろに立っていたジョージと目が合うといきなりボディビルダーがよくやる筋肉アピールのポーズを取り始めた。そしてそれに対抗するかのようにジョージもポーズを取る。

お互い、筋肉を主張しあい服が今にも破けそうだ。


語るのはお互いの筋肉


ウィリアムとジョージは満足した表情を見せ、俺の時以上に硬い握手を交わしていた。そしてテスラ以外の俺達は再びポカンとした表情で見ていた。


また筋肉の友情かよ!


「いやはや、素晴らしい筋肉だ。君のような青年に会うのは久しぶりだ」

「光栄です。あなたこそ、歳に負けない筋肉をお持ちです・・・私にとって憧れの肉体です。是非秘訣を教えていただきたいものです」


・・・なんだろう、筋肉のお爺さんとオッサンが見方を変えたら危ない発言をしているぞ。


「あのー、すみませんが換金をお願いします!」


俺は今回の資金調達のためにダンジョンにある宝を多めに持ってきた。それをみた ウィリアムが気を取り直したかのように商人の顔になった。


「ふむ・・・相変わらず素晴らしい作品だな。これら全て換金でよいのか?」

「ええ、今回は多めに持ってきました。ちょっとおおきな 買い物をしようかと思いまして」

「ほほう、詳しい話を聞きましょう」


その後、ウィリアムによる換金が終了し俺の所持金は跳ね上がった。正直、地球でもこんな大金持ち歩いたことがない。


「それで、コウキ君は何を買おうと思っているのかね?」

「実は、しばらくここに滞在する予定でして。今後もここには脚を運ぶことが増えるでしょうから自分たち専用の家を買おうかと思いまして」

「なるほど、つまり皆さんが滞在できる空き家を探しているということですな」


ウィリアムさんはさっそくモニターを開き物件のカタログを表示してくれた。だが、すぐにどこか納得していないような様子だった。


「実はダンジョンが開いて以降、ここに滞在する冒険者や貴族達が集まりだして・・・現在売られている物件でコウキさんたちが滞在できる場所も限られていまして」


まあ、確かにすぐ近くにダンジョンが出来たらそりゃ近くに住もうって考えているよな。

ウィリアムさんが見せてくれた物件もどれも良い値段で買えなくはないが、ここまでして買おうと思える内容ではない・・・ぶっちゃけ、買わないでいいのなら買わないという物件ばかり。


「ウィリアムさん出来れば土地が広いけどあまり人が通らない場所とかは無いですか?この際住めればいいや程度で」

「そうですな・・・ここならどうでしょう?正直、先ほどお見せした物件よりオススメできないものですが」


ウィリアムさんが難しそうな表情をしながら見せた物件は明らかにさっきの物件より品質や設備が良い、それに加えて値段もさっきのよりはるかに安い。


「オススメできないって!ここさっきの物件よりいいじゃないですか!なんでこんなに・・・・何か訳ありですか?」


俺がそういうとウィリアムが頷く。


「ええ、実はここはかつてこの国の宰相が持つ別荘の一つなのです。ですがこの国の宰相とは今となっては悪の代名詞とも言われまして、誰もその家を買おうとはしないのです。しかもその悪名は他の国にも知れ渡っているので国外からの購入も無く・・・」


この国の宰相、どんだけ悪名高いんだよ!まあ確かに犯罪者、しかも国一の嫌われ者が住んでいた家とか住みたがらないだろうな。


「今はギルドの管理下にあり、社長の所有物となっていますが社長もここに来るときはギルドの宿泊施設で泊まるので誰も使っていないのです。ですので空き家として売りに出されているのですが現状はこの結果」


なるほどね、それで誰も手をつけずこんなに安くなったのか。


「なら、その家俺たちが買います・・・俺はそういうの気にしませんし」


安く設備がいいのならそれならそれで万々歳だ・・・世間知らずの若造が住むってだけだし。


「いいのですか?社長もコウキ君に買ってもらえたのなら喜ぶと思いますが。回りからの視線は厳しいかと」

「いいよ、宰相は宰相。俺達は俺達・・・皆もここでいいよね」

「コウキさんが買われるならどこでも構いません」


マリーがそういうと皆も頷く。


「よし。じゃあ購入っと」


俺はモニターから購入ボタンを押すと今度は俺のモニターが出現した。おそらく押した本人に最終確認という意味で出現したのだろう。それも『OK』ボタンを押すとモニターに表示されていた所持金がみるみる減っていく。



そして、俺のステータス欄を見ると『別荘』という欄が追加された。


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