100話 王都を観光したらギルド本部へ行きました
とうとう100話に到達!
特にスペシャルな話を用意していませんがこれからもよろしくお願いします!
王都テオの観光は才が用意した馬車で行うことになった。やはりあの狼車だと目立ちすぎるらしい。
「うう・・・気持ち悪い」
「・・・」
揺れる馬車になれていないせいかゾアは顔色を悪くした状態でブツブツ言いながら座っている。グンナルも元々乗り物とかには弱いせいで無言で目をつぶっていた。
アルラ、プラムとワイトは年が近いマヤちゃんと仲良くテオの話を聞いていた。見た感じマヤちゃんは13歳くらい、10歳ぐらいのワイトたちにとっては憧れのお姉さんに見えるのかな?マヤちゃんも嬉しそうに話をしている・・・内容の殆どが肉料理なのは気のせいだろうか?
ちなみに前日同様、ゾアたちにはサブアカウントで外見を変えてもらっている。今回向かう場所もかなり人が多いそうだ。
「まあ、あんな高性能のやつに乗った後にこれじゃそう言う反応だよな」
「一応、これはギルドの技術部が開発した最新型なのですがね」
スイちゃんは少し悔しそうに言っているが、あの狼車を体験しているせいもあって強く言い出せない様子だ。
「もしかして、サスペンションとかを入れたのか?馬車にしては快適な方だなって思っていたが」
「ああ、やっぱり気づいていたか」
「コウキ様、サスペンションとは何ですか?」
ワイトが興味津々に聞いてきた。ゾアも興味ありそうだったが酔っているため聞く気力がなさそうだ。
「狼車に組まれている【衝撃吸収】と似たようなものだね。今は動いるから見れないけど、車輪の辺りにバネが付いていてそれが衝撃吸収の役割を果たしているんだ」
「ということはこれには魔法が一切かかっていない状態ということですか?」
魔法具に慣れた生活をしていたダンジョン住民たちには衝撃的なのだろう。ランカがそういうとプラムまでも色々と見渡し始めた。
「そういう反応してくれるとこっちも作ったかいがあるよ。性能だとお前たちの狼車には到底及ばないが、これはいずれ王都周辺の村とかに支給する予定なんだ」
コスト面においてはこっちの方が効率的だからな。これが普及すれば移動手段はかなり楽になるだろうな。
「皆様、そろそろ本部に到着です」
「いよいよか」
「とても楽しみです」
ようやくギルド本部に到着すると考えると少しテンションが上がった。やっぱりギルドに入った以上本部は見ておきたいからな。
俺たちは期待しながら窓から顔を出すと予想外な建物がいくつも建てられているのが見えて俺はすぐさま目をそらす才を見た。
俺たちの目の前に・・・ファンタジーという世界から逸脱した建物がいくつも建てられていた。
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ギルドの本部はキャンパスのようにいくつもの建物が建てられており、それぞれ専用の建物に分けられているらしい。
この程度ならまだいい・・・だが、一番ツッコミを入れたいのは。まるで 六本木にあるようなガラス張りの建物が目の前に広がっていることだ。
「才・・・もう少し自重したらどうなんだ?」
「ヒュウにも同じことを言われたんだが、どうしてだ?」
全く疑問に思っていない才。そういえば才は漫画やこういったジャンルの話を全く知らないんだった。だから異世界で地球の技術を大々的に広めるという行為に全く抵抗を感じずに堂々とやっているんだよな・・・主に食文化に関しては。
「すごいです、あの建物鏡に覆われています」
「テスラ姉さんが見たらきっと喜びそうな建物が沢山です」
ワイトとプラムはテンションがかなり上がっている様子だ。まあ、初めてあんな建物を見たら子供はそういう反応をするだろうな。
「それじゃあギルドの観光だが、どこから見るか?」
「んじゃ、依頼受付の所を見たいかな・・・今後ワイトたちもお世話になると思うし」
トレスアールと王都がつながった今、ワイト達もここで依頼を受けることができるんだから一応見ておきたい。
「分かった、それじゃ付いてきてくれ」
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ギルドホール
まず俺たちが向かった場所はギルド施設の中で一番大きい建物だ。ガラス張りのドームと少し異様な感じではあるが周りの人は慣れているのか普通に中へ入っていく。ちなみに、才達は【認識阻害】のお守りで周りには気づかれないようにしている。
「うぁ・・・やっぱ人の規模が違うな」
トレスアールのギルドもかなりの冒険者がいるがここはその数倍の数が依頼を受ける端末に並んで選んでいた。
「ここでは毎日500以上もの依頼が王都や周辺の村から受け付けているのですよ」
「周辺の村って・・・・わざわざここに来るのか?」
「いえ、受付カウンターの後ろの方を見てください」
スイちゃんがカウンターの方に指をさすとカウンターの後ろで複数のモニターを操作している人が何人もいた。
「周辺の村の住民の何名かがギルドメンバーとして登録してもらい、伝達役をしてもらっているのです」
「へぇ・・・面白いこと考えるな」
人同士の連携が無いとできないことだが、才はモニター操作のシステムをうまく使いこなしている。
「では、次の場所へ向かいましょう」
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次に訪れたのは巨大な体育館みたいな場所だった。
「よう、お前たち来ていたか・・・ってことは才も・・・やっぱりいるな」
入り口にいたのは武装した姿のヒュウで俺たちを見ると後ろにいる才にも気づき軽く手を振った。
「あれ?ヒュウはどうしてここに?」
「今日は冒険者ギルドの試験官として呼ばれているんだ。今丁度Aランクの昇級試験が行われている、案内しようか?」
「いいのか?仕事中じゃないのか?」
「いいさ、それにお前たちの意見を聞くのも仕事の内だ」
俺たちはそのままヒュウについていくと、中はまるでアリーナのように周りに人が座っているのが見えた。そして中央にはやや高い壁に囲まれた広めの部屋に中央には巨大な真っ黒いゴーレムが仁王立ちで立っていた。
「あれは?」
「査定用の変身ゴーレムだ。あれに記憶した魔物の姿になって戦う仕組みになっている」
まるで昔読んだ漫画に登場したコピーロボットみたいだな、違うのが押した本人ではなく設定された魔物の姿になることなのだが。
「では次、番号18番」
「よろしくお願いします!」
現れたのはどこかのゲームに登場しそうなイケメン大剣使いだった。
「それではこれよりAランク試験を開始する、武器を構えよ」
審査員の男性がそう叫ぶとゴーレムが急に動きだし黒いドラゴンの姿になった。
「そんじゃ行きますか!」
大剣使いがにやりと笑いながらドラゴン・ゴーレムに突撃する。
「なあ、この審査って合格基準なんだ?」
「ああ、武器を使ってあのゴーレムに一定以上のダメージを与えたら合格だ。一応ゴーレムは設定元の魔物の動きを忠実に再現しているらしいから機能停止にすればその魔物を討伐したことになる」
なるほど、つまりあのゴーレムは疑似モンスターという訳か・・・ゾアも目を輝かせながら興味津々にゴーレムを見ていた。あれは絶対同じものを作る気だな、しかももっと高性能な奴を。
ベースとなっているのはレッドドラゴンという種でウチのダンジョンにもたしかいたはず。ブレスの攻撃も、口の部分から魔法陣が出現し炎魔法を展開して本当に火を吐いているように見える。
「おらおら!その程度かよ!」
爽やかそうな顔とは裏腹に意外と荒っぽい口調の大剣使い。炎のブレスを耐えきり再び足元を何度も切り付ける。
そして、しばらくヒットアンドアウェイ戦術でダメージを与え続け、一定ダメージに到達したのかゴーレムの動きが鈍くなり元の姿に戻った。
「よし合格」
審査員の男性がそう叫び観客たちはおお!と歓声を上げる。
「光輝、今の戦いを見てあいつがダンジョンに挑んでどれくらい進めると思う?」
「ん~、少なくともダンジョンにいるレッドドラゴンに遭遇したらまず負けるな。グラムのダンジョンでなら5,6階層までは何とかソロで行けそうってレベル・・・レアエネミーに遭遇したらアウト」
正直、最初はあのゴーレムの動きにビックリしたが俺の知っているレッドドラゴンの動きと比べら明らかに鈍い。それにあの剣士はレッドドラゴンの足元ばかり攻撃していた、レッドドラゴンの脚皮膚は特に頑丈だからろくにダメージが入らないはず。
「手厳しいってダンジョンに挑む前の俺だったら言っていたが、その意見には賛成だ。才、やっぱり査定基準をもう一度見直す必要があるな」
「みたいだな・・・フロアボスの実力を考えて今の基準ではまず無理だな」
何やら二人で強化計画を企てているみたいだができればそういうのは俺たちがいないところでやってもらいたい。
「もう、兄さん。才様は今日休日なのですから仕事の話はやめてください。そして才様も仕事モードは禁止です」
「「はい」」
スイちゃんの一言で力なく返事する二人であった。
ワイト
外見年齢:9歳
プラム
外見年齢:9歳
グンナル
外見年齢:21歳
ランカ
外見年齢:19歳
マヤ
年齢:13歳
スイ
外見年齢:16歳(実年齢は不明)
ヒュウ
外見年齢:19歳(実年齢は不明)
ケイト
年齢:26歳
ヒスイ
年齢:23歳
セレナ
年齢:16歳
ダンジョンの住民は全員実年齢は100話時点でまだ1歳半です。
光輝と才は物語当初は24歳でしたが現在は25歳です。