117話 屋敷の主は俺なのでフロアボスも俺でした
ゾアとの連絡の途中、才のフラグを回収したかのように激しい轟音が玄関の方から聞こえた。
「なんだ?今の音は?」
「コウキ様、自分が確認してきますのでここで待っていてください!」
グンナルがそう言って武器をもってオウカと一緒に出ていく。ランカも行きたい様子だがもしも揺動だった時のためにここに残った。
『光輝!今の音はなんだ?』
ゾアのモニターからも聞こえたのか才がゾアの顔を押し寄せようと顔面をつかみ話しかけてくる。
「何かが爆発した音みたいだ。そんでどうやらこっちにも邪神が来たみたいだ。今グンナルとオウカが向かった」
『・・・大丈夫なのか?そっちにフロアボスはいないだろ?』
「ああ、だからなるべく急いでくれよ。それまで時間を稼ぐから」
『了解や・・・あと5分ぐらいで到着するから・・・あ訂正。もうちと遅れそうや』
ゾアの視線が少し移動した時、時間を延ばした。
「ゾアどうかしたか?」
『どうやらあちらさんも作戦を変更してきたみたいやで』
ゾアのモニターを確認すると大量の巨大な魔物の大群が森の奥から現れ、まっすぐ王都へ進行しているのが映し出される。
「・・・なんあだよあれ!」
『どうやら、地脈が修復されたのを気づき強行突破で王都を攻め滅ぼそうとしているみたいやな』
「・・・ゾア、殲滅できるか?」
『可能ですがそうなるとそっちに到着する時間が遅れますが』
「・・・それはこっちで何とかする。ゾア、魔物の大群の殲滅を命じる」
『・・・御意!そちらもご武運を!』
俺が『命令』したことで、ゾアは真剣な表情で返事をして連絡を切る。
「さて・・・邪神の相手は俺たちでやることになってしまったな」
自分で言っておいて、かなりヤバイ状況になったことに気付くが別に後悔はしていない。
「大丈夫ですよ、光輝様なら問題ありません」
自信満々に答えるアルラ、どこからそんな自信があるんだ?と思いたくはなるが、後ろ向きよりはマシだろう。
「あの、他のフロアボス様をお呼びするのはどうなのですか?」
おずおずとプラムが提案するが俺は断った。
「今回、邪神は二人いることが分かったんだ。今後、奴らがフロアボス以上の数で襲ってきた場合俺たちも戦う必要があるんだ・・・それに・・・」
「それに?」
「ここの屋敷のボスは俺だからな」
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ゾア&才組
「それにしても物凄い大群やな」
ゾアたちの目の前に映るのは200を超える巨大魔物の大群。
「一体どこから現れたんだ?」
「んなもん、転移門なんかで出したんとちゃう?あちらは邪神や、異空間に魔物を隠すくらい簡単やろ」
そう言って、ゾアたちは向かってくる魔物の大群の方へ飛んでいく。
「そんで?ワイはコウキさんからあいつらの相手をするように命令されたが、英雄の兄ちゃんも戦うんか?」
「当然だ、ここは俺たちの国なんだからな・・・」
「なるほど・・・せやけど。休んでおき。兄ちゃん、地脈の流れを修復したばっかりに加えて邪神と戦ったんや、無茶はアカンで」
「無茶なんか・・・あれ?」
才はまだ戦えると言おうとした時、急にめまいがしだす。
「ったく、いくら神の加護があるからって無茶しすぎなんや。コウキさんもそれを分かってワイを向かわせたんやで」
そういうと、ゾアたちは魔物の大群の真上に到着する。
「何をするつもりだ?」
「これからあの魔物たちの相手をするだけや・・・安心し、なるべく被害は出さないようにするから」
ゾアはスクーターを空中停止状態にしたまま、大群の所へ飛び降りる。
「・・・ほな、裏ダンジョン、地下22階層フロアボス!『虚無の皇帝・ゾア』・・・いっちょ、やったるで!」
その後、才は裏ダンジョンの存在とその出鱈目な強さを知ることになるのだった。
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グンナル・オウカ組
「見えた!奴が爆発を起こした犯人か!」
オウカに乗ったグンナルが見たのは、豪華な服を着た痩せた男性だった。見た目は人間、だがそこから溢れる魔力は尋常ではなかった。そして、その禍々しい気配をグンナルとオウカは知っていた。
「お前!ザズムフか?」
「おや?俺のことを知っているみたいだな」
グンナルたちに気づいたザズムフはニヤリと笑い、炎の魔法を放つ。
