137話 鬼の武器を依頼したら仕込み金棒になりました
『コウキ様!コウキ様!』
商店街エリアにある食堂でざるうどんを食べていた時、突如かなりテンション高めのワイトから連絡が入ってきた。
「ズズ・・・どうしたワイト?ずいぶんと嬉しそうだな?」
『はい!来週から学校に通えるようになったのでとても楽しみです!』
そういえばワイトの仕事も終わったから約束通りテオの学校に通うことになったんだよな。二人共嬉しそうだし保護者という立場からすれば嬉しいものだが、少し寂しい。
「まあ、楽しむのはいいけどちゃんと勉強もしなよ」
『はい!』
「・・・ところで、俺に連絡を入れてきたのはそれが理由日?」
ワイトの性格からして学校へ通う報告するだけとは思えない。
『あ、どうでした。グンナルさんの武器が完成したのでその報告もしに』
・・・グンナルの武器はついでかよw
まあそれだけワイトにとって外の世界で学ぶ顔とが楽しいのだろう。
「分かった、ちょうど仕事も一段落ついているしグンナルと一緒に行くよ」
『はい、お待ちしています』
ワイトの武器か・・・正直、ワイトの武器ってデザインもかなり中二をくすぐるデザインだから新作を見るのが楽しみなんだよな。
・・・・・・・・・・・・・・
テオ 屋敷
「これはコウキ様、グンナル様・・・お帰りなさいませ」
転移門で屋敷に入るとジェームズが迎えに来てくれた。
「ただいまジェームズ。城かギルドの方から何か連絡とか来ていたか?」
「ギルドの方からはAランク昇格にあたってオークションへの招待状が届いておりました」
「オークションか・・・そういえばAランクから利用できるんだったよな。まあそれは別の機会でいいか」
「では招待はお断りするという方向で。それと城と言いますか・・・セレナ姫からなのですが・・・」
「姫様?」
「はい・・・以前プレゼントされた香水が非常に気に入ったらしく。新しいものを用意していただけないかと要望を・・・直接」
まさか、ここに来たのか?!
「分かった。一応あれは俺が作った物じゃないから作り主に聞いてみるよ」
「かしこまりました」
「ところでワイトは?今回はワイトに会いに来たんだけど」
「ワイト坊っちゃまでしたら今庭に出て剣を振っております」
どうやら今は試し切りをしている段階みたいだな。
「あ、コウキ様!グンナルさん・・・見てください凄い武器ができました!」
庭に出るとワイトが黒い剣を握っているのが見えた・・・あれ?あのデザインもしかして。
「なぁ、ワイトこれってもしかして『刀』か?」
ワイトが握っていたのは美しく輝く黒刀だった。
【煉黒刀・鬼灯】
「はい・・・この前図書館でカグツチの武器を見てグンナルさんにピッタリだと思ってこの形にしました。・・・コウキ様?」
くそ!なんだよそのデザイン!メッチャカッコイイんだけど!いや、ヒヒイロカネで作ってくれたあの剣も好きだよ?!でも、日本人の男子だったら誰もが一度は憧れる武器だぞ!しかも名前も凄くイカスんだけど!
「コウキ様どうかされましたか?」
俺が刀をガン見していたせいか、グンナルが少し驚いた様子だ。
「コウキ様、もしかしてこっちの武器の方が良かったですか?」
「あ、いや・・・あの剣は気に入っているよ。本当に!ただ、やっぱこういう武器もカッコイイなって思ってな」
「分かります!僕もこの形を見た時凄く美しいって思いました!たたっ斬るような両刃剣と違って切り裂くことに特化した形状・・・僕もこの形は好きです!」
武器の話になってかなりテンションが急上昇するワイト。本当オリジンを出た頃と比べてかなり明るくなったな。
グンナルは手渡された刀を握ると何故か刀を掴んだまま眼を閉じる。
「・・・最高の刀だ。ワイト・・・お前絶対最高の鍛冶師になれるぞ」
「ありがとうございます・・・さっそく試し切りをしてみてください」
そう言うとワイトはモニターを開き目の前に岩人形を出現させる。しかもただの岩人形じゃない・・・研磨用の特別な研ぎ石を使っているためかなり頑丈なはず。ヘタすればあっという間に刃こぼれしてしまう。
「・・・あんなのでいいのか?」
不敵な笑みを見せたグンナルが岩人形の前に立つと居合の構えに入る。そういえばグンナルって進化前はオーガ侍ってダンジョンモンスターだったよな・・・ある意味本来のスタイルに戻ったと言うべきだろうか?
「っふ!」
一閃
一般の人からすれば居合をしたのかさえ分からないくらいの速度でグンナルは刀を抜き岩人形を切り捨てる。
ゴト・・・ゴトゴトゴトゴト
目の前の岩人形を切ったかと思えば、後ろの岩人形も見事に真っ二つ。次々と重力に逆らえず上半身が地面に落ちていく。
「・・・軽く抜いただけでこれか。正直とんでもないバケモノだぞこの刀」
え?軽く振っただけであんなに?
「正直これは凄いが少し尖過ぎないか?あまりこれを人に向けたくないんだが」
確かに凄い切れ味の武器だ・・・扱いを間違えれば簡単に人を殺してしまう。
「そうですね・・・でしたら鞘に刻印魔法を施して必要時にだけ抜けるようにすれば」
「あと、少し軽すぎる・・・できれば鞘はもっと重くして欲しい。できれば鈍器みたいな」
何やら、グンナルとワイトが色々と話し合いを始めたぞ。
「あと、殴るだけでも少しは痛めつけられるのがいいな。こう棘とか」
「棘ですか・・なるほど。重さを加えるので鞘は更に頑丈にして」
ん?鈍器・・・棘・・・鬼種・・・まさか
俺は恐る恐るワイトが地面に描いていた鞘のデザインを見る。
「・・・ブ!」
思わず吹き出しそうになった・・・ワイトが描いている鞘のデザインが思いっきり鬼の金棒だったのだ。
「コウキ様、どうかされました?」
「グンナル、本当にその鞘で殴るのか?」
「はい・・・個々最近グラム様の修行で筋力がつきすぎたせいか、重い武器じゃないとしっくりこなくて」
いや確かにその金棒は見た感じ重そうだよ?というか金棒なんだし重いよな?まさかの二段階変形武器かよ!
「では僕はすぐに工房に戻って新しい鞘を作ってきます」
頭の中にイメージが完成したのかワイトはすぐに形にしたくて屋敷の中へ入っていく。
・・・後日、完成した武器はまさに鬼の金棒・・・一応扱いとしては刀なんだがこれはもう完全に仕込み金棒と言うしか無い者が出来上がった。
・・・まあ持ち主であるグンナルは非常に気に入っていたみたいで良いんだが。




