141話 外交に行ったら魔王と戦いました
魔王
それはこの世界に存在す『魔』を司る4の王の総称。
一人は北に存在する魔人族の大国、魔国ゼノを統治する魔人族の王、魔神族・サタン種、ヴェインヴォルフ
一人は西に存在するエルフの小国、幻想国イメージを統治する魔法使いの王、エルフ族・ハイエルフ種エレノア・ルイズ・フォルテ
一個は南の海底に眠る遺跡で暮らす意思を持つ魔法具の王、王具・オーヴィン
一体は東の大地に眠る魔物の王、暴君獣・ネウア
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「っとまあ、これが今のアルヴラーヴァに存在する東西南北の魔王ね。何か質問は?」
何故か自慢気に語る教師スタイルのエイミィ。
何故こうなったかというと俺がグラムが今向かっている魔国ゼノのことが少し気になることを呟いたら、エイミィの自称、『神耳』が拾い俺にこの世界の魔王についての講義を始めたのだ。
「一応聞きたいが、その魔王の実力ってやっぱり高いのか?」
「高いわよ・・・少なくとも実力はフロアボスクラス。一個体としての戦闘力や魔力は一般人とは桁違いに異なるわ」
やっぱりそうだよな。そんなおっかない戦闘力を持つ者達が少なくとも8名このダンジョンにいると考えると本当恐ろしいよ。
「でも、北と西の魔王は良識人でむやみに争い事は起こさない性格だよ。南の魔王も海底遺跡で引きこもっているだけだし、東の魔王は4年くらい前に才たちに封印されたからしばらくは出てこないわ」
「ふーん、良識人ってことはエイミィは北と西の魔王には会ったことはあるのか?」
「うん、二人共魔王って呼ばれる前だけどスキルの扱い方を教えたことがあるわね。懐かしいわ・・・あの泣き虫ヴェイン君とエレノアちゃんが魔王って呼ばれるようになるなんて。二人共立派に成長したわね」
ちょっと待て、今なんて言った?
「魔王になる前に教えた?どういう意味だ?」
「どういう意味も、昔ちょっと正体を隠して各地を回っていたことがあってね。その時にたまたま出会ってスキルの使い方や生き方について教えたわ・・・そう考えるとあの子達が私の最初の教え子かな?」
おい、なにこの魔王量産神様・・・あんたとんでもない存在生み出しているじゃないか!
「光輝に会うまでは二人にダンジョンの守護を任せようかと思ったんだけど肝心のダンジョンができなくて諦めたわ。今思うとそれで良かったのかも、二人共守るべき国があったのだし」
俺の心の中でのツッコを前にミエイミィはサラッと言いうと、急に俺に俺の心臓が締め付けらた気分になった。
もし、エイミィが機械音痴じゃなく普通に作れるようになっていたら俺はここにいなかったかもしれない。エイミィに出会っていなかったかもしれない。
「なぁ・・・エイミィ」
「なに?」
「ありがとうな・・・・ポンコツ神様で」
「っちょ!なにその感謝!!!!」
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魔国ゼノ
俺の名はヴェイン・ヴォルフ。魔人族の中でも最高位の種族に属するサタン種を持つ男。
そしてこの国、魔国・ゼノを治める魔王でもある。
ダンジョンへの挑戦を解禁したことで娘のフィロは貴重な衛兵を数名連れて出て行ってしまった。何の断りもなく出て行ったのは問題だ。だが自分の過去を振り向くとやはり自分と妻の娘だと実感してしまい、どこか嬉しい気持ちになってしまった。
そしてしばらくした後フィロが帰還すると、いきなり交易を結びたい国ができたと言い出した。相手はなんとエイミィが治める国らしい。後にアッシュの補足で正確にはエイミィに選ばれた者が統治しており、エイミィもそこで暮らしているらしい。
あのエイミィが国に住むことには耳を疑ったがフィロたちが嘘を付いているとはとても思えない。おそらくダンジョンを守護する者達もそこで生活をしているのだろう。そして、その守護する者・・・アッシュの話ではフロアボスという存在がダンジョンを守護しておりその実力は魔王である私と同等らしい。
「っふ・・・ダンジョンに挑むにはそれくらいの実力が必要っていう意味か」
神・エイミィが住む国、オリジン・・・それだけで俺は交易を結ぶことに賛成だった。だが王という立場は実に面倒で家臣たちの意見にも耳を傾けなければならない。そしてその家臣の大半が頭の固い連中か脳筋なものばかりで・・・・
「神・エイミィがいるからなんだ!得体のしれない者たちと用意に交易を結ぶのはどうかと思うぞ」
「まったくだ、フロアボスの実力が魔王様と同等?そんなわけあるまい・・・アッシュの実力も鈍ったのではないか?」
「魔王様!聞く話、相手は現在研究中の合成魔石の情報を持っているそうです・・・これは重大な情報漏洩ですぞ!」
「内政や外交で国を豊かにした功績はあるが、そのせいで我々の国力が低下したらどうなるのです!」
「そもそも魔王とは力を示して・・・・」
まあ、家臣の意見も理解できないことも無い。相手の実力をしっかりと見極める必要がある・・・あと情報漏洩は予想外だったからフィロには厳しく叱った後外出禁止令を出す必要があるな。だが異常に予想外なのはここ最近家臣たちが俺に対して少し生意気な口を叩くようになったことだ。ここは一度俺の実力を再度確認してもらう必要があるな。
「・・・皆の意見は分かった。アッシュたちが帰還してまだ間もない。少し間を開けた後アッシュたちにはオリジンにいる実力者を派遣してもらい皆に知ってもらうことにしよう。見極めるのはそこからでよいのではないか?」
威圧スキルを発動しながら発言したことで家臣たちも素直に頷くことしかできなかった。
「・・・さて、どんな実力者が来るのやら」
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玉座
アッシュたちが帰還した報告を受け私は家臣たちを集める。
「アッシュ・レヒ、オリジンの使者、グラム様ご一行を連れてただいま帰還しました!」
アッシュたちが堂々と玉座に入ってくると後ろから凄まじい威圧を放つ大柄な集団が続く。外見は魔人族・巨人種らしいが・・・顔立ちがゼノに住む巨人種と比べて凛々しい気がする。魔人族の中でも上位に入る戦闘種族、その反面知力はかなり低いと有名だが彼らからは知性を感じ取られる。我が国の巨人部隊の兵士とは違うのが分かる。
「ようこそオリジンの使者たち。俺はこの国を納める魔王、ヴェイン・ヴォルフだ。此度は我々の都合で呼び出してしまいご足労をかけた」
「オリジンの外交官として参ったグラムです。いえ、元々儂らにとってもこれはオリジンに必要なことだと思っています。それにフィロメール殿にオリジンの存在を教えたのは儂、その責任は全て儂が請け負うつもりです。ゼノが実力を知りたいのであれば儂がその実力を伝えるまです」
なるほど、どういう経緯があったのか。つまりこの巨漢がアッシュの報告にあった大地の巨人・グラム・・・その存在感、そして放たれる威圧・・・まさに神を守護するのに相応しい、そう感じ取った。
のだが、そんな相手の実力も分からぬ脳筋たちがグラムたちの前に現れる。
「そうか、であればその実力さっそく見せてもらおうか!」
魔人族・ミノタウロス種の兵士たちが武器を構えて一斉に襲いかかる。
バカ!武器を構えていない相手に襲いかかる奴がいるか!
私は急いで止めようとするがグラムが笑みを見せた瞬間グラムの実力を把握していた者達は一瞬で凍りつく、無論俺もだ。
そして次の瞬間、どこから出現したのか分からない大量の鎖が襲いかかった兵士たちに巻きつけ吊るし上げる。
「そう急ぐ必要はないだろう?ここは玉座・・・建設部門の者から言わせればこんな場所で戦うのはゴメンだ。しっかり暴れられる場所に移動してから始めましょう」
そう言って鎖は消え兵士たちは床にたたきつけられる。
「グラム様、せめておろしてから消してください。床に傷つけて外交問題にでもなったらどうするのです」
「ん、スマン。まあその時はお前らが直してくれ・・・そのために連れてきたんだし」
『ええぇ!俺(私)達そんな理由で連れて来られたんですか!』
後ろにいた巨人種たちは何やらショックを受けた顔をしていたが、この程度で外交問題になっているなら今頃この国は鎖国状態であろう、主にウチの兵士たちが暴れて。
「気にするな、傷ぐらいで問題にはならん。むしろすまない血の気のある者たちがいきなり襲ってしまい・・・後でしっかり罰を与える」
「それこそ気にするな・・・あの程度の攻撃で怯む儂と部下ではない」
確かにグラムの言う通り牛rのにいる部下たちも攻撃された時全く動じなかった・・・・むしろ連れて来られた理由を聞いてショックを受けていた方だ。
「ふははは!面白い、さすがあの方を守る存在だ・・・グラムよ、その実力この魔王ヴェイン・ヴォルフにぶつける気はないか?」
私は総発言しると家臣たちが急に声を荒げながらこちらを見る。
「よろしいのですか?あなたはこの国の王ですぞ」
「構わないさ・・・それにもう一度ここにいるバカどもに俺の実力を知ってもらうのには絶好の相手だ」
「・・・良いでしょう。私もフロアボス以外で全力をぶつけられる相手にできることを心から望んでいました」
二人の巨漢が不敵の笑みを見せながら向き合う。
後に二人の戦いは7日まで続き、魔国ゼノでは『七日戦争』と呼ばれる二人の魔王の戦いが語り継がれるのであった。