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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第九章 カグツチ騒乱編
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179話 帝がやって来たので事情を聞きました

グンナルとワイトが工房に行っている一方、ぬらり館にやって来た一人の男性が俺に面会を求めてきた。


「やぁ、コウキ殿。グンナルの準決勝進出おめでとう」


旅館の入り口で俺に会って早々に祝いの言葉を言うカグツチの帝、アサクラ・ヒリュウ。

俺達はまさかの人物に思わず口を開いた状態で固まってしまったのだった。


「ヒリュウ!お前また勝手に城を抜け出してきたな!」


真っ先に我に返ったラセツはすぐさまヒリュウに問い詰めるように叫ぶが馬耳東風のようで、ヒリュウは全く気にしていない様子だった。


「まぁまぁ・・・護衛ならホレ、センシュウがおるだろ」


ヒリュウがそう言うと彼の後ろからセンシュウがスッと現れる。

全然気づかなかった。


「それで?帝自らここへ来たってのは何か理由があるのか?」

「うむ・・・要件というのはコウキ君・・・いやコウキ殿との話をしたくてな」


君付けから殿に変えたという事は何やら深刻な雰囲気のようだな。


「その話というのは俺達も混ざっても構わないか?」


後ろから割り込むように会話に入って来たのは才とセレナだった。


「うむ、テオプアの姫君と英雄殿も是非聞いてもらいたい」


あ・・・これかなり重要な話っぽいな。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


場所を移し、俺達は旅館の一室で会議をすることにした。


「それで?俺に話というのは?」

「・・・グンナル君がカワキ将軍に勝利した話はすでにカグツチ中に広まった。今では彼は最もカグツチの者達から注目されている存在・・・であれば当然彼の出生などを調べようとする輩も現れる」


まあグンナルも今では有名人。

カグツチ最強の将軍カワキに勝利した事で注目の的となっている。


「そうなれば当然彼の主であるコウキ殿を嗅ぎまわる者が出るだろう」


まあそうなるわな。


「なので余は次の試合でグンナル君の出身地・・・つまりダンジョンの国について公表及び友好関係を結ぶ事を公表したいと考えている」

「え?!」


オリジンを公表?


「グンナル君の出身が女神エイミィ様の膝元の場ともなれば簡単には手出しは出来ぬ。何より友好関係を結ぶ事を宣言すれば不埒な輩を余がある程度抑え込むことが可能だ」


確かに帝が友好関係を宣言すれば、オリジンへの過剰な干渉も控えるだろう。

俺としてもカグツチとは友好的でありたい。


だが宣言するとなれば当然面白く思わない国もいる・・・テオプア王国だ。


「ヒリュウ帝・・・コウキ殿の国、オリジンはテオプアが先に友好関係を結んでいます。ですが、かの国は秘境中の秘境。おいそれと知られて良い存在ではありません。だからこそ我々テオプアは水面下で時期を待っていました・・・それなのに我々より先んじて公表するなんて随分と図々しいのではないのでは?」


聞いていたセレナはにこやかに言っているが言葉の重みと身体から放つ圧が凄まじい。

まあテオプアとも友好関係を結んでいるがまだ裏で取引する程度だからな。


「それは理解している。だからこそ、ここで話に参加してもらっているのだ」

「・・・理解してなお公表に踏み切るって事はそれなりの事情があるんだな?」


才がそう指摘するとヒリュウは無言で頷く。


「陰陽師協会の過激派が動き出している。おそらくグンナルの妨害工作に出るだろう。場合によってはコウキ殿にも被害が及ぶかもしれない」


陰陽師協会・・・そう言えばあいつらの存在を忘れていたな。


「陰陽師協会か・・・確かに奴らにとって妖人族が優勝するのは面白い話ではないな」

「・・・前大会の優勝者が何を言う。だがラセツに続きグンナル君も優勝すれば妖人族の地位は盤石になるのは間違いない。陰陽師協会にとってはそれは阻止したいのだろう」

「なんというか部外者の俺から見たら凄くくだらないと思えてしまうのですが」


優勝が栄誉な事が分かるがそんな政治的なもんを大会に持ち込まないで欲しい。


「その通りだな・・・武闘大会とは本来種族関係なく己の武を競い切磋琢磨する場。くだらない私情を持ち込むのは以ての外だ。ましてや他国の者に迷惑をかけるなど・・・」


ヒリュウはそう言って力強く拳を握り俺を見る。


『話は聞かせてもらいました』


どことなく()()()()()()()()が部屋に響くと俺の目の前にモニターが出現する。


「エイミィ?!なんで?・・・っていうか話を聞いていたってどうやって?!」

『光輝・・・細かい事は気にしない』


タマモ達もいるからなのかエイミィは威厳のある顔立ちで話をしている。

逆にヒリュウは今までにないくらい動揺した様子で目の前のエイミィに土下座するように頭を下げていた。


『カグツチの帝ヒリュウ・・・事情は理解しました。我々オリジンとしてもカグツチとは友好的である事を望んでいます』

「そ、それは大変光栄な事でございます」


マジでさっきまで余裕のある感じの帝はどこに行ったの?

でもまあ女神が目の前にいたらそうなるか?・・・逆に才達がおかしいのか?


『それとセレナ姫・・・あなた達の国とも正式に友好関係であることを宣言してください』

「ありがとうございます・・・しかしよろしいのですか?かの国の存在を公にするという事はエイミィ様を狙われるリスクが高まります」

『大丈夫です、私には頼もしい守護者が沢山いますから』


そう言ってエイミィはチラッと俺の方を見た。

はいはい・・・お前がそう決めたのなら俺も遠慮なくやらせてもらうよ。


「ヒリュウ殿・・・そういう訳で公表の許可は出ました。後はあなたの自由にしてください」

「分かった・・・しかしこれは色々と国が・・・いや、世界中が大きく動きさしそうだ。カグツチももっと世界に目を向ける時が来たのかもしれないな」


ヒリュウはそう言って笑いながらラセツを見た。

まあこれから世界中が色々と話し合いをすることが増えるだろうし外交官であるラセツが忙しくなるのは目に見えるな。


「コウキ殿、他人事のように笑っていますが今最も大変な事になるのはアナタであること理解していますか?」

「・・・あ」


こうしてオリジンとカグツチの国交がひそかに樹立したのだった。

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