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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第七章 ダンジョン交易編
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113話 相手が呪いを使って来たので呪いで防ぎました

ケイトは目の前の光景に唖然とした。


ゾアがとてつもない魔力が蓄えられた果実をワイトに食べさせた瞬間、脳内に響く機械じみた声。それが誰の声なのか分からないが、唯一分かったことはワイトに変化が出たこと。


外見は特に目立った変化はない。元々色白だった肌の色が少し健康そうになり、黒髪と白髪のグラデーションがミックスされ綺麗な銀髪へなったぐらいだ。だが、体から溢れる膨大な魔力・・・それは子供・・・いや人が持つ量ではなかった。


「ゾアさん・・・今のは?」

「そういや、以前オリジンに来た時は会議に参加しておらんかったな。さっきワイトに食べさせたのはオリジンの秘密兵器『改良版マナの実』や」


『マナの実』それを聞いた瞬間ケイトは立ち眩みを起こした。歴史的文献によく登場する伝説ともいわれた果実をポンと取り出しそれを少年にあっさりと食べさせたのだ。もっと観察したかったとケイトは後悔の渦に飲み込まれているが今はそんなことを考えている状況ではない。


「ワイト、どんな感じや?」

「・・・なんか、何でもできる・・・そんな気持ちにさせられるほど力が溢れてきます」

「なら、頼むで。今からいう情報を地脈に流してくれ」

「了解しました」


ゾアは平然とワイトに指示を出しあふれ出る魔力を地面に流し始める。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

北エリア


「そこをどけ!」


八本へと増えた黒い触手を操るザズムフ・・・その攻撃を英雄組達は全て防ぐ。


「弾くときは俺が凍らした部分を狙え!呪いは直接触れなければ大丈夫そうだ」

「分かったにゃ!」


襲い掛かる触手、その所々がヒュウの氷によって凍らされ、全員がその氷の部分に攻撃しはじき返す。


「・・・ったく!ウチの大将はまだ終わらんのか?!」


かれこれ数十分が経過しつつも未だ才はピクリとも動いていなかった。


「とりあえず若が動くまでここを耐え忍ぶしかないでござる!忍びだけに!」

「それくらい軽口叩けるならまだ余裕そうだな!」


次々と襲い掛かる触手の猛攻、それらの攻撃を四人が防ぎ続けた。


「ったく、面倒なヤツだ。後ろの奴を攻撃できれば終わりだってのに!」


ザズムフはひたすら無防備になっている才を狙って攻撃をする、だがそれがかえって攻撃範囲を狭めることになり全員がその攻撃を対処できていた。だがそれも時間の問題、ザズムフの攻撃の勢いは減るどころか勢いを増していた。


「っち!あんな出鱈目な【呪術】使ってなんであいつは平然なんだよ!」


この世界には魔素を使用する魔法がいくつも分類されている。【魔術】を始め【天術】、【忍術】、【妖術】、【神術】、【精霊術】などが存在する。その中でも【呪術】は特殊であり、少量の魔素で能力の高い魔法が発動できるものであった。【呪術】は魔素をそこまで必要としない、必要なのは強い『負の感情』・・・『憎悪』、『妬み』、『怨嗟』など様々。そのため、多くの呪術師が戦争で駆り出され多くの功績をあげたが同時に多くの犠牲者を出してきた。


【呪術】とは諸刃の剣でもあり、使用者の精神を徐々に蝕み最終的に精神を崩壊させ廃人と変えてしまう。中には自我を維持できず自害する者や暴走し仲間を虐殺した者もいる。ゆえに【呪術】はアルヴラーヴァの中で禁術という扱いになっていた。


「それだけ、奴の精神が強いか、すでにイカレテいるか・・・・間違いなく後者でござるな」


ヒスイがそう判断すると全員が頷く。


「とりあえず、あいつを止めないと・・・って!ヤバイ!」


ヒュウが気づいた瞬間、8本の触手が16本へ増え一斉にヒュウたちへ襲い掛かる。


(・・・才!早くしろ!これ以上はヤバいぞ!)


ヒュウは必死の形相で未だ地面に手を付ける才を見る。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


才は今地面に流れる膨大な情報の海に飲み込まれていた


「・・・あと少しだってのに、なんだよこの気持ち悪くなうような情報は!」


才の作業は順調だった・・・だが、途中で何か壊れた情報が流れ込みうまく処理できない状態になっていた。まるで、パソコンでデータをダウンロードしている間にウィルスデータが急に入って来るような、急激の重さ。


「・・・このデータは邪神のか。やっぱり邪神が地脈を乱していたみたいだな・・・ったく、抜かりない奴だぜ」


ザズムフが事前に流し込んでいた『憎悪』という感情。それがザズムフの無尽蔵の【呪術】の正体だとは才はまだ気づいていない。


「とにかく、こいつもなんとかしないと・・・なんだこれは?」


まるで霧が晴れていくように体が徐々に楽になっていく才・・・そして彼が眼にしたのは光り輝く少年の姿。


「・・・君がやったのか?」


光の少年は何も言わずコクリと頷く。


「・・・ありがとう」


才はお礼をつけると少年は情報の海の流れに身を委ねるようにその場から去っていく。


「よし!あともう少しだ!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ハァハァ!ったく!マジでしつこいっての!」


