114話 神獣の話を聞いたら真実を知りました
「さて、どうしたものか・・・・」
リビングにはゾアとワイトを除いたオリジン組が集結。ジェームズたちはまた席を外してもらっている・・・正直彼らを仲間外れにしている気分で申し訳ないが事が済んだらちゃんと説明しないといけないな。
ちなみにランカが連れてきたレノ・テンペスト・タイガー、名前はロセも会議に参加できるように庭から会議に参加できるようにしてある。
「あの、コウキ様。少し尋ねたいことがあるのですが、外で何かあったのですか?」
ランカが不思議そうに庭の方に目を向けると俺がボルテックス・カイザー・バイソンと戦った惨状がまだ残っている。すぐに修復しようと思ったがラセツの対応が先だったから放っておいたのを忘れてた。
「ああ、ちょっと。魔物の大群がこっちに来てな一応殆ど殲滅して一匹だけ捕獲してある」
捕獲した奴は落ち合えず防音結界を張った檻の中に閉じ込めている。暴れ出しても出られないようにかなり頑丈な素材で作った奴だ。
オウカとランカは「おお~」と驚いた様子だがアルラだけ別の意味で驚いていた。
「光輝様、魔物がここを襲ってきたのは本当ですか?」
「ああ、ボルテックス・カイザー・バイソンが20頭ぐらいが庭に入ってきて向かってきたんだ」
そう説明し現場を見ていたグンナルが頷く。
「おかしいです。この辺りは地脈こそ乱れてはいましたがさほど重要なところではありません。襲う理由は無いはずです」
まあ確かにアルラが予想していたポイントにも魔物が襲ってきたし、ここを責める理由は思いつかない。
「光輝様、それで倒した魔物と捕獲したのはいまどこに?」
「捕獲したのは庭にいるぞ。倒したのは今も庭に放置しているが・・・」
それを聞くとアルラは急いで庭から飛び出し山積みされている巨大牛の死体を見る。そして俺も確認すると何かおかしいことに気づく。
「…地面が枯れていく」
少しずつではあるが巨大牛の周りの芝生が徐々に黒ずんでいくのが見えた・・・・これってヤバくないか?
「やはり、呪いがまだ残っていましたか。光輝様ここは私のお任せください。ですから急いで生き残っている魔物にこれを食べさせてください」
そう言って彼女が取り出したのは『改良版マナの実』であった。
「分かった」
俺は言われるままに檻に入れられているボルテックス・カイザー・バイソンの方へ走ると、そこには血まみれで暴れている巨大牛の姿があった。ステータスを確認すると【呪い】と表記されていた。
「お前、ずっと暴れていたのか・・・すまんな気づかなくて。これを食え」
そう言って俺は口を開けた瞬間を狙ってマナの実を口の中へ放り込む。そしてボルテックス・カイザー・バイソンの体は急に光り出し俺の頭の中でタマモの時と同じ機械っぽい声が頭に響く。
ボルテックス・カイザー・バイソンの進化が成功しました。
ボルテックス・カイザー・バイソンはレノ・レオガラ・ブルへ進化しました。
レノ・レオガラ・ブルとの【リンク】に成功しました。
・・・・なんかついでみたいに【リンク】まで成功しているな。
しまもこれでまた神獣が増えちまったZE。
進化したボルテックス・カイザー・バイソン、改めレノ・レオガラ・ブルは疲れ果てたのか檻の中でゆっくり眠り始めた。さっきまであった傷口なんかはものすごい速度で塞がっており【呪い】状態もすっかり消えていた。
「光輝様、そちらは終わりましたか?」
「ああ、なんか神獣に進化したがこれでいいんだよな?そっちは?」
「はい、こちらも解呪作業は終了しました、ですから後でランカさんに解体作業に取り掛かってもらいます」
ちゃっかり、肉の確保まで考えているとは・・・
「はぁ・・とりあえず戻ろう。お前の報告をちゃんと聞かないと」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
再びリビング
「さて、俺が捕獲した牛も大丈夫そうだしアルラ、その鳥を連れてきた理由を教えてくれないか?」
「はい、やはり呪いをかけられた本人に聞くべきかと思いまして。ラアロ、もう喋っていいですよ」
「分かりましたアルラ様」
俺たちが一斉にギョッと神鳥に目を向ける。
「別に珍しいことではありませんよ。オウカさんだった動物の姿で喋れるじゃないですか」
アルラは平然とそういうが・・・まあ、その通りだが。ずっと無口だったからてっきり話せないのかと・・・
「・・・ふむ、私もだいぶこの姿の力を理解できたからな・・・少し待て」
そう言ってラアロが光り出すと見事な長身の美女へと変身した。なんとなく元の姿を美女へと擬人化したような姿で、神鳥らしい神々しさが感じられる・・・もっとも、彼女は全裸なのだが。
「男性たちは眼をつぶってください!ラアロさん急いでこれを着て!」
プラムが顔を真っ赤にして叫び急いでポーチから彼女のサイズに合う服を取り出す。
・・・なんというか、テオに来てから結構ラッキースケベな展開が増えたような気がするが・・・うんテオに来てよかった。
数分後
ラアロはプラムが用意したカジュアルな服に着替え椅子に座る。
「それじゃあラアロ、話してくれるか?何があったのか?」
「ええ、私は元々この付近の山に生息するハンターピジョンというただの鳥の魔物でした。ですがある日、突然人間が現れ私を含め森に生息する魔物や動物たちを次々と捕獲していったのです・・・あれは化け物でした。何頭かの魔物が奴に挑みましたがあっという間に無残に殺されました」
それを思い出したかのようにラアロは体を縮こませて震える。
「私たちはそのまま、どこかの建物の中に連れていかれ毎日何匹もの仲間たちが檻から出され何かを流し込まれたのです。そしてその殆どがすぐ死に、たとえ生き残ったとしても翌日には息をしていませんでした」
おそらくザズムフが動物たちを使って魔物化や進化の実験をした光景なのだろう。
「そして私の番が来た時とうとう死ぬのだと思ったのです。あの男から黒い何かが私の中に流れ込みそこからは記憶がありません・・・ただ、運が良かったのか悪かったのか私はなんとか死ぬことを免れましたがそこからは生き地獄のように苦しいことしか覚えていません」
なるほど、そこからはよく覚えていないようだしそれほど重要な情報は得られないみたいだな。まあ、情報が得られるかは別にしてもアルラだったらどんな理由でも助けていただろう。
「他に何か覚えていることはありませんか?相手の外見とか?」
「一人は太った男でした」
・・・え?一人は・・・?
それを聞いた瞬間、俺とアルラはお互いの眼を合わせる。
「ラアロ、あなたを捕まえた男以外に誰かいたのですか?」
「はい、もう一人はかなり豪華な服を着たやせた男が・・・その人も黒い何かを使って私たちの体に流していました」
マジかよ・・・邪神は1人じゃない!
そして、再び俺のモニターから新たに『侵入者あり』というメッセージが映し出される。
レオガラは古代言語で『回復』を意味します。