99話 夜会が終わったので王都を観光します
「んー、昨日は楽しかったな」
夜会は夜遅くまで続いたが、さすがに眠気と退屈に退役れなかったのか疲れた様子のワイト達を見たのでパーティが終了する前に帰宅した。まあ、しっかり役目はやったしパーティも十分に楽しんだから俺としては満足だ。お土産として才特性のフルーツゼリーを多めに貰ってきたから、朝にで食べようかな。
俺はテオの屋敷に用意されていた寝室から起きて着替える。約束の調印は2日後になったためその間はテオの観光を楽しむのだ。
「コウキ様、おはようございます」
挨拶をしてきたのは俺のベッドの下で寝ていたオウカだった。俺が起きたことに気づいたのか尻尾を振って状態でお座りした。
「おはようオウカ・・・護衛ありがとうな」
「これが私の役目ですから」
誇らしげにオウカは言うが、俺はペット感覚で彼女を部屋に入れていた。
「コウキ様、おはようございます。朝食の準備が整っています」
ノックして入ってきたのは新しい仲間のセバスチャン・・・ではなく執事のジェームズ。カートの上には香ばしい匂いの朝食が乗せられているのが見えた・・・お金持ちの朝食ってこんなものなのだろうか?やや豪華な部屋に執事と犬・・・ではなく狼。うんよく見かける金持ちのテンプレシーンだな。
「ありがとう・・・皆はまだ寝ているのか?」
「アルラ様はすでに起きていまして外の庭で花を育て始めています。グンナル様、ランカ様は外で鍛錬、ゾア様、ホワイトリー様、プラム様はまだ寝室でお休みになっています」
うん、予想通りの朝だな。三人は外にいるみたいだしせっかくなら外で食べようかな。
「ジェームズ、せっかく運んできてもらって悪いんだけど外で食べたい気分だから庭まで運んでくれないか?」
「かしこまりました」
ああ・・・なんだろう、執事に命令を出すだけですごく金持ちになった気分だよ・・・まあ、実際金持ちなんだが。
俺はそのまま庭へ向かいガーデニングをしているアルラを発見した。奥ではグンナルとランカが組み手をしているのが見えた。二人共俺に気づいてすぐに駆け寄ろうとしたが、続けて構わないと言った。
「おはようアルラ」
「おはようございます、光輝様。昨日は楽しい夜会でしたね」
「そうだな・・・ところで何を植えているんだ?」
俺が花壇の方を見ると何やら赤い結晶の花が花壇で埋め尽くされていた・・・これ本当に花か?
「アルラ・・・これはなんだ?」
「紅晶華です・・・私のお気に入りの花の一つなのです。せっかくなのでダンジョンで育てていた花をこっちに移したのです」
誇らしげにアルラが自慢する。確かにすごく綺麗だがなぜここで育てる?
「ジェームズさんが新しい花壇を作ってくれたのでそこに私専用の花を植えていいって言ってくれたのです」
あの人か・・・そういえば、昨日アルラが庭を褒めて嬉しそうな顔をしていたな。いい所見せたかったのだろう。
「はぁ・・・魔素で育てるのは難しいって言っていなかったか?」
「大丈夫です、リズアから特別の肥料を持ち込みましたからこれで魔素が薄い場所でもちゃんと育てられます」
そう言われると確かにアルラの花壇の土だけ妙に魔力が溢れているように見える。
「まあ、好きにしたらいいさ」
せっかくジェームズがアルラのために作ってくれたんだからちゃんと使わせてもらわないとな・・・なんというか、孫を可愛がるお爺さんな気がしてきた。
「さて、俺も朝食にするか、アルラも食べるか?」
「あ、はいいただきます」
俺はテラスまで戻りアルラと一緒に優雅な朝食を堪能した。ちなみに、朝食はヘレンが作ってくれたトーストサンドと才からもらったゼリーだ。オウカも気に入ったのかお代わりしていた。
「そういえば、あいつら朝からずっと鍛錬していたのか?」
「はい、もっとあの服を使いこなしたいそうで、私が起きた時にはすでに始めていました」
組み手を続けているグンナルとランカ。
「私も専用の装備が欲しいですな」
羨ましそうに二人を見るオウカ。狼の体格じゃさすがに軍服は無理だからな。
「今度、ゾアに専用の装備を依頼してみるよ」
「はい、お願いします」
遠慮するかと思ったが、やはりほしかったようで素直に頼んだ。まあ作るのはゾアなんだけどね。
「・・・ん?」
「どうした、オウカ?」
「来ます