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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第九章 カグツチ騒乱編
183/189

173話 少年が女性と約束したら将軍になりました

今回はカワキの過去編です。

次はいよいよカワキVSグンナル戦です。

40年前、カワキという少年は一人の女性と出会った。


「なぁ!あんたこの前の武闘大会で優勝した女だろ!すげぇな!」

「っは!女に甘い男共に勝っても嬉しくはないさ」


カワキは目を輝かせながら女性を見るも彼女は悪態を吐きながら酒瓶から豪快に飲む。


「武闘大会なんだよ!男だろうが女だろうが最強決めるなら本気でかかってこいってもんだよ」

「なら俺が本気で闘ってやろうか?」

「っは!ボウズがあたしに勝てるわけないだろ?」


女性はカワキを鼻で笑いつつデコピンを少年にくらわす。


「ガキはガキらしく遊んでいな・・・あたしゃ適当に寛いでいるさ」

「ガキガキって俺はカワキって名前があるんだ!」


全く相手にしない態度にカワキは顔を真っ赤にさせながら睨みつけるが女性はそんなカワキを見て笑う。


「あんた暇なんだろ?だったら俺に戦い方を教えてくれよ?」

「はぁ?なんであたしが?」

「俺はいつかカグツチ最強の男になるんだ!だったら強くなるためにあんたに鍛えてもらおうと思ったのさ!」

「あたしゃ暇じゃないさ、酒を飲むのに忙しい」

「だったら今すぐ皆に大会の優勝者がここで酒飲んでいるってバラしちゃうぞ」


それを聞いた瞬間女性は手を止めてカワキを見る・・・生意気に勝ち誇ったような顔をする。


「俺知っているぜ。あんた陰陽師協会ってのに入っているんだろ?陰陽師協会の人間は祭り以外酒を飲んじゃいけないだよな?」

「えーと・・・そうだ!今日はまだあたしの優勝記念って事で祭気分なんだよ」

「嘘つけ!大会が終わってもう2ヶ月以上たっているだろ!いいから俺を鍛えてくれよ!」

「だああ!分かった分かった!鍛えてやるから他の奴にあたしが酒飲んでいる事を黙っていてくれ・・・バレると色々と面倒だ」


こうしてカワキは武闘大会で優勝した女性に師事してもらい隠れながら鍛える日々を送った。




それから数年が経ち、カワキはメキメキと実力を伸ばしていくも未だに師匠に勝てなかった。


「だは!また負けた」

「フォフォフォ、まだまだだなカワキ」

「くっそー・・・もう大人の兵士にも勝てるくらい強くなったはずなのに」

「なんだい、あんた大人相手に喧嘩したんか?」

「ちげーよ!なんか知らない男達がいきなり絡んできたから返り討ちにしたんだ」


カワキがそういうと師匠は少し考え込んで彼に聞いた。


「なぁ、そいつらの中に結構身なりの良い男がいなかったか?」

「いたぞ、凄く偉そうに師匠に近づくんじゃねえとか叫んでさ」

「あっちゃー、もう嗅ぎつけていたのか」


彼女は頭を抱えて呟いた


「なんだ?師匠借金でもしているのか?」

「馬鹿ねあたしゃそんなもん背負っておらんわ!そいつらは昔あたしが振った男共だね」

「ええぇ?師匠モテていたのか?!こんなだらしないのに・・・あだ!」

「うるさい!これでもあたしゃ『カグツチの月姫』と言われるくらいモテているんだからな!」


師匠のゲンコツに悶えるが『月姫』という言葉にカワキはすぐに爆笑する。


「ふははは!師匠が『姫』って無いだろ!」

「知るか!あっちが勝手に付けやがったんだ」

「どちらかというと『妖怪』の間違いじゃ・・・ぐば!」


カワキの言葉に師匠の容赦の無いアッパーが入る。


「っちょ!『金』で硬化した拳で殴るなよ!マジで痛いんだから!」

「バーカ、こんなの陰陽術の基礎中の基礎だ・・・あたしのもう一人の弟子もこれを会得しているぞ」


思わぬ事実に驚きを隠せないカワキ・・・自分以外にも弟子がいた事に衝撃を受けていた。


「はぁ?俺以外にも弟子がいるのか?」

「まあの・・・セツナという女の子じゃ。まだ子供ではあるが、すでに陰陽術の基礎を覚えている。あの子はいずれあたしよりも強くなるさ」


期待の目を向ける師匠にカワキが今まで感じた事のない胸の痛みを覚えた。

自分はこんな風に見ら得た事はあるのか?そもそも師匠は自分の事を期待しているのか?