「オウカ!飛び越えろ!」
グンナルの指示に従いオウカが『空歩』で空中を走り攻撃を避ける。
「ほお、魔天狼か珍しいのをペットにしているな」
「誰がペットだ!」
オウカはそのまま『咆哮』でザズムフを攻撃する。
「・・・っく!思ったより重い。本当にただの魔天狼か?」
「そうだが?そして私をペット扱いしていいのはコウキ様だけだ!」
「怒る所はそこかよ!」
グンナルが呆れてツッコミを入れるとそのままザズムフのへ飛び降りる。
「おらよ!」
グンナルが落下の速度を利用しザズムフに切りかかるが軽く避けられる。余裕の顔を見せるザズムフだがそれも一瞬で切り替わる。グンナルが落下した場所は見事なクレーターが出来上がっており、一撃でも食らっていたら危険だとすぐに理解する。
「へぇ・・・随分と物騒な装備しているじゃないか妖人族。もしかして、俺が送った牛共を倒したのはお前らか?」
「・・・さぁ、お前に答える必要は無い」
そういい、グンナルが剣を構えザズムフを睨みつける。
「やれやれ、せっかちな奴らだ・・・そんなに死に急ぎたいのかな!」
ザズムフが黒い触手を生み出すと、鞭のように二人を襲う。
「オウカ!そいつに触れるなよ!呪われるぞ」
「分かっている!」
「ほぉ・・・俺のことを知っているのか?ってことは、俺以外のザズムフにあっているわけか・・・えーと?」
そう言いだすとザズムフは何か記憶を思い出そうと手を額に当てる。
「ああ、思い出した。確かノフソの森にいた奴か。そうだそうだ、あの時はエドワードのことが印象に残っていたからすっかり忘れていたわ」
スッキリしたかのように納得したザズムフはニヤリと笑う。
「こいつ、あの時のザズムフ・・・いやあいつは確かにエドワード様によって倒されたはず」
「ああ、そうだ。ノフソの森で老人の亜人に憑りついた俺はエドワードによって死んだ。だが、その時の経験と記憶は全て別のザズムフ達によって引き継がれるんだよ!ちょうどいい、お前らを餌にエドワードをおびき寄せるのもアリだな・・・あの時の恨みは今でも残っているからな!」
思い出したかのように怒りの形相を見せると触手が二本に増え再びグンナルたちを襲う。
「どうした?あの時のように何もできないのか?」
「あの時の俺たちと思うな!」
グンナルの叫びと共に触手は次々と切りさかれる。
「馬鹿め!俺の【呪い】は触れた物にも浸食・・・な!」
ザズムフが余裕の笑みを見せるが、グンナルの剣は美しく銀色に輝いていた。
「吹っ飛べ!『霊鬼砲』!」
グンナルが妖気を纏った剣から鬼のオーラが出現しザズムフを襲う。が、すぐに3本目、4本目の触手が出現しグンナルの攻撃を防ぐ。しかし、予想外の威力に触手は全て吹き飛ばされ鬼のオーラがザズムフを飲み込み爆発する。
「ゼェーゼェー、その剣・・・まさか【呪い無効化】が付与されているのか?」
「正確には【除霊】だが、お前の呪いにも効果があるみたいだな・・・さすがワイトの武器だ」
【除霊】効果があると聞いた瞬間ザズムフの顔色が変わる。
「その反応・・・どうやら、この武器はお前にとって相性最悪みたいだな」
「っぐ!」
図星と言いたげな反応を見せるザズムフ、そして彼の背後にオウカが襲い掛かり見事に取り押さえる。
「私のことを忘れられては困るな」
「っぐ!いつの間に」
ザズムフは何が起きたのか理解できないように首を回してオウカを見る。そしてオウカはザズムフに見えるように顔を上げる。すると彼女の首元に何かお守りみたいなものが巻き付けられているのが見えた。
「ヒスイからもらった【認識阻害】のお守りだ・・・まだ持っていて正解だった」
それは、アルラが地脈の修復を行っている時、エンペラー・ヴェレから守るためにヒスイからもらっていたお守りだった。
「俺も途中から全然気づかなかった・・・随分と便利な道具だな」
「殆どいい所はお前にもっていかれたからな、これくらいはやらせてもらうぞ・・・それより早くその剣でトドメをさせ」
「ああ」
オウカに取り押さえられているザズムフへ近づきながらグンナルは剣を構える。
「・・・っち!お前らなんかに奥の手を使うとは思わなかったぜ」
「「何?」」
「権限『XUSMF』を発動!『邪剣・災』オブジェクト化!」
今回ザズムフの綴りが出ました。一応これにも意味があり古代言語を含め、ある法則から誕生しています。そのうち、その法則について書こうと思います。
ちなみにザズムフのつづりはXUSMFになります。