15話 話をしたらメンテナンスになりました
「戦争!?」
「一応、明日話すつもりだったんだが、神エイミィがいるならそっちの方がいいか。・・・結論から言うと『戦争になりうる』ってことだ」
『っちょ!何でダンジョンを作ったら戦争が起きるのよ!』
慌てた様子のエイミィ、今にもモニターから飛び出しそうな勢いだった
「落ち着け・・・光輝はうすうす分かっていたんだろ?あんな宝が出るなら当然独占しようとする輩が現れるだろうって」
才も同じ考えだったようだ。
俺がモニターでダンジョンのアイテムを出したとき、俺はエイミィにどれくらいアイテムを出せるのか、と尋ねたとき「ダンジョンに流れている魔力が尽きない限り上限無しで生み出せる」と言われた。どういう仕組みなのかは俺もよく分からないが、いずれちゃんと説明すると言われた。つまり、ダンジョンは無限に採掘できる金山のようなもの・・・それを独占したい者は当然出るだろうと思った。
今日、ギルドで会ったゲルドっていう商人も欲に満ちた目で俺を見ていた。ああいう人間にはダンジョンのことを教えたくはない。
「ダンジョンは神エイミィを守る要塞であり、そして人を成長させる試練の場所でもある。そう宣伝したつもりだろうが、そうと見ない奴がいる・・・神エイミィと一緒にダンジョンを手に入れる・・・考えている奴はいる。分かるか?これはもう試練とかじゃなくて『神争奪戦』になりかねない」
おいおい、いきなり神争奪戦とか・・・俺この世界に来てまだそんなに経っていないんだぞ・・・展開が急すぎるぞ。普通小説とかだと、ギルドに加入→依頼をこなして見聞を広める→戦争が起きることを知るとか・・・そういう物語的な展開があるだろ!
「光輝・・・なんかくだらないことで悩んでいると思うが、これが現実だ。時間は待ってくれない、色々とやりたいことがあるだろうがそういうのは後回しだ・・・まあ、戦争といっても今すぐって訳じゃないし、あくまで可能性だ」
そんなに深く考えるなっと口でフォローはしているが、いずれは起こるだろうと、才の目で分かる。
「それじゃあ、どうしたらいいんだ?俺はただ、全力で挑めるダンジョンが作りたいだけなのに・・・・」
あまりの現実に受け入れなければならないが受け入れられない気持ちで頭を抱える。
「・・近いうちに『世界会議』が開かれる」
「レ・・・何だって?」
『レオホ、古代言語で「会議」って意味ね・・・そんなのが出来ていたんだ、知らなかったわ』
「まあ、出来たのは最近だけどな。加盟国もまだ大国、小国含めて5国だけだ。だけど、今後加盟する国は増えていくと思うぞ。その会議では主に国際問題について話し合って、国同士が助け合うシステムだ」
まるで、地球の国際連盟だな。
「今回は『ダンジョン』について話し合って、今後どのように扱うかを決めるそうだ」
『扱うって!ダンジョンは私と光輝のものよ!なに勝手に自分達の物みたいに言っているのよ!』
「・・・まあ、気持ちは分からなくはないが。その会議に今後ダンジョンをエイミィの試練として冒険者が挑む場所にするのか、自国の物だと主張し独占するか、あるいはダンジョンを挑むことを法律で禁止にするのか」
『っちょ!それ勝手すぎでしょ!私は冒険者たちが挑める試練の場所を与えているだけなのに!何、人間が勝手にそんなルールを考えるのよ!』
「それが人の考え方だ。ルールを作らないと何を仕出かすかわからないからな」
『・・・分かった、それはそっちで勝手にやればいいわ。私は光輝と一緒にダンジョンを凄い所にするんだから。挑まないことを後悔させるくらいにね』
「・・・ただ高価なものをばら撒くのは得策じゃないぞ。それじゃ余計欲にまみれた奴しか来なくなるからな」
「・・・分かった、ダンジョンの事はこっちに任せてくれないか。こっちはこっちで色々とやらないといけないことがあるから」
「了解した・・・光輝、一つだけアドバイスをする」
「何?」
「この世界は現実だ・・・ゲーム感覚でやっているなら今すぐやめろ。お前が生み出した奴らは皆生きている・・・それだけは忘れるな」
その言葉の意味はなんとなく理解できた。初めてメリアスに出会ったとき彼女は間違いなく生きていると実感した。呼吸、仕草、感情、どれもプログラムだけでは再現できないものだ。他のフロアボスもそうだ、俺がプログラミングした姿であるが行動、話し方、個性とかも俺の知らないのが沢山あった。
彼女たちもまたこの世界で生きている。
「・・・エイミィ、しばらくダンジョンは停止させても問題ないか?」
『期間によるけど今の状態なら半年くらいなら放置しても問題ないわ』
「分かった、フロアボス達に通達してくれ。俺が戻ったらまた会議を行う。」
『了解!一応、信託でしばらく閉鎖する事は伝えるね』
元気欲返事をするとエイミィのモニターが消える
「ありがとう、才。おかげでコレからどうすればいいのか分かった気がする」
「そうか・・・なら、大丈夫そうだな」
俺は急いでモニターを開き、ダンジョンの中で冒険者がいないことを確認してダンジョンの入り口にロックをかけた。
これでダンジョンの扉は開かないようになった。
「これで、ダンジョンの入り口はロックされた。しばらくはまたプログラミングの日々だな」
「悪いな、せっかく作ったダンジョンなのに、やり直させて」
「気にしないでくれ。プログラミングの仕事ではこういうのは日常茶飯事。苦労して作ったプログラムを作り直すとかよくあることだから」
実際、上の会議で勝手に手法変更でプログラムが無駄になったことが何度もあり。同期たちと自棄酒とかしたものだ。
「それじゃ、また明日。明日は冒険者ギルドに加入してからウィリアムさんに挨拶しにいくよ」
「ああ悪かったな長話をしてしまって」
そう言い残し俺は自分の部屋に戻った。
就寝時、俺はふと思ったことがあった
「そういえば、才ってあの二人と寝ているのかな?」
俺の頭の中で才と少女二人で小の字で寝ているのを想像したら、怒りに似た感情が沸き立った
「・・・・爆発系のトラップは大量にセットしておこう」
ブックマーク数を確認したら100を超えていました。
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