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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第九章 カグツチ騒乱編
158/189

150話 色々と向き合ったら鬼と鬼の友情が芽生えました

俺達の目の前で必死に懇願するカワサギとボダイ。


「それはつまり、グンナルを俺の護衛を止めさせてラセツさんに預けろって意味ですか?」

「「・・・はい」」


二人は力なくそう返事する。


ラセツの過去を聞いて同情していないと言ったら嘘になる。二人が必死に頭を下げて頼み込んでいるのを見てそれだけラセツはグンナルのことを気に入っているのが分かる。何かしてやりたいという気持ちもあった。


だけど・・・それでも俺はグンナルを手放したいとは思わなかった。


「・・・答える必要は無いです。コウキ殿」


俺がしばらく黙っていると後ろのほうからラセツとグンナルが歩いてくるのが見えた。


「・・・長」

「やれやれ・・・せっかく団子を楽しんでいたのに、余計な話を聴かせてしまいました。まったく、貴重な結界用の札まで使って」

「いつから聞いていたのです?」

「グンナル殿を俺に譲れって辺だな・・・まあ、大方俺の過去話を聞かされたのでしょう」


ラセツは面目なさそうに言いながら俺達を素通りしてボダイ達の前に立つ。結界の外にいたら俺達の会話は聞こえないが、中に入れば普通に聞こえる仕組みのようだ。。


「お前たち・・・何故あんなことを言った」

「自分たちは長のことを思って!昨日のような幸せな顔・・・自分は今まで見たことがありません!あんなに笑って、あんなに騒いで・・・あんなに酔っ払って!」

「長がグンナル殿をアキト様と重ねてみているのは一目瞭然・・・ですから我々はコウキ殿に頼みグンナル殿を・・・」

「それが余計なことだと言っているんだ!このバカ共が!」


ラセツはそう叫び、まさに鬼の形相でボダイとカワサギを殴る。


「ラ、ラセツさん?!」


まるでヤクザが弱い者虐め・・・いや、圧倒的な力による暴力を目の辺りにしてどう言葉をかけていいのか分からなかった。


悪鬼羅刹・・・まさにそれを人の形にした姿が俺達の目の前にあった。


ボダイとカワサギも何の抵抗もなく殴られ続ける。

やばい、正直あれは洒落にならない。


そう判断した俺は急いでラセツを止められそうな魔法具を取り出そうとするが、それよりも早くグンナルが動いた。


【断罪魔法】による【拘束】でラセツの動きを一瞬止めるが、ラセツは力任せにその拘束を解除した。だがその一瞬でグンナルはラセツとボダイ達の間に入った。


「グンナル殿・・・そこをどけ!これは俺達の問題・・・そして俺が解決することだ!」

「・・・確かに二人はラセツ殿の逆鱗に触れる行為をしたかもしれません。ですが、ここまでするほどの『罪』はしていないはずです。俺はこのような過剰な暴力をコウキ様に見せたくはありません。そしてラセツ殿にこのような行為をしてもらいたくもありません」


グンナルはそう言い金棒を構えてラセツを見た。


「・・・この若造が!」


そう叫びラセツが腕を振り上げグンナルを殴りかかろうとするがまるでリモコンのポーズボタンでも押したかのようにラセツの動きがピタッと止まる。


「・・・ラセツさん?」


俺はプルプルと身体を震わせるラセツを後ろから声をかける。するとラセツの目から大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちた。


「・・・何故君はそこまでする?・・・なぜそこまで俺に似る・・・何故アキトじゃないんだ・・・なぜ俺のもとにいないんだ!」


ラセツはそう呟ききながら崩れ落ちる。


「・・・二人の言うとおりだ。俺はグンナル殿をアキトと重ねていた。あの時からそうだ・・・テオで見かけた時、俺はアキトがいると錯覚してしまった・・・アキトがいる・・・アキトが立派な姿になって人に仕えているんだって」


やはり、あの時の涙は同族に会えた時の感動ではなく・・・死んだ息子が生きていたと思った喜びの涙だったのか。


「そして、コウキ殿の正体を知った時思った・・・アキトはエイミィ様に肉体を与えられグンナルとして生まれ変わったんだと。そう考えたら・・・どうしてもグンナル殿をアキトと・・・ああああああああ!!!」


ラセツは話を終える前に再び号泣する。


「・・・今更かと思いますが、俺からも頼みます。どうか・・・どうかグンナル殿を俺の息子として譲ってください!」


ラセツはそうなきながら土下座をする・・・そして殴られていたボダイとカワサギも一緒になって頭を下げた。


ここまで必死になってたのみこむラセツの姿・・・おそらくこんな姿、カグツチの住民ですら見たことが無いはず・・・俺は一瞬心が動かされそうになるが、なんとか断る言葉を探していると、グンナルが前にでた。


「コウキ様・・・その答えは自分に言わせてください」

「グンナル?」

「ラセツ殿・・・いや、妖人族・酒呑童子種のラセツ。お前の気持ちは俺にも届いた・・・正直うれしいと思った・・俺は必要とされている・・・俺のことを見てくれていると思った。もし、俺があんたの息子として生きていたらどういう人生になっていたかと思った事もあった・・・だが、俺はコウキ様の護衛・・・コウキ様の懐刀になると決めた。だから俺はあんたの下にはいけない」

「・・・グンナル?」


グンナルはそう断るとラセツの手を差し伸べた。


「親子という関係にはいかないが、同じ妖人族・・・友という関係を築くことはできないだろうか?俺はあんたのことは嫌いじゃない・・・正直しつこいと思ったことは何度かあったがそれでも嫌いになることはなかった」

「・・・グンナル殿」

「友には殿は必要ないだろ?・・・ラセツ」


ラセツは泣きながらもグンナルの手を取り立ち上がる。


「うぉおおおおおおおお!!!!!何故お前は・・・このやろう!!!!!!」


ラセツはそう号泣しながらグンナルに抱きつく。


「だからそういうところがウザいんだって!」


必死に抱きつくラセツにグンナルはヘッドバッドを叩きつけ逃げる。


「やれやれ・・・丸く?とは言い難いが、とりあえずこれで収まったかな?」


俺はモニターから回復薬を取り出しボダイとカワサギにふりかける。


「コウキ殿・・・何から何まで本当に・・・・」

「まあ、いいですよ。俺もラセツさんの事は気に入っていますし、こういう関係も悪くないんじゃないですかね?」


俺はグンナルに抱きつこうと飛びかかるラセツとそれを鬱陶しく思いながら避けるグンナルを見る。








「グンナル!もしコウキ殿の所を離れることがあったらこっちはいつでも歓迎するぞ」


そんな言葉が俺の耳に入ったが聴かなかったことにした。

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