特別編 ダンジョンモンスターの初日
ここはダンジョンの第一階層にある、特別部屋
「ぐぁ(おっす、ゴブリンナイトの皆、これから出動か?)」
「ごぶ(あ、オーガさん。そうです、さっき出動命令が出たので行ってきます。今日は俺達の晴れ舞台ですからね張り切っていますよ!)」
「がー(そうか、がんばれよ。頑張り次第ではグラム様からお褒めの言葉がもらえるそうだ)」
そんな他愛ない雑談をしている、オーガとゴブリンナイトたち。
彼らはダンジョンで生まれた、正真正銘ダンジョンモンスターなのだ。しかしなぜ彼らが普通に話しこんな部屋にいるかというと・・・
本来、ダンジョンに生まれたポップモンスターは自我を持たずにただやってくる冒険者たちを襲うだけの生き物であったが、フロアボスが魔力を注ぎ込んだことで自我を芽生え、フロアボスの管理下でダンジョン運営に携わるようになったからである。
ダンジョンにはいくつものエリアが区分されており、エリアごとにポップするモンスターが生活する特別部屋が用意されているのだ。
ポップモンスターが生きていることを知った光輝はいくつかの案を考え、ダンジョンモンスターと名を改め。モンスターも冒険者と同じように死んだら、特別に用意した部屋に転送されるようになっている。衣食住の設備も充実しており、彼らもこの生活に満足している。
「がー(俺も少ししたら出る予定だ、お互い頑張ろう)」
「ごぶ(うっす!武運を!)」
・・・・・・・・・・・・・・
第一階層 A地区
「隊長!前方にゴブリンの集団が接近してきています!」
「ゴブリンだと?そんなの蹴散らせばいいだろ!・・・・って何だアレは!」
「ごぶ!(野郎共!突撃だ!)」
『ごぶ(おお!)』
先頭のゴブリンナイトの号令と共に一斉に襲い掛かるゴブリンナイト達。しかし、冒険者側も連携を崩さずゴブリンナイト達の猛攻を防ぐ。
「弓兵!撃て!」
「ごぶ!(うがああ、いてて!っちょ!痛い!後ろにまだいたのか!)」
「ごぶ!(やば!こっちが圧されている!)」
弓の攻撃が通りゴブリンナイト達が怯み出すと、冒険者側は一気に畳み掛けるように突撃をした!
『ごぶうう!(うぁああ!やられた!)』
ゴブリンナイトが力尽きると、体が光の粒子となって消えていく。そして、ドロップアイテムとして彼らが装備していた武具が残された。
・・・・・・・・・・・・・・
特別部屋
「ごぶ!(うーん、あいつら弱そうだったからいけると思ったんだけどな)」
「ごぶ!(やっぱり、オーガさんみたいに力押しは駄目じゃないんですかね?)」
「ごぶ!(あのヒト、脳筋だからな・・・『何事も力で解決だ!』とか言ってたし)」
敗北したゴブリンナイトたちはさっそく反省会を行う。敗北したモンスター達は次の出動命令が来るまで特別部屋で自由にしてよいのだ。これも光輝がモンスターの疲労を考慮して考えたシステムだ。
「ごぶ!(よし!次はこの作戦でいくぞ!)」
『ごぶ!(おお!)』
作戦が決まり出動命令が来るのを待っていたゴブリンナイト達の部屋に傷だらけのオーガが入ってきた。
「ごぶ!(オーガさん!どうしたのですか!その傷!重傷じゃないですか!)」
「がー(ちょっとしくじった・・・何とか冒険者を倒したんだが、こっちも手負いでな・・・悪いがそこの回復薬をくれ)」
ゴブリンナイトは急いで部屋に用意されている回復薬をオーガに飲ませる。これもダンジョンモンスター用に用意されたもので、傷だらけになってもすぐに治せるようになっている。もちろんこれも光輝が考えたアイディアで、常に万全の状態で出られるようにしているのだ。
「がー(ふー・・・一度死んだ方が早いと思ったがやっぱ嫌じゃん。だから必死に戻ってきたぜ。よし、もう一頑張りしてくるか!)」
「ごぶ(さすがオーガさん!俺達も負けてられないぜ!)」
『ごぶ(おー!)』
・・・・・・・・・・・・・
数日後 管理室
「なぁ最近ダンジョンモンスターたちの動きが良くなっていないか?」
「そうですね・・・かなり戦いなれてきたのでしょうか?」
管理室から冒険者たちの監視をしている俺とタマモはモンスター達の戦いにある変化が出始めていることに気付いた。
明らかにダンジョンを開いた初日と比べて集団行動を取るダンジョンモンスター連携が取れており、単独モンスターもトラップに引き寄せるなど頭脳プレイを見せ始めた。
「グラム・・・ちょっといいか?」
『はい、コウキ様。何か問題でもありましたか?』
「いや、問題ではないが。お前ダンジョンモンスター達に何かしたか?」
『え?いえ。儂は何もしておりませんが・・・何かありましたか?』
「いや、邪魔をした・・・すまない」
グラムは何もしていない。つまりダンジョンモンスター達は自らの意志で作戦などを立て始めたのか・・・本当こいつらは生きているんだな、改めてそう感じた。
「・・・今度特別部屋に褒美を送っておかないとな」
そんなことを考えながら俺は再びモニターから冒険者たち、そしてダンジョンモンスターたちの活躍を見守った。