ヒュウがそう叫びながらザズムフを見る・・・触手の数は32本に増える。


「フヒヒヒ!随分頑張ったみたいだがもう終わりみたいだな」


勝ち誇った笑みを見せるザズムフ・・・ヒュウを含め、ヒスイたちも息を荒立てながら武器を構える。


「残念だがこれで終わりだ!」


ザズムフがそう告げ、64本へ増えた触手が一斉に才に襲い掛かる。


『レーザー・ショットガン』


だが次の瞬間、64本の触手が一斉に白いレーザー砲によって貫かれた。


「な!」


絶句するザズムフ、そして彼の前には『覇者の魔銃』を持った才の姿。


「よお!邪神!随分この国で好き勝手暴れてくれたみたいだな。ふざけた真似をしてくれた落とし前、きっちりつけてくれるんだろうな?」


そのセリフはとても英雄と呼べるようなものではないが、仲間たちは気にしない・・・いや、英雄らしくない姿こそ彼らの良く知る才なのだ。


「才!お前、どういうタイミングで戻るんだよ!主人公か?お前はどこかの漫画に登場する主人公気どりか?!」


ヒュウが何やら叫ぶがその気持ちは全員理解できる。絶体絶命の一歩手前でこの行動・・・まるで物語に登場する主人公のようだった。


「知るか・・・つーか、ヒュウお前なんだよその姿?ボロボロじゃないか」


才がヒュウの姿を見て呆れ果てた様子でため息をつく。


「あぁ?!こっちはハンデ背負って邪神と戦っていたんだぞ?何なら今すぐてめえを盾にして一緒に凍らせようか?そうすれば瞬殺だぞ」


青筋立てながら才を睨みつけるヒュウ。


「・・・盾か。凍らされるのはご免だが悪くない作戦だな」

『は?』


才がそういうと全員がキョトンとした顔で言う。


「つーか、お前ら俺の体質忘れていないか?」

『あ!』


才がそう言った瞬間全員がは思い出したかのように声をそろえる。


「そんじゃさっそく行きますか!」


そう言いだし、才はモニターを操作していつもの大剣を取り出しザズムフへ一直線に突き進む。


「血迷ったか!」


ザズムフが一斉に64本の触手で才に襲い掛かる。才の【万能鑑定】により最善のルートを割り出し次々とザズムフの触手をよけながら切り捨てる。


「バーカ!お前の剣が触れた時点で呪われているんだよ!呪い死ね!」


ザズムフがそう叫ぶもの、黒く浸食していく剣を才は手放さなかった。それどころか次々と触手を切り捨てていく。そして才の剣が真っ黒に染まり柄の部分が黒く染まった時、才が武器を手放すと悟り背後から65本目の触手を生み出し才を襲う。


「言っただろ、すでに【鑑定】済みだって」

「な!」


才は剣を捨てずに65本目の触手を切り捨てる。だが驚くのはそこじゃなかった。剣は見事に呪いで黒く染まっている。なのに、呪いは全く才へ浸食しようとしなかった。


「何故だ!なんで俺の呪いが効かない!・・・まさか【呪術無効化】」

「いいや、俺はそんなスキルは持っていない・・・必要ないからな」


ザズムフが困惑した様子で言うが、才がさらに混乱させる一言を言う。


「バカな!呪い無効化が無くてなんで俺の呪いが効かない!・・・そうかお前!」


混乱しているザズムフにヒュウとヒスイがそれぞれ左右から一撃を入れる。触手の攻撃を全て才が引き受けてもらったおかげで二人は魔力を集中させてでかい一撃を叩き込む。


『瞬雷!』

『永久氷壁!』


ヒスイの電撃を受けた瞬間、ヒュウの氷によってザズムフは最後まで言えないまま氷に閉じ込められた。


「・・・ふぅ・・・って、いててて!やっぱ邪神の【呪い】は強いな。掌がビリビリしやがる」


安心した瞬間、才は糸層に手を手放し剣を投げ捨てる。だが彼の手は全く呪いに浸食されていなかった。


「また・・・シン様に助けられましたね」

「正直、この体質がこんな風に役立つとは思わなかったが」


そう言って才は自分の体を見る。


【呪い】の特徴は呪いは1つしか受け付けないこと。もし、二つ以上の呪いを受けた場合、強い術者の呪いしか残らない。


才がこの世界にやってきてすでに7年が経過、しかしその肉体は殆ど成長を見せない。それもそのはず、彼は神・シンから【神罰】である『不老』という最大級の【呪い】を持つのだから。

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