125話 勲章式に参加したら規模がデカすぎました
今日は実に荒れた一日だった。
アルラの連続ジャックポットによってカジノの中は大騒ぎ。その気になればまだまだ稼げそうだったが子供の退場時間がやって来たため、しばらくは使い切れないほどのコインを手に入れた俺たちは並べられている景品の殆どと交換して退場した。
さすがに入場禁止とまではいかなかったがしばらくはあそこに立ち寄らない方がいいな。才とかに知られたら色々と面倒だ・・・・
『よ、光輝・・・今日は随分と荒稼ぎしたみたいだな。競馬場やカジノからお前らの報告が来ていたぞ』
もうバレていましたか
「・・・まあ、俺じゃなくて主にアルラなんだが」
『なるほどね・・・さすが、『レオガラ・マルクト』から生まれた植人族だ』
レオガラ・マルクト?
『知らんのか?・・・まあ、俺も少し気になった程度で調べたんだが。神・セフィロトが最も気に入っていた聖樹で、その樹が咲かせる花を手にした者は一生幸せになれるらしい。古い文献とかにも、アルラが身に着けている花飾りと同じ物が記載されていたぞ』
実にファンタジーに登場しそうな伝説の花だな。つまり、アルラの花飾りはその幸運の花ということか?でも、俺の知る限りそんな植物メリアスのダンジョンにはないはずだが・・・
「エイミィか・・・」
そう言えば、エイミィが神核になったセフィロトを回収したって言っていたな。おそらく、ダンジョンを作る前に神核をその樹に埋め込みメリアスのダンジョンに移動させたのだろう。後は濃密な魔素を吸収させて魔物化させて復活を促すだけだからな。・・・セフィロトの最も気に入っていた樹か・・・エイミィらしいと言ったららしいな
『どうかしたのか?』
「いや、ところで要件はカジノのことじゃないんだろ?そっちから連絡してくるってことは勲章のことか?」
『ああ、急遽であるが、二日後ゾアとアルラたちの勲章の授章式を行うことになった。それと、調印の件だが二人の授章式の翌日に行うことになりそうだ』
「おいおい、先延ばしって言っていたからもっと先だと思っていたんだが」
『セレナの奴の我儘が暴走してな・・・おかげで仕事のペースがとてつもなく早く終わったんだが・・・そっちは予定とか入っていないか?一応、光輝たちの予定次第では後にずらせるが』
「セレナらしいや・・・その日は特に予定は入っていないから大丈夫だ。アルラ達には俺から伝えておくよ。調印の件も了解した」
『悪いな最後まで振り回してしまって』
「その分、美味しい料理の伝授を期待しています」
そう言って才は『期待していろ』と言って笑いながら切った。
「さて・・・明日は勲章の授章式その次は調印か・・・今更だが、それが今回の一番の目的だったんだよな・・・パーティとか観光とか邪神とかで忙しかったし・・・すげー濃密な観光だったな」
もしここにゾアがいたら「『ダンジョン交易編』が投稿されて1ヶ月も経過しておるからな」・・・とか言いそうだ。
・・・・・・・・・・・・・・・
二日後
「アルラ様、ゾア様、ランカ様、お迎えに上がりました」
翌日、城から迎えの兵士たちがやって来て3人を馬車に乗せた。
「あの・・・ワイちょっと腹痛が・・・できればコウキさんたちと一緒に牛車に・・・」
揺れる馬車には乗りたくないのか、ゾアは見え見えの嘘をつくが・・・
「駄目ですよ。私たちはまずギルド本部へ行かないといけないのです。光輝様たちはお城で待っているのですから」
アルラがニッコリ笑いながらゾアの背中を押す、そしてゾアはそのまま抵抗できない状態で馬車に押し込まれる。俺に助けを求めるような顔で見るが俺もニッコリ笑って手を振る。
お前のお仕置きはこの程度では済まされないからな。
ゾアたちは先にギルド本部に向かい、そこに待機させてある特別馬車に乗る予定だ。大々的に式を行うため、ギルド本部から城までのルートでパレードを行う形らしい。
その後、ワイト達の準備も整い俺たちも後から迎えに来た馬車に乗り城へ目指す。グンナルとオウカも参加すると言い出していたがまだ無理をさせられない状態のため休ませておいた。
「今度は逆の立場になりましたね」
「そうだな、今回は3人以外にも地脈修復に携わった兵士たちも勲章をもらうから城の外で行うらしい。国民たちの前で大々的に行うそうだ」
「「国民たちの前・・・」」
二人は想像したのか、急に足が震えだす。
「大丈夫、今回俺たちは見ている立場だからな・・・もしかしたらゾアたちが緊張・・・は無いな」
「「ですよね」」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
城の前に到着するととてつもない数の人が集まっていた。まるでパレードでも行われるのかと言いたげな雰囲気で、城へ続く大通りを空けた状態で人が立っていた。
「すごいな・・・もしかして王都中の人が集まっているんじゃないか?」
「こんな場所で勲章をなんて・・・僕たちだったら絶対立っていられませんでした」
ワイトとプラムはかなり青ざめた顔でこの光景を見るのと同時に、あそこに立っていなくてよかったと少しホッとした様子だった・・・俺だってごめんだぜ。
