142話 魔王と戦ったら残ることになりました
七日戦争
それは突如魔国ゼノに現れた巨人と魔王の七日間に渡る決闘。
その七日間はまさに戦争。
まるで空襲でも起きたかのような爆音が響き
大地は常に揺れる。
決闘にしてはあまりにも桁違いの戦い。
その七日間、住民たちは寝る暇も無かった。
だが恐怖によるものではない。
巨人と魔王の戦い。
その光景はまさにゼノの歴史に刻まれる誇り高い戦いであった。
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オリジン
「・・・っで、魔王と戦いに夢中になって気がついたら七日経っていたと?」
『ええ・・・5日ぐらいでお互い魔力が尽きてしまい、最後は殴り合いでした・・・いやはや、さすが魔王と言うべきでしょう。気がついた時にはお互い一日中ベッドの上でした』
ったく、詳細はテスラとフィロから聞いていたし、グラムの好きにさせていたがまさか7日間も戦うとか。
「はぁ・・・メリアスの特別製回復薬を持たせたのは正解だったな。傷の方は大丈夫か?」
『ええ、この通り!ヴェイン殿と戦ったことで儂は更にパワーアップしましたし』
モニターから筋肉を自慢するヴェイン。それに確かに以前と比べてメインステータスの数値が上がっているのが確認できた。おそらくヴェインとの戦いで経験値がかなり入ったのだろう。
「それで魔王は今どうしている?」
『メリアスさんの回復薬で復帰して今、交易の契約書を作成しています。それとゼノの領土の一部を我々が使用できる許可までいただきました』
なるほど、つまり外交は上手くいった訳か。
「分かった・・・グラム、今回の外交ご苦労だった。これでゼノとも友好的な関係を築ける」
『っは、ありがとうございます!』
「それでフロアボス復帰の件だがグラム、お前いつ戻れる?そろそろカグツチへ行く準備に取り掛かりたいんだが。あと建設部門にも頼みたい仕事が溜まっているんだ」
『・・・・・あ』
・・・え?何その間。凄く嫌な予感がするんだが。
『・・・実は儂とヴェイン殿が戦っている最中、ゼノに色々と被害を出してしまいまして、建物をいくつか壊してしまったのです。それで責任を取りたく建設部門に今復興作業の指示を出していまして。もうしばらくここに残らないといけなくなりまして・・・・』
物凄く気まずそうに話すグラム・・・おいおい、まさか。
『もちろん、儂が先に帰ることも可能ですが部下を残すことになりまして・・・・』
「はぁ・・・グラム、耳をかっぽじってよく聞け・・・・・・・・バッカモーン!」
どこかの警察官を叱るような口調で俺は叫ぶ。
『も、申し訳ございません』
「はぁ・・まあ壊したのは問題だし、お前の性格からして自分で修復しないと気がすまないんだろ?」
『は、はい』
「なら、最後までやれ。それが外交官としてのお前の責務だ。建設部門への仕事は戻ってからで構わない」
『ですが、フロアボスの件はどうします?』
「それなら当てはいくつもいる・・・実はグンナルがフロアボス代理をやり始めてから他の住民たちも代理をやりたいって言い出してな。今後はフロアボスも何名か代理候補を作ることにしたんだ」
『そうなんですか・・・では』
「まあ、お前たちの出迎えができないのは残念だが・・・それはお前の責任ってことで」
『っは!』
「もう一度言う・・・グラム、よくやった」
『ありがとうございます!』
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会議室
「そういうわけで、グラムはもうしばらくゼノに残ることになった」
俺がグラムの報告をすると殆どが呆れた様子でため息をつく。
「グラムはんなに考えておるねん・・・フロアボスの責務を何やと思っておるんや?」
「研究所に篭もりっきりのあなたがそれを言いますか・・・ですが、長期間開けるのはやはりどうかと思います」
「11階層は冒険者が最も挑むフロア・・・もう少し自分の立場を考えて欲しいものだ」
裏ダンジョンのゾア、ミーシャ、エドはやや非難した声を投げるも否定する声は出ない。
「まあ、11階層はグンナルがしっかり守ってくれたし。俺たちがカグツチに言っている間は他の代理人に任せるさ」
「ではコウキ様はグラムの行動を許すのですか?」
「許すも何もリンド。グラムにはゼノとの交易を結ぶ外交官としての仕事を任せたんだ。なら最後までやらせる方針だよ」
「・・・なるほど、そのようなお考えでしたか。それでグンナルに変わる代理人ですが」
「ああ、グンナルも準備が必要だから、ソウキ達にフロアボスの代理を頼もうかと思う」
「了解です。あいつらにももっと実践訓練を積ませたかったのでこの機会にどうぞ使ってください」
自分の部下を代理人に選ばれたことが嬉しいのかリンドはやや上機嫌だった。最近だと一緒に飯を食べるのを見かけたりするし結構気にかけるようになってきたんだな。
「そういうわけで、すまないがまたしばらくダンジョンを留守にするがここを頼むぞ」
『御意!』