106話 邪神が現れるそうなので防衛戦を開始します
邪神という答えにたどり着いたヒュウ。
セレナたちにも分かりやすく一連の説明をしてようやく本題に取り掛かった。
「・・・つまり、邪神が地脈を暴走させてテオを崩壊させようと企んでいるわけか?そして魔物の暴走や地震の多発はその暴走の福産」
「そういうこと」
「しかし、邪神と言ったら【災害のザズムフ】、【疫病のゾフィ】、【疑心のジック】・・・私の【住民検索】でそのような人物はおりませんでしたが」
テオの国内であればあらゆる住民の居場所などを調べられる国王限定スキルを持つセレナが疑問を持ちながら言った。
「今の邪神は肉体も持っていませんから、力のみが人に憑依している可能性があります。そうなれば姫様の【住民検索】に引っかかることはありません」
スイが説明して少し納得したセレナ。
「そうなると厄介だぞ。邪神が今もテオに侵入している可能性もあるし、もし今すぐ地脈を暴走させたら王都は一気に火の海だ」
ヒュウの言う通り、事は一刻を争う事態となっている。
「ヒュウ、この地脈の乱れってのはこっちで直すことは可能なのか?」
「可能と言えば可能だが、範囲が広すぎる。なんとか修復してもその間に爆発させられたら終わりだ」
手の打ちようがない状態となり、部屋の空気はかなり重い。
「せめて起爆させる前に、邪神の居場所が分かれば・・・」
「可能性が高い場所でしたら、いくつか検討があります」
『な、なんだって!』(本日二回目)
まさかのアルラの爆弾発言・・・良い意味で
「アルラ、本当なのか?」
「はい、この地脈ですがテオを崩壊させるための起爆ポイントは限られます・・・こことここ・・・あと、ここですね」
アルラが指をさした先に、ゾアがモニターを操作して×印を付けていく。
「かなりばらけているな・・・」
才の言う通り、三つのポイントは見事に西、南、北とお互いかなり離れた個所だった。
「・・・ここのポイントに邪神が現れる可能性が一番高いわけか」
あくまで可能性だが、まったく分からないよりははるかにマシだ。
「セレナ、今の三か所周辺に人はいるか?」
「え?・・・えーと、その辺りは住宅街から離れているし、人はいないわね」
セレナが急いでモニターで確認するとまだ邪神は現れていないらしい。
「でしたら急いで、その場所を抑えましょう。時間がかかりますが、私とゾア様がいればそのポイントの地脈を修復することができます。2ヶ所の修復が早く終わればたとえ起爆させても被害はそこまで出ないはずです」
それを聞いたセレナは希望が見えたのか、表情が少し明るくなった。
「なら急ごう・・・光輝、悪いが手を貸してくれ」
「元々貸すつもりでこの話をしたつもりだったんだが?」
俺が笑って言うと、才を笑ってハイファイした。
「こっちもケイト、マヤ、ヒスイに連絡を入れて人払いをさせる」
「分かった・・・地脈の修復だがあと一人必要じゃないか?」
「それは俺たちで何とかする・・・光輝は西と南の方を頼んでいいか?」
「分かった」
一刻を争うため、才達は急いでギルド本部に戻り戦闘準備と警戒網を展開することにした。
「そんじゃ、皆。忙しくなると思うがテオの救出作戦を開始するぞ」
『御意!』
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数分後、西エリア
「頭領!カンザキ・エドワード・コウキの仲間が到着されました」
時計台のてっぺんから国を見渡しているヒスイの陰から黒い忍者装束の男性が現れ報告を受ける。
「予想以上に早い到着でござるな・・・了解した、丁重に集合場所まで案内するでござる」
「御意」
男性が再び影に潜るとヒスイは美しい王都を再び眺める。
「さて、ギルドの一員として都を守るとするでござるか」
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南エリア
「あなた達、急いで作業に取り掛かりなさい」
「団長!ゾアさんがこちらへお見えになりました」
「分かった、すぐにこっちへ連れてきて」
ギルドの一人からの報告を受けケイトはいつものように冷静に対応し今自分ができることをしていた。
「まったく、こんな状態までよく気づかなかったなんて・・・私もまだまだってことね」
己の不甲斐なさを痛感したケイトはただひたすら現場の地脈のデータを集めていた。すぐにやって来るゾアのために少しでも自分ができることをしていたのだ。
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北エリア
「にゃ!才兄ちゃんやっと来た!言われた通りギルドの人にお願いして他の人が来ないようにしたよ」
「ご苦労だったなマヤ・・・これから忙しくなると思うが頑張ってくれ」
「了解にゃ!悪い奴が来たらマヤがボッコボコにしてやるにゃ!」
「・・・頼りにしているぞ」
張り切るマヤに才は優しく彼女の頭を撫でて、地面に流れる地脈を【鑑定】する。
「さて・・・これから忙しくなるぞ。防衛戦の始まりだ」
まるで、開戦の合図かのようにテオの時計台の音が王都に響いた。