109話 ゴッドスキルがチートだったので無双しました
西エリア
「またブレスが来るぞ!総員!退避!」
ヒスイが指示を出すと接近していた部下たちが一目散にエンペラー・ヴェレから離れる。そして2秒後に口から黄色い炎が吐き出された。
「・・・まったく、レベル57とはふざけすぎでござる。空を飛ぶなんてこちらが圧倒的に不利・・・加えてあれでござる」
ヒスイが目を向けたのは地面に突き刺さったエンペラー・ヴェレの巨大な羽。一見黒い羽のように見えるがその素材は鋼のように硬い。
「あの鎧のような羽のせいでこちらの攻撃が殆ど効かんでござる。忍術で攻撃したいが距離が足らんし・・・・」
苦虫をかみつぶしたようにエンペラー・ヴェレを見るヒスイ。さっきから部下たちが手裏剣や苦無を投げつけるも鋼鉄の羽によって全てはじき返されている。
「ヒスイ殿・・・先ほどから思っていたのだが、あの鳥さっきからブレスしか使用していないのではないか?」
「何?・・・確かにその通りでござる」
アルラの警護にあたっていたオウカはヒスイの近くへ歩くとアドバイスを伝える。
オウカの言葉にヒスイも思い出す。
「おそらく、あの鳥はレベルこそ高いが技の数は多くないのではないか?」
「・・・なるほど。そうなればこちらも攻撃が仕掛けやすい。助言感謝するでござる!」
そう言い残し、ヒスイは部下に連絡を取り再び戦闘態勢に入る。
「・・・やれやれ。私も参戦できればもう少し楽であるものの・・・まあ、もうじき修復は終わると思うが」
アルラの護衛という重役を任されている今、オウカはただその仕事を全うすることだけを考えていた。
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南エリア
「うりゃあああ!」
ランカの気合の入った声と共に巨大虎は彼女に投げ飛ばされていた。
「すごい、一体どうやってあの巨体を投げられるだけの筋力が・・・」
「獣人の中でも特に戦闘力が高い虎種でもあそこまでの力は発揮できんぞ」
「何か仕掛けでもあるのだろうか?」
その一方で彼女の戦いを分析をしている宮廷魔導士たち。始めは邪魔だから離れていろと伝えて手出しをさせなかったが次第に彼女が一方的に虎を倒す姿を見て観察しだしたのだ。
その光景にランカは苛立ちを隠せないほどストレスを感じていた。
「あんた等!手を出すなって言ったけどそんな暇あるの?」
「ご安心を!半数が団長とゾアさんの警備をしっかり行っています」
全員でやれ!
っとランカは叫ぼうとしたが我慢した。
「とりあえず、申し訳ないがこの怒りがアンタにぶつけさせてもらうよ!」
そのまま飛び膝蹴りを炸裂させ、グラディウス・ホワイト・タイガーは見る影もなくボコボコにされていく。
「・・・獣王だ・・・獣人の王がいる」
「お姐様~」
魔導士の誰かがそう呟いていた
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北エリア
「せりゃ!」
スイの渾身の一振りをザズムフは軽やかに避ける。肥満体系からは想像できないシン大層なジャンプに二人は苦戦していた。
「まったく、いったいどんな体のつくりをしているのよあの男は」
「にゃ~デブなのにサルみたいにすばしっこいにゃ」
「フヒヒ・・・いいぜ、楽しいぜ」
牛刀を構えたザズムフは歪んだ笑みを見せながらスイたちの後ろにいる才見た。
「後ろにいるやつは何やら忙しそうだな・・・こっちに全く気付いていないようだが」
激しい戦闘の中、才はいまだに修復作業に取り掛かっていた。膨大な情報を読み取る作業と修復することに殆どの神経をそこに注いでいるからだ。そのため今の才は無防備に等しい状態だった。
「あなたぐらい私たちで十分よ」
