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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第九章 カグツチ騒乱編
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154話 混乱したら、してやられました

「っちょ!グンナルをカグツチの住民に登録ってどういう意味ですか!」


いきなりグンナルをカグツチの住民にすると言われ混乱する俺達。帝は無言のままモニターを操作していた。


「余としてはこれはいわゆる保険だな」

「保険?」

「そうだ・・・余の筋書きはこうだ。マサカ出身のグンナル君は幼い頃にカグツチを離れ国外で働く。そして、数カ月前に外交としてテオに向かったラセツが運命的に出会い武闘大会に誘う。これにより、人材発掘をしたラセツの功績は称えられ、更にマサカ出身ということで名声も手に入れられる。逆に屈強な妖人族がいるマサカ以外の妖人族が優勝したらマサカの名に泥を塗ってしまう」


ヒリュウがなんか熱の篭った筋書きを語りだし、俺は勢いに飲まれて『なるほどと頷いてしまった』


「余としてはマサカとラセツの地位を最大限上げさせたい。センシュウも同じだ・・・仮に彼が優勝した場合も彼を余の護衛に努めさせるほどにまで成長させたのはラセツと修行場だったマサカの功績だからな」


この帝、よほどラセツとマサカを守りたいんだな。少し関心していると、グンナルは物凄い目つきで帝を睨み始めた。


「・・・気に食わん」

「グンナル?」

「・・・帝・・・アンタの狙いはなんだ?」

「どういう意味だ?」

「さっき言ったよな?武闘大会はカグツチにとって伝統であるって。優勝することが名誉だって」

「そうだが?」

「なら、俺の母国、オリジンの名誉はどうなんだ?俺がカグツチの住民になればマサカの地位は上がる!だがオリジンはどうする!アンタが今やろうとしていることこそ、マサカだけじゃなくカグツチに泥を塗ることになるんだぞ!」


今にもヒリュウに噛み付きそうな勢いを見せるグンナル。センシュウも急いで間に入って守るような体勢を取る。


「落ち着け、グンナル・・・ヒリュウ。グンナルの言うとおりだ・・・俺はマサカの為にコウキ殿の名声を奪いたいとまで思わん」

「ふむ・・・グンナル君が昔のラセツに似ているから今の話で承諾してくれると思っていたが、彼は昔の君よりもはるかに頭が回るな」

「オイコラ、俺がただの馬鹿とでもいいたいのか?」

「まあ、待て待て・・・君たちの国の名声を取ってしまうのは申し訳ないと思う。だが、いいのかい?君たちの国の存在が知られたら色々とマズイのではないのか?」


ヒリュウは二人の鬼ににらみ疲れながらも冷静に話し始める。


「どういう意味ですか?」

「どういう意味も・・・君たちの国にいるのだろ?神・エイミィ様が?」


その瞬間、俺とグンナルは即座にラセツを見る。しかし当の本人は必死に首を振る。どうやら、エイミィのことはヒリュウにも話していないみたいだ・・・じゃあ何で知って・・・・・・あ。


「はぁ・・・やられましたね、コウキ様」


ため息を吐きながら肩を落とすタマモ。どうやらこの状況で彼女だけが帝の狙いに気付いたようだ。気付いていたなら止めてくれよ!


「ははは・・・やはりな。ラセツからグンナル君のことは散々聞かされたが国のことは一切話そうとしなかったしな・・・逆にそれが怪しく思えたのだ」

「・・・帝、あんたまさかこれを聞き出すためにわざと俺を住民登録しようとしたんじゃないのか?」

「さて・・どうやら」


帝はさっきとは打って変わってとぼけた顔をして目をそらし始める。このジジィ・・・


「まあ、知ったからと言ってこれをネタに脅迫するつもりはない。したとしても君たちには逆らえそうにないからな・・・そうだ、代わりと言っては何だがいいものを見せて上げよう」


話を帰るようにヒリュウはポンっと手を叩き、モニターを操作する。すると取り出したのは一個の光る実だった。


「これは?」

「武闘大会の優勝賞品だ・・・と言っても優勝者に渡すのは別の実だが」


俺達はテーブルに置かれた実を見る・・・どこかで見たことがあるような・・・


「コウキ様・・・これマナの実です」


タマモは少し驚いた様子で実の正体を言った。


「マナの実か・・・そういえば、外国ではそう呼ばれているんだったな。カグツチでは『神樹の実』と呼んでおってな。食せば、己の限界を越えられると言われている。ラセツも20年前に優勝してこの実を食べて酒呑童子種へと進化したのだ」