「お、光輝来たか」
俺たちが大通りを眺めていると、鎧を纏ったヒュウがやって来た。ダンジョンに挑んできたような軽装とは異なり、なんというか城の隊長というイメージが伝わる姿だ。
「なんか、失礼なことを考えていないか?これでも、テオの第三騎士団の隊長なんだぞ」
そう言えばそうだったな。
「ヒュウはなんでここに?」
「一応、ここの警護の担当を任されているんだが、お前たちが来たらちゃんと特別席へ案内するようにと才に言われているんだ」
なるほど、つまりヒュウは俺たちを迎えに来たってわけか。
「・・・では、皆さんをご案内しますのでこちらへ」
ヒュウは少し笑いながら畏まった口ぶりで俺たちを案内をした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「こりゃ壮観だな」
俺たちが案内された場所はまさにVIP席と言いたいくらいよい眺めの場所、城のテラスだ。周りには他の貴族らしき人たちも椅子に座りながら眺めていた。だが俺たちが入るとすぐにやって来てお礼を言ってきた。
おそらく才の言っていた事情を知っている一部の貴族たちだろう。さすがに邪神と交戦したことは知らないようだが俺たちが地脈の修復を行ったことに感謝を述べていた。
「コウキ様、知り合いがいるので話をしに行ってもいいですか?」
プラムが何かうずうずした様子で向こう側にいる子供たちが何か楽しそうに遊んでいるのが見えた。おそらく学校で出来た友達なのだろう。
「いいよ、行っておいで。でも周りに迷惑をかけるなよ」
「はい、ワイト行こう」
プラムはそのままワイトを連れて子供たちが集まっているところへ向かった。そして俺が寛いでいると何もない所から声が聞こえる。
「よ、光輝寛いでいるか?」
「・・・才か。また【認識阻害】のお守りか?」
俺のは以後から急に才の声が聞こえ振り向くと才の姿は見えないが、少し視力に集中するとぼやけてだけど才の姿がうっすらと見えた。
「まあな。これをつけていないと周りが騒がしくなるからな」
「まあ、なんとなく想像つくけど。才は勲章貰わないのか?確かお前も地脈を修復したじゃないか?」
「今更勲章3等貰ってもな・・・とりあえず、今回俺は地脈の修復の指揮を執ったってことで話を通しているんだだから勲章をもらうのは他の奴らさ・・一応受賞リストには俺の名前も載っているが」
勲章を今さらとか・・・まあ、才は十分すぎるくらいの名声をもうすでにあるからな。
「まあ、その他の奴らも授章式の後に勲章と報奨金を返却するらしいが」
「そうなのか?」
「宮廷魔導士団たちは地脈の調査を行っただけ、騎士団も住民たちの避難の手伝いだからな本人たちも勲章をもらう資格なんか無いと思っているんだ。ケイトの奴も資格が無いと言っていて返却するらしい」
「ふーん、律儀なことで。じゃあ隠密部隊は?確かアルラの話だと鳥の魔物と戦ったらしいが」
「あのな・・・隠密部隊だぞ。そんな奴らがこの大衆の前に出られるか?」
そりゃそうじゃ
「ヒスイの部下たちには別でしっかり報奨金を渡してある・・・もっとも、そいつらも大して活躍していないことに不満を持っていたから報奨金の殆どを自主的に返してきた」
本当に律儀だな。
「ってことは、今回受賞するのは」
「実質、今回の活躍は殆どお前たちで、お前たちのためのパレードってことになるな」
・・・本当あそこに立ってなくて良かったと心からそう思った。
「ほら、来たようだぜ」
そう言うと大通りの方から一斉に歓声が響き渡る。まるで某有名アトラクションパークのパレードのようなBGMと共に豪華な馬車に乗ったゾア、アルラ、ケイト。そして後ろの方から兵士や魔術師、そして一人だけ軍服姿のランカも歩いてきている。
ここからは良く見えないがアルラとケイトは民衆に手を振っているようでゾアは気分が悪くずっと下を向いている・・・余計気持ち悪くなるぞ。
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ゾアたちが城の前までに到着すると城の門前でセレナが城から現れる。それだけで民衆たちの歓声が上がるが、セレナが右手を上げるとすぐに静まる。
始まりはセレナのスピーチだ。内容は今回この王都にめぐる地脈が異常に乱れ最悪この王都が崩壊仕掛けていたという事実。だが、その危機も宮廷魔導士団長を筆頭にゾア、アルラの協力によって解決したと報告。
民衆たちは一度はどよめき出すが、すぐに解決した報告を聞き歓声を上げる。ゾアは酔いがまだ引いていないのか特に反応を見せず立っている。一方アルラはその歓声に応えるかのように手を振っていた。そしてケイトは凄く不満そうな顔で目をつぶる。
三人の勲章を渡し終え、次に地脈の暴走によって現れた魔物の撃退や民の避難に貢献した宮廷魔導士、騎士団、そしてランカに勲章が渡される。
最後にセレナのスピーチで幕を閉め勲章式は無事終了となり、盛大なパーティが開かれた。まさに、民の不安を振り払おうとするかのように。
・・・・俺達の時とは扱いが全然違うな