「そうにゃ!けっしてサイ兄ちゃんが集中しすぎて何もできない状態になっているわけじゃ無いにゃ!」
マヤが堂々と宣言すると、スイがあきれた様子でマヤを見る。
「フヒヒヒ!そうかそう言うことか!じゃあ遠慮なく『させません!』・・・っと」
ザズムフが真っ先に才を狙おうとし、スイが斧を振り回す。
「バカマヤ!全力で才様をお守りするのよ!」
「りょ、了解にゃ!」
鬼気迫るスイに驚いたマヤがビシッと敬礼ポーズで反応する。
「フヒヒ・・・いいぜ、少し遊んでやる」
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庭
俺の前の前には20頭の巨大牛が電気を纏って突進してくる。もし人間の頃の俺だったら全部グンナルたちに任せていたかもしれないが今は違う。半神半人になったことでダンジョンの中ではなんでもできる気分になっていた。
「ちょっと、実験に付き合ってもらうぜ」
俺が一つのモニターを操作すると、一瞬で群れの真下にポッカリ穴が開いた。ボルテックス・カイザー・バイソンには飛行能力なんて無く、当然重力に逆らえず穴に落ちる。
「やっぱりここもダンジョンと同じ、簡単にフィールドの編集ができるな・・・そんじゃ次は・・・」
次のモニターを操作し、穴から大量の水が噴射され、巨大牛を突き上げる。何頭かは十数メートルまで突き上げられられる。
「・・・よし、次!」
次々とモニターを操作しボルテックス・カイザー・バイソンを蹂躙していく。
カードゲームやSRPG風に言えば『ずっと俺のターン』の状態だった。
重力エリアを設定し通常の100倍に設定し、物質具現化により岩を上空に出現させ隕石のように降らせ、天候魔法によって竜巻を起こす。その光景はまるで聖域に踏み入れた愚か者へ神罰を与えているようだった。
「ふぅ・・・少しやりすぎたかな?ダンジョンの魔力はそこまで消費しないようにしていたが」
俺はモニターで魔力残量を確認し問題ないと判断した。目の前には死屍累々と化したボルテックス・カイザー・バイソン・・・一頭だけはアルラに見てもらうために捕獲しておいた。
「さすがコウキ様です・・・自分が出る幕は無かったですね」
「あ、もしかして戦いたかったか?」
正直自分の力を試したい気持ちが勝ってつい19頭も倒してしまった。
「なあ、グンナル。やっぱり少し変だと思わないか?」
「変とは何のことでしょう?」
俺は檻の中に閉じ込めた巨大牛を見てグンナルに言った。
「いや・・・今の牛、レベルの割にはあまりにも弱すぎるんだよ」
「・・・確かに。レベル55と言ったらグラム様と同じレベル。とてもグラム様と同等とは思えませんね・・・いや、むしろグラム様と比べるのも失礼なくらいに」
「お、おう・・・なんというか粗いというか・・・質が薄い感じなんだよな。フロアボスや強者が放つオーラみたいなものが感じられない」
なんというか、ただ養殖したような感じで・・・ダンジョンにいる下層のレアモンスターの方がまだ強者としてのオーラを放っているような気がした。それこそただレベルを上げただけでそこまでステータスが上昇していないような・・・
「質・・・ですか。確かに気になりますね。自分もあの大群を見てそこまで脅威には感じられませんでした」
まあ、後で色々と調べればいいさ。それよりも・・・・
「コウキ殿。これは・・・いや、あなたは一体何者なんだ?」
ラセツは蹂躙されるボルテックス・カイザー・バイソンの残骸を見ながら俺に質問した。
さて・・・なんて、説明しよう。
屋敷エリア・・・光輝、防衛成功
主人公のターンは速攻で終わりましたwまあ、光輝のチートさは戦闘にも活かされるということです。普段はダンジョンの中をいじったり、新しい素材を生み出したりしていますが。