神樹の実か・・・まあそう呼んでもおかしくないか。ラセツが酒呑童子種なのも納得だ・・・これを食べれば確かに上位種へと進化できるからな。


「優勝者に渡すのは別ってことはもしかしてマナの樹があるのですか?」

「あるが、どこにあるのかまでは流石に教えられん・・・あれは初代様が神・セフィロト様から授かった物を代々守ってきてた大切な樹だからな」

「アル・・セフィロト様が?」


危ない思わずアルラの名前を出してしまう所だった。ってことは、アルラが邪神を封印する前の話か・・・思わぬところで彼女の名前が出てきたな。今度アルラにカグツチの話をしてみようかな。


「しかし、これが優勝賞品となるとますます、陰陽師協会には優勝させたくないですね」

「だな・・・正しいものに渡ればそれはそれで良いのだが、今の奴らには危険すぎる代物だ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


帝から優勝賞品を見せてもらった後、ラセツが時計を確認してそろそろお開きにしようということになった。

ミカヅチにはラセツの部下が運営する旅館があるらしく、そこを貸し切りにしてくれた。


「それでは帝様・・・俺達はこれで」

「あ、ちょっと待ってくれ。グンナル君、コウキ君」


部屋から出ようとした時、最後の俺とグンナルだけを呼び止めるように手招きをした。


「何ですか?」

「ラセツのことだが・・・アイツの事をこれからもよろしく頼む」


ヒリュウはそう言って深々と頭を下げた・・・それは帝という立場としてではなく、ラセツの親友としての頼みだった。


「アイツの妻と子供のことは聞いたことがあるか?」

「ええ、ボダイさんからひと通り」

「そうか・・・ラセツの奴、妖人族のグンナル君を自分の息子とか言っておっただろ?」

「ええ・・・アキトでしたね」

「・・・実はな・・・アイツの子が妖人族ってことはありえないんだ」


え?


「どういう意味ですか?」

「・・・これが、20年前のラセツ・・・そして隣にいるのが妻のセツナだ」


ヒリュウが机の引き出しから一枚の写真を取り出し俺達に見せた。写っているのは3人の男女。中央で豪華な服を着ているのはおそらくヒリュウ。そしてその隣で豪快に笑っている鬼種のイケメン・・・おそらくラセツだろう。


年を取るというのは残酷だな。


そして反対側に建っている和服美女。これがラセツの妻のセツナか・・・正直ラセツには勿体無いくらいの美人だった。


「コウキ様・・・この女性。人間です」

「え?」


グンナルの指摘を聞いた俺はすぐに写真を見ると確かに鬼種の特徴である角が見当たらないし、耳も普通だ。


「二人の子なら本来亜人が生まれるはず・・・だから妖人族のグンナル君を息子と呼んだときは余はラセツが心配になったんだ。錯乱状態になっているのではないかと」


まあ、親友からして見れば確かに心配になるよな。


「ボダイさんたちも当然知っているのですよね?」

「もちろんだ・・・ただ、あいつらもラセツの気持ちをよく知っている。だからこそ口を出さなかったのだろう」


ボダイさんたちも結構大変だったんだろうな。


「・・・・・・マジかよ」


グンナルが再び写真を見ると、そう呟く。


「この女・・・陰陽師協会の人間だ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

陰陽師協会総本山


「ギャアアアアアアアアアアアアアア」


様々なお香が充満する部屋の中で一人の老婆が叫びだす。


「オババ様!どうかされましたか?」


老婆の叫び声に駆けつけた一人の女性がすぐさま老婆の身体をすする。


「おお、スズカ様・・・ご心配おかけして申し訳ございません」

「一体、何があったのですか?」

「いえ、ちょっと長に頼まれて武闘大会の予知を」

「そんな・・・無理をしては駄目です。はい、お水を」

「ありがとうございます・・・ですが、この予知を長に伝えなければなりません」


老婆は震える身体で必死にスズカと呼ばれる女性の服を摑む。


「一体どんな予知を見られたのですか?」

「断片的じゃが・・・あれは魔王じゃ」

「魔王?」







「新たな魔王が・・・このカグツチに誕生する!」

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