もどかしい気持ちになっていると、二人の前に数人の男性が歩いてきた。


「おうおう、やっと見つけたぜ、ねえちゃん・・・旦那があんたを連れてくるように言われているんだ」

「っち!とうとう荒くれ者も使いだしたか・・・本当あたしゃ罪な女じゃな」

「旦那からはあまり傷つけるなって言われているんでね・・・おとなしくついて来てもらえないか?」


自分達はあくまで穏便に済ませたいと口では言っているが手元に武器が握られている。

抵抗するなら容赦しないと言っているようなものだ。


「お前達!師匠を連れてどうするつもりだ?」

「ウチの旦那はその女に惚れちまっているみたいなんでな・・・嫁にするんだと」


荒くれ者の一人が親切にカワキに説明すると刀を彼に向ける。


「ちなみに一緒にいるガキは殺せとも言われている」

「っちょ!その子に手を出すんじゃないよ!」


師匠が怒りの形相で睨みつけ今にも殴りかかろうとした瞬間、カワキの身体が急に発光し体内から雷が放出し始める。


「カワキ・・・あんたそれ」

「ユニークスキル【充電(チャージ)】・・・本当はもう少し使いこなしてからびっくりさせようと思ったんだけどね」


雷を帯びたカワキが不敵の笑みで荒くれ者達を見る。


「武器は閉まった方がいいぞ」

「な!なんだこのガキ!物の怪か?!」


数人の荒くれ者が武器を構えながら近づくと、カワキの雷が吸い込まれるように武器に被雷する。


「ぎゃばばば!」

「な!こいついったい何を!」


電気を放つカワキに電気を通しやすい金属の武器を近づけるとどうなるのか、科学を知っている者なら結果は分かる・・・もちろんその理論を知っている者は【スキル】の実験をしていたカワキ以外いない。


彼に近づいた荒くれ者達は次々と感電して気絶していく。


「こ、このガキ!」


近づいたら危ないと理解した荒くれ者達は警戒しながら距離を取るがカワキの電光石火の拳で次々とのしていき、あっという間に全滅させる。


「カワキあんたそんなに強くなっていたんだね」

「まだまだだ・・・今のでため込んでいた電気を使い切ってしまっ・・・」


エネルギーを使い果たし脱力感でカワキはそのまま倒れてしまう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


どれくらい経ったのだろうか。カワキが目を覚ますとすでに空は暗く綺麗な星々が照らしていた。


「起きたかいカワキ」

「あいつらは?」

「お前さんが全員倒したよ・・・まあ、あたしも警備兵に引き渡す前に一発ずつ殴っておいたさ」


雷で気絶していた男共にさらに追い打ちをかける師匠の姿を想像したのかカワキは『ご愁傷様』と呟く。そして意識がはっきりしてくるとカワキは自分が師匠に膝枕されている事に気づきパッと立ち上がった。


「な、情けない!こんな姿を晒すとは!」


あまりの恥ずかしさに近くにあった樹に頭を打ち付けるカワキ。

それを見た師匠はクスクスと笑い出す。


「随分とカッコよかったぞカワキ・・・お前さんは必ずイイ男になるよ」

「イイ男?」

「向上心が強く、負けず嫌いで無茶はするが優しい・・・あと顔もイイこれ重要」


最後の付けたしで少しガクっと来たが褒められているのだろうと思ったカワキは少し照れくさそうに彼女を見る。


「なぁ師匠・・・俺は兵士になるよ。そんでそこでもっと強くなって次の武闘大会で優勝する!」

「ほぉ!いいね・・・その時はあたしとも戦ってくれるんだろ?」

「当然本気で師匠を倒すさ!」

「なら・・・その時を楽しみにしておくよ。あんたが勝ったらあたしを嫁にしてくれるか?」

「はぁ?なんでそうなるんだよ!」


顔を真っ赤にさせながら騒ぐカワキを見る師匠・・・だがその眼は期待する目であった。


「・・・分かった。俺が最強になったら師匠を嫁にする」


夜空を照らす月の下でカワキは師匠と約束をし、以降彼らは約束の日まで合わない事にした。


だがその約束をカワキは果たせなかった。


彼が待ちわびていた武闘大会の決勝戦でラセツという青年に敗北してしまったからだ。

完敗であった・・・己の限界を出し切りお互い死闘を繰り広げるも最後に立っていたのはラセツであった。師匠との約束を果たしたい、その一心でここまでやって来た・・・自分には何が足りなかったのか。


そんな事を考えていたらラセツの下に一人の女性が駆け寄って彼を抱きしめていた。


その女性はかつて師匠が言っていた妹弟子だ。

彼女もまたこの大会に出場し準決勝でラセツと戦い敗北した。


かなりの激戦だったのは覚えている。

ラセツは容赦なく彼女と戦っており観客からはかなり非難を浴びされていた。

だがそれは彼女の気持ちを汲み取り、全力で彼女の思いに応えて戦ったまでの事。


カワキはそんな二人の姿を自分と師匠と重ねていた。


「そうか・・・お前も俺と同じだったんだな」


自分と同じように約束があり、負けられない理由があった。


「ラセツ・・・次の大会では負けないからな」

「はぁ?!あんた20年後も出るのかよ!」

「当たり前だ!俺はカグツチ最強の男になるんだからな!」


次の大会まで師匠が約束を覚えいる保証など無い・・・だがカワキは最後に師匠とした約束を果たそうと誓ったのだった。


そして20年後、カワキは今待ちに待った武闘大会に出場するもラセツ姿は無かった。

代わりにラセツの推薦したグンナルという青年が目の前に立っている。


ラセツ・・・お前が出ないのであれば俺は最強と呼べるのか?


そんな思いを抱きつつもカワキは武器を構える。





今は自分がやるべき事をする・・・師匠との約束を果たすために。

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