102話 王都を観光したら王立学校へ行きました
昼食を食べた後は軽くショッピングを楽しむことにした。
リズアの皆へのお土産ということもあり、俺は店にあるものをあらかた爆買いしていった。予算はかなりあるから残額の心配は殆どない。
ワイトとプラムもそれぞれ新しい作品のための素材を色々と買いあさっていた。さすがギルドが運営する店ということはあり、正直ここで買えないものはないんじゃないかと言いたくなるくらいの品揃えだった。品質も安物から高級品まであり、なんというかすべてのジャンルの専門店って感じだった。
「へぇ・・・結構あるな。お、このナイフかっこいいな」
ピク
「光輝様、こっちのアクセサリーとか素敵ですね」
ピク
最近色んな品を見るようになってきたせいもあって鑑定スキル無しでも良い品かどうかは分かるようになってきた気がする。
「コウキ様・・・どんなナイフがいいのですか?」
「え?」
何やら対抗心むき出しのワイトがまっすぐな目で俺を見ていた。
「アルラさん、これくらいのアクセサリーでしたらあたしも作れます」
「え?すごいですね」
何やら職人としてのプライドに火が付いたのか、プラムとワイトは今すぐ工房に向かいたいそうな顔をしていた。
こういう所はやっぱり子供だな。
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ショッピングエリアでお土産を爆買いした後はいよいよ、ワイト達が楽しみにしていた学校だ。
「学校はギルド施設のすぐ近くにあるのでこのまま徒歩で行きます」
「ってことは、ワイト達が通うとしたら馬車での通学になるのか?」
屋敷からギルド施設までかなり距離がある。いくら元気な子供でもあの距離の通学は厳しい。ゾアに頼んで二人の馬車でも用意してもらおうかな。
「そうですね、一応通学用の馬車が用意されているのでそれを利用するといいですよ」
「通学用の馬車?屋敷の近くまで迎えに来てくれるのか?」
「はい、いくつかギルドが馬車を用意していまして、指定の場所まで迎えに来てくれるのです。光輝さんたちの世界で言えば『通学バス』みたいなものです」
なるほど、それは確かに便利だな。
「まあ、その辺は学校が通うことが決まってからでいいだろう」
まあその通りだな。
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王立学校というだけはありかなり大きい場所だ。歴史的建造物を学校として利用している・・・そんな感じの建物だ。入り口で出迎えてくれたのは40代くらいのスーツ姿の女性だ。
「才様、お待ちしておりました」
「ミランダ校長、悪いなわざわざ時間を取らせてしまって」
「いえ、才様のスケジュールと比べたらこの程度問題ありません。そちらの方たちが今回見学をされたい方たちですか?」
「ああ、光輝紹介する。テオ王立学校の校長のミランダ・カールだ」
「ミランダと申します。生徒たちからはミズ・ミランダと呼ばれています。本日は皆さまをご案内させていただきます」
ミランダが丁寧に挨拶をするとこっちも挨拶をして、さっそく学校の中を見ることにした。
ちなみに、ミランダは俺たちはつい最近引っ越してきた人程度しか才から聞いていないらしい。
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「さすが王立学校だな。中もすごく豪華だ」
歴史ある建造物の一部を学校として使っていると言えばわかりやすいだろうか。城とは別の歴史を感じさせるこの建物は学ぶ環境としてはかなり適している気がする。
「現在、この学校では約500人の生徒が通学しています」
500という数にアルラ達は驚いているが、俺は王都の大きさからしてまだ少ない方だと思った。まあ、リズアの生徒数は大体40人くらいだから当然そういう反応だよな。
「思ったよりも少ないですね。王立だからてっきりもっと多いのかと思っていましたが」
「教員の数がまだ足りていないので、教えられる数にも限度があるのですよ。それに勉強するよりも家事や仕事を学ばせたいという大人が未だに多くて」
ああ、なるほど。どの時代も教員不足は共通する問題なんだな。それにテオは戦争があった国だ、勉強よりも生活を優先にする人が大勢いるはず。こういうのはもう少し時間をかけて解決させていくしかないのかな。
「ですがこれでも創立時と比べたらかなり増えたのですよ・・・5年前はたったの30人だったのですから」
30人から5年で500人か、そう考えると着実に勉強の大切さが分かってきたのかな。というか、この学校見た目が歴史溢れるせいで分からなかったが創立まだ5年だったのか。
「生徒の学力のバラツキが激しいせいでなかなかレベルに合った授業ができないのも問題で・・」
「へぇ・・・」
「こちらが今学校で一番レベルの高い特進クラスの授業です」
俺たちはドアの窓から覗き込むように見ると、7人くらいの生徒たちが授業を受けていた。レベルが高いというだけはあり、皆しっかり教養を受けてきたような良い身なりの服を着ている。
てっきり上級生ばかりかと思ったら少しワイト達よりも幼そうな子もいるから、完全に学力で分けられたクラスなのだろう。
「特進となると貴族や幼いころから勉強してきた子だけになってしまいまして、殆どが貴族の家系や大商人のお子さんなのです。ちなみにマヤちゃんも特進クラスの生徒なのですよ」
『え?』
俺たちが一斉に才の後ろにいるマヤちゃんに目を向けると、エッヘンという風に胸をはる。てっきり勉強ができないキャラだと思ったらまさかの特進クラスの生徒かよ。
「本日は才様から遅刻すると伺っていますが。この後授業を受けるのですか?」
「ああ、マヤそれでいいな?」
「にゃう・・・もっとサイお兄ちゃんたちと一緒にいたかった」
どうやら、俺たちに会うためにわざわざ遅刻扱いで同行していたみたいだ。マヤは少し残念そうな顔をしていた。
「あとのクラスは年齢ごとにクラスを分けられています。」
後のクラスは俺の知っている小学校みたいに学年ごとにクラス分けだった。
あらかた、見学をし終えるとワイトとプラムはテンションが爆発しそうに必死にこらえていた。
「どうだ?ワイト、プラムここで勉強したいか?」
『はい!』
元気のいい返事だこと。
「ミズ・ミランダ。そういうことで、入学はまだ先になるがいずれこの二人を学校に通わせてもらえないでしょうか?」
「ええ、歓迎します。そうですね、今日だけ特別に体験授業を受けてみてはどうでしあう?マヤちゃんと親しいみたいですし特進クラスで勉強してみてはいかがでしょう?」
ミランダがそう言うと、マヤちゃんと二人の顔がパアっとさらに明るくなる。
「いいのですか?」
「ええ、いずれお二人はここに入学するのですから、少し先に馴れるのも良いかと思います。それに才様からお二人はかなり優秀だとお聞きになっています」
まあ、技術者としては優秀だが・・・・そういえば勉学の方はどうなんだ?あんまりそう言うのは気にしたことが無いから分からない。
「プラムたちと一緒に勉強にゃ?」
「担任の先生と少し話をしますので少々お待ちください。マヤちゃん、お二人をクラスまでご案内してもらえますか?」
「了解にゃ!プラム、ワイト、こっちこっち!」
マヤが嬉しそうに二人の手を引っ張りクラスの方へ向かった。クラスに馴染めるかどうか心配だが、マヤちゃんがいるなら大丈夫かな。
「問題ないだろう・・・むしろ、あの二人が入って特進クラスにいい刺激になってくれるはずだ」
何かを確信したかのように才は小さな三人の後ろ姿を見た。