14話 ダンジョン作ったら戦争になりそうです
本当に神か?と思うくらいご機嫌な返事をするエイミィがモニターに映しだされた。
「エイミィ、俺以外にも異世界人がいるとか聞いていないぞ」
『・・・ああ、シンがつれて来た英雄君ね。あの子元気にしている?何度か会ったことあるけど、シンに似ているところがあってちょっと苦手なんだよね・・・腹黒で何を考えているのか分からなくて。この前なんか神である私に対して説教なんかしたりするし・・・ああいう奴って、ゲームとかで大抵中盤や終盤辺りで裏切るキャラだよね・・・英雄だけど。』
言いたい放題だな・・・てか才に聞こえているぞ
「エイミィ・・・ちょっといいか?」
『何々?』
俺はモニターを操作して、才が見えるように移動させる。才は呆れたような表情をしているが、かなり怒りがこみ上げているのが分かる。
『しゃ!才!何故ここに?!何で光輝と一緒に?まさか自力でここに?!』
才を見たエイミィは今まで見たことが無いような同様ぶりを見せた。
何故、そのネタが出る?
「久しぶりだな、神エイミィ。ずいぶんと言いたい放題言ってくれたな。俺がシンに似ているって?・・・ざけんな!あいつの方が百倍腹黒だってーの!ってか、説教した理由、まだ分かっていないだろ!あんたは人に甘やかしすぎなんだよ!信仰してくれる奴にポンポンスキルとか与えて・・・それで、こっちがどれだけ苦労したか分かっているのいるのか?!」
なんだろう、才とエイミィって以前会ったことがあるのかな?エイミィの口調も俺と同じだから、才もエイミィの性格をしているのかな?
『でも、私は神よ!人々に恩恵を与えるのが役目なの!」
「それが結果的に自分が狙われていることに気付けよ!シンの奴も呆れていたぞ!珍しくあいつから連絡が来て『何か起きたら手伝ってくれ』って言われたぞ!俺は仕事で忙しいっての!」
『だからそのために、光輝を呼んだんじゃない!』
「ならなんで光輝にしっかりと教えない!下手したらこいつも危ないんだぞ!」
才とエイミィの口論は一時間にものぼった。そして、落ち着いた頃にようやく口を挟む隙が生まれた。
「それで、才はこの世界に来て1年後・・・つまり今から5年前にエイミィと会ったわけ?」
「ああ、国の争いを落ち着かせた後に魔王が復活したとか言われて、討伐しに行った時期にな。魔王を倒すための能力を授けるとか言われてもらったらあっさりと倒せた」
え?魔王ってそんなに簡単に倒せるの?
『あの時は私もびっくりしたわ。まさか魔王の一人がすぐにやられるなんて』
「エイミィが『時空剣』とか『無敵盾』とかいうスキルをくれたからな。魔王を倒した後にすぐ返したよ」
何、その最強そうなスキル・・・そんなスキルとか与えていたのかよ。そんなスキルを持った冒険者が現れたら多分、表ダンジョンはあっさりクリアされそう。裏は・・・多分大丈夫かな?魔王より強いし。
「エイミィ、光輝のスキルを見たが、ダンジョンってやはり光輝に作らせたのか?」
『そうよ、凄いでしょ!光輝はゲームプログラミングのプロで私でも作れなかったダンジョンを作ってくれたんだよ!』
うれしそうに自慢するエイミィとは対照的に呆れたような様子の才。
「それで?難易度はどれくらいにしたんだ?ウィリアムの報告では勝手にダンジョンに挑んだ兵士数十名がサラマンダーによって撃退されたと聞かされていたが」
「ああ、アレね。最初こっちの世界の常識が分からなかったからサラマンダーのレベルを45くらいにしたんだ。でも、エイミィからこの世界のレベルが低いのを聞いてこの前下げたばっかりだよ」
「・・・またか」
俺の説明を聞くと才はやらかした、見たいなポーズをとった。
「光輝、エイミィの話をそのまま鵜呑みにするな・・・そいつは人を甘く見すぎている」
『っちょ!それどういう意味よ!』
「確かにこの世界の平均レベルは大体10や20くらいだ。だがな、それはあくまでレベルという数値でしかない」
「どういうこと?」
おれが尋ねると、才は自分のモニターを操作して 俺に見せた
サイ・チアマ
レベル:50
スキル:『ゴッドスキル:万能鑑定』、『思考加速』、『肉体超強化』、『鬼神化』、『蒼炎魔法』、『万能結界』、『空間移動』、『魔素操作』、『適応化』、『魔法耐性:全属性』、『痛覚無効』、『直感』、『空間倉庫』etc…
「・・・何これ?」
「俺がこの世界で手に入れたレアスキルだ。他にも載っていないが強化形のスキルがいくつかある」
ナニコレ、こんなスキルを持った人が今のダンジョン挑んだらヌルゲーじゃん!無理ゲーだと思っていた最初のダンジョンですら楽しいアスレチックレベルに感じるぞ!
「確かに戦えばレベルが上がりステータスは上がる。だが同じレベルでも人によってステータスは異なっている。なぜか分かるか?」
「・・・スキルってこと?」
「そうだ、基本的にスキルは経験から習得できるものだ。剣を振れば『剣術スキル』が上がり、魔法と使えばその属性の『魔法スキル』が上がる・・・このスキルが加算されてステータスに反映される。こういうレアスキルは物事を極めたり努力したりすることで習得することが出来る」
ああ、ゲームとかでもよくあるね。スキルの振り分けとかで色々悩んだっけ。
「現在、ギルドの本部がある王都テオでは専門学校が建てられている。もちろん冒険者になるための訓練とか行っている。俺みたいは難しいが、少なくとも強いスキルを持った冒険者は今後増えていく・・・神エイミィ、昔俺が説教したの覚えているか?」
『・・・・・』
才の言葉に返事が出来ないエイミィ
「『人に恩恵を与えるだけじゃ人は生きていけても成長は出来ない!あんたがやっていることはただ人を堕落させるだけだ』・・・今思うとかなり上から目線だが、それを考えたから今回自分が狙われていながらも、それを利用して人々が強くなれるダンジョンを作ったんだよな?」
ダンジョンを作る理由はそこにあったのか。神だから始めから考えていた訳でなく才に影響されて作ったわけか。
「正直、驚いたよ。ただ恩恵を与えるだけの女神かと思ったら、まさか試練を与えるとはね」
『私だってこの世界が好きなの・・・アルヴラーヴァの民のことを思えば当然よ』
「だが、ダンジョンの戦利品あれをみたがちょっとやりすぎだぞ」
才がモニターを操作してテーブルの上に鉱石が出現した。俺がウィリアムさんに売った鉱石や剣だ。
「ウィリアムから預かってきた。かなり品質が良い鉱石だ。この魔剣も危険な遺跡とかに埋まっていそうな宝物だ。光輝、このアイテムはどこでどうやって手に入れられる?」
「鉱石は1階層から出現する岩トカゲやゴーレムから出現、その魔剣は40階層あたりにある宝箱から出現する設定にしてある」
「正直、この鉱石とかは以前魔王討伐に使った洞窟で発見した鉱石より品質が良い。あの辺りに生息するモンスターのレベルはざっと40ぐらいだ」
それってつまり最初に設定したモンスターと同じくらい強いモンスターがいるってこと?
「光輝、ウィリアムから他の商人にはルートを伝えないように言われたよな?」
「え?うん、商品のバランスが崩れる可能性があるからウィリアムさんが直接買い取るって言ってた」
「・・・あいつも頭回るな・・・まあ、その通りなんだが。理由はもう一つある」
「もう一つ?」
「ダンジョンそのものを独占しようと戦争が起きるかもしれないってことだ」