138話 フロアボスが出て行くので代理フロアボスを用意しました
それは突然の来訪だった。
「コウキ様、11階層のモニターを見てください」
久々に管理室で冒険者達の動きを見ていた時、フライの報告で11階層のモニターが拡大された。映しだされたのは5人組の冒険者。5人供かなり豪華な服装でとても冒険者という感じではなかった。
「・・・あれ?もしかしてアッシュ?」
顔の方へ拡大すると確かに以前グラムと戦った影使いの人だ。たしかフィロの親衛隊長で・・・他の人たちもたしかフィロの護衛だったな。
「あの格好からして戦いに来たって感じではなさそうですね。もしかして以前話されていた交易の話では?」
隣にいたタマモがそうつぶやくと確かに思い当たるのはそれしか無い。だけど確か、交易の準備が整ったらフィロから連絡が来る手はずなんだが何があったんだろう?
「フライ、街への転移門を用意するから回収班に指示を出して誘導してくれないか?」
「了解しました」
おれはすぐに人が人気のない場所に転移門を作りアッシュ達をリズアへ転送させた。
・・・・・・・・・・・・・・・・
リズア
「お久しぶりですコウキ殿」
アッシュ達は俺にアウト礼儀正しく頭を下げて挨拶をしてきた。
「お久しぶりです。今日はどうされました?格好からしてグラムに挑んできた様子ではなさそうですが」
「はい、実は交易についてご説明をしたいと思い迎えに上がらせていただきました」
あ、やっぱりそうなんだ。
「フィロメール様はこの国を大変気に入りまして是非ともこの国と交易を結び帯と魔王様にお伝えしました。魔王様もエイミィ様の納める国に興味を持たれまして交易を結ぶことに賛成してくれました」
へぇ・・・魔王も興味を持たれる国か。まさかここを征服するとか考えていないだろうな?いや、それなら交易を結ぶことに賛成しないか。才も言っていたがゼノの魔王はかなり政治とかに力を入れているらしいからな交流は大切にしているのだろう。
「ということはこちらとの交易を結ぶのですか?」
「いえ・・・それが『我が国に何か不満でも?』・・・そんなんことはありません!」
アッシュが何か否定気味で言おうとするとグラムが睨む。
「魔王様は賛成されたのですが、他の重鎮たちがどうも反対されているのです。『わけのわからない弱国とは組みたくないと』」
まあそう考えてもおかしくないか。少なくともゼノは王政だけど魔王の独裁ってわけじゃなさそうだな。
それを聞いた瞬間グラムをふくmジュフロアボス達から殺気に近い気迫を放つ・・・・いや、何名か本当に殺気を放っている。
「では、交易は中止ということですか?」
こちらとしては少し残念な気持ちだったが無理に組みたいというわけでもない。できれば良い関係でいたいつもりなんだが・・・・後ろのほうで『そんな態度ならこちらからお願い下げだ!』とかつぶやいているのが聞こえる。おそらくカルラかリンドだろう。
「いえ・・・ただ力を示して欲しいのです」
「力を示す?」
「我々ゼノは弱肉強食の風習がありまして強い者に従うというのが鉄則なのです。ですからオリジンの方から実力のある方を外交官として派遣してその力を示してくれれば重鎮たちもすぐに納得してくれます。もし派遣されるのでしたら我々がその護衛に当たることになっています」
なるほどそういうことか・・・腕のある人物か。さて、誰を行かせようか・・・って後ろに控えているリンドとカルラがものすごく期待の眼差しでこっちを見ている。君たちはフロアボスだろ・・・外出は・・・
「コウキ様、ここは儂に行かせてください」
名乗りでたのはグラムだった・・・ってお前のフロアが一番挑戦者が多いんだぞ!裏ボスならまだ考えられる範疇だがお前は!
「そもそも、アッシュ達をオリジンへ招待したのは儂です。彼らに関わることは全て儂の責任として任せていただけないでしょうか?」
「任せるって・・・確かにスジは通っているが、お前のフロアの挑戦者が一番多いんだぞ?代理は誰を選ぶんだ?」
「もし良ければグンナルに任せていただけないでしょうか?」
え?グンナル?
俺達は一斉にグンナルへ視線を向けると彼も困惑した顔でキョロキョロを顔を動かす。確かに今のグンナルの実力ならフロアボスほどじゃないが代理ボスとしては申し分ない。グンナルの修行を手伝っていたカーツやカルラも納得した様子だった。
カグツチの武闘大会まで2ヶ月を切った所。確かに対人戦の経験を積ませるのもありかもしれない。
「グンナル・・・お前はどうなんだ?期間限定だがフロアボスを任せてもいいか?」
「本当に自分なんかがフロアボスの代理でよろしいのでしょうか?」
少し自信なさげなグンナルだったがその瞬間いきなりグラムがグンナルの真上から殴りかかる。
あれはヤバイ・・・確実に死ぬレベルの本気の威力だ!
俺がモニターを操作するよりも早くエドとメリアスが結界を張り、グラムとグンナルの周りを囲む。
『ご無事ですかコウキ様?』と言いたげな顔でこっちを見る・・・って、そこはグンナルを守ってやれよ!
俺はそう思ったがすでに遅い。結界の中は大量の土煙がまき上げられよく見えない状態だ。二人が結界を解除し土煙が徐々に広がるとそこにはグラムの拳を両手で受け止めたグンナルの姿があった。
ってかあの一撃を受け止めるとかマジかよ!
「儂の本気の一撃を受け止めた。その意味が分かるな・・・貴様はもうあの頃のお前とは違う」
「・・・11階層の守護・・謹んでお受けさせていただきます。グラム様の代わりとして精一杯『今の貴様ごときが儂の代わりになれるか!』・・ぐは!」
えええええええええええええええええ!
っちょ、グラム!お前さっき言っていたことを違くね?
「貴様は代理人として冒険者達の相手をしろ!そして更に強くなれ!」
「がは・・・わ、分かりました」
何この熱血指導?カルラとリンドウは何故か凄く納得した様子で頷いている。
「そういうわけです。ゼノのことはお任せください。必ず話のわからない重鎮たちにオリジンの力を見せつけてみせます」
「・・・頼むから命を取るようなことはやめろよ。あっちはダンジョンじゃないしそれこそ外交問題だから」
「分かっています・・・それとゼノの建築物とかの調査も兼ねたいのでテスラやアールたちも連れて行きたいのですが」
「分かった、建設部門も大方の仕事は終わっているし。しばらくは待機命令として休暇を与えるよ」
「よろしくお願いします」
こうして11階層のフロアボスグラムとその部下数名はしばらくの間、外交官としてオリジンを離れることになった。