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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第九章 カグツチ騒乱編
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152話 帝にあったら宴会になりました

カグツチの帝、アサクラ・ヒリュウはカグツチきっての名軍師として知られていた。数々の戦や討伐において彼が指揮した戦いでは負け知らずとして語られている。同時に用心深い人物でもあり、人前には現れないことでも有名であった。


しかし、そんな彼でも時には追い詰められ死を覚悟したこともあった。だがそんな窮地を何度も救ってくれたのは当時荒くれ者をまとめ上げ人々から恐れられていたラセツだった。数々の戦いを乗り越え、互いに国を愛する心が折り合ったのか、二人はいつしか親友と呼べる関係になっていた。


そんなラセツからの話に何度も出てくる『グンナル』という青年にヒリュウは強く興味を抱いた。ラセツの目金にかなう人物、ましてや全盛期ではなくてもラセツに完勝した人物を見てみたいという気持ちでいっぱいだった。


武闘対価に出場するという話も聞いていたが自分の立場を考えるとどうしても人前に出ることはできない。そのため、無理を通してラセツに連絡を入れすぐに会えないかを相談したのだった。


「グンナル・・・ラセツを超える妖人族。彼ならきっと妖人族の未来を・・・・」


そんなことを呟きながらヒリュウは彼らの到着を楽しみにしていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

イフウ城


「ほえー、凄いお城」


俺の目の前には日本の江戸城を数段スケールアップさせたような巨大要塞があった。


「皆様、帝がお待ちしております。こちらへ」


狼車から降りた俺達を確認したバクザンはそう言って門の奥へ進んでいく。ちなみに狼車を護衛するとオウカが言っていたので彼女とはここで別れた。


「見た目は石の城かと思いましたが、中の構造を見ると木造がメインみたいですね」


感心した様子でタマモは城の様子を観察している。こういう分野葉テスラの方が得意なのだが、いない人のことを考えても仕方ない。今度来るときは建設部門の誰かを連れてくるようにしよう。


「そういえばラセツさん、帝ってどんな方なのですか?」


ミカヅチに来る時はお互いの国の話で盛り上がったため帝のことを聞くのをすっかり忘れてた。


「ん・・・まあ、簡単にいえば用心深いやつだな。カグツチの名軍師と呼ばれるだけの頭脳を持っているが少々面倒なやつで、俺以外の者だと数える程度したアイツの部屋に入る権限を持っていないんだ」


用心深い人物か・・・そんな人が何でグンナルに会いたがっているんだろう?


「まあ、カグツチを愛する心は俺と同じくらいだし・・・民のことをしっかり考えている奴だからコウキ殿もきっと受け入れてもらえますよ」


そう自慢げな笑顔を見せるラセツからの様子からして帝という立場に相応しい人物なんだろうな。


「・・・皆様、我々が案内できるのはここまでです。ラセツ後は任せる」

「え?ここでって?」

「我々はこれより先へ進める権限を持っていませんゆえ・・・申し訳ございません」


面目なさそうにバクザンがそう言うと、部下たちを引き連れて下がっていった。


「まあ、そういうことです。ここからは俺が案内しますから着いてきてください」


そして案内係がラセツに移動した後、再び俺達は城の奥へと進んでいく。


「随分と構造が複雑なんですね・・・まるでダンジョンみたいだ」


柱や壁の飾りの配置など似たものが大量に並べられているため方向感覚が狂いそうになる。


「この城は初代帝様が敵の侵入を妨げるために設計された城ですからね。まあ歴史の中でこの城に攻め込まれた数は数回程度らしく大抵は入られる前に討伐されています」

「外から見ても分かりますがこの城って完全に要塞ですからね」

「ええ、『威風』という意味を込めてイフウ城と名付けられたそうです」


なるほどね・・・正直、ここを攻め落とすとなるとフロアボス以外だと厳しいな・・・落とすつもりなんか無いが。


「つきました・・・ここです。ヒリュウ、ラセツだ。お前が会いたがっていた客人を連れてきたぞ」


到着した先には何も無いただの壁。ランカは何を言っているんだ?という風な目でラセツを見るが、グンナルとタマモは気付いているのか真っ直ぐ壁を見た。そして俺も予想が付いている為何も驚かなかった。


『うむ・・・待っていたぞ。今開ける』


壁の奥から男性の声が聞こえると壁の奥からガチャリと鈍い音が聞こえ壁が自動的に動き始める。

やっぱりこういうカラクリがあるよね。


壁の奥へ進むと、中はかなり広く豪華な部屋だった。そしてそこには一人の40代半ばの男性が一人大きな座布団に座っていた。


「こうして直接会うのは久しぶりだな、ラセツ」

「だな・・・まあ、定期的に連絡を入れているからそこまで懐かしむことはないが」


ラセツがそう軽口言いながらニヤリと笑うと男性も安神した容子で笑顔になる。


「はじめまして、余がカグツチの帝、アサクラ・ヒリュウだ。わざわざ余のわがままに付きあわせてしまってすまない」

「神埼・エドワード・光輝です」

「タマモと申します」

「コウキ様の護衛のランカです」

「同じく護衛のグンナルといいます」


俺達が挨拶をした後、ヒリュウは興味深そうにグンナルを見た。


「君がグンナルか・・・うむ、確かに昔のラセツに似ているな・・・外見ではなく雰囲気が」

「だろ?」


ラセツは自慢気にヒリュウに言う・・・いや、アンデアンタが自慢するんだよ。


「それに・・・なるほど、ラセツを倒したと聞いた時は耳を疑ったが直接本人を見たら納得した。それに・・・・」


そう言いかけ、ヒリュウは俺達にも目を配る。


「やれやれ、本当カグツチに篭っていると視野が狭くて仕方ない。世界中を歩き回れるお前の立場が羨ましいよラセツ」

「そう言うなら、とっとと帝の座を息子に譲ればいいじゃないか。実力はお前さんと変わらんし、今も帝の政務殆ど引き継ぎが終わっているんだろ?」

「まあ、その話は後にしよう。せっかく来たのだ、こんな場所ですまないが宴会にしよう。センシュウ、用意してくれ」

「っは」


ヒリュウが壁の奥に声をかけると奥から男性の声が聞こえた。そして壁が動き出すと、大量の料理が載せられたカートを押してくる美男子が入ってきた。長く艶のある黒髪で、中性的な顔のため軽く化粧したら絶対男でもドキッとしてしまいそうな顔立ちだった。


あれ?センシュウって確かラセツが昨日言っていた帝の護衛の・・・


「おお、センシュウ。久しぶりだな」

「お久しぶりです、ラセツさん・・・そちらの方が以前から話していたグンナル殿ですか?」


センシュウはすぐに興味津々にグンナルの方を見た。ってかアンタどんだけグンナルの話を広めたんだよ!


「ラセツさん、その人は?」

「ああ、彼はスオウ・センシュウ。帝の護衛をしている者でな。ヒリュウが信頼できる人物の一人だ」

「と言っても、信頼されているのはラセツさんの弟子だからだと思いますが。はじめまして、スオウ・センシュウといいます」


センシュウはそう言って礼儀正しくお辞儀をする。なんと言うか真面目が美化して服を着たような存在だな。


「センシュウは元々ミカヅチの門番長だったんだが、俺が一時期そこの育成を任されてな」

「ああ、だからあの時門番達はラセツさんのことをあんなふうに慕っていたんだ」

「あの頃のラセツさんはまさに鬼でしたよ。何度死を覚悟したか」

「ガハハ、そのおかげで強くなれたんだからいいじゃないか」


そんなふうに豪快に笑っていると帝が咳払いする・・・あ、そういえば完全に蚊帳の外だったな。


「やれやれ、余を前にして雑談とは・・・やはりお前が来ると楽しくて仕方ない」

「すまんすまん、そうだ・・・土産があるんだった」


ラセツはモニターを操作すると俺が昨日上げた酒樽を出現させる。


「コウキ殿の故郷の酒だ。正直、俺が今まで飲んできたどの酒より美味い」

「どの酒もって・・・ラセツ確か以前。二億もする龍酒を買っていなかったか?」


二億とういう単語にセンシュウは目を見開いてラセツを見るが、すぐに納得した様子だった。


「あれはあれで良い酒だったが、これはそれをも上回る美味さだったさ」

「まあ、お前がそこまで言うなら興味はあるな」


ヒリュウはそう言ってニヤリと笑う。


「センシュウ、お前も付き合え!今日は前夜祭だ!」

「っちょ!ラセツさん、昨日あんなに盛り上がったのにまたやるんですか?」

「ガハハ!固いことを言うなコウキ殿!昨日は昨日、今日は今日!楽しむべきに楽しんで何が悪い!」

「いやそうですけど!」


俺は何とかして欲しいように、ヒリュウとセンシュウを見るがすでに二人は悟ったかのように無言で座り始める・・・ああ、さすが慣れているなこの二人。


その後、帝の部屋では人知れず盛大に盛り上がったのは言うまでもない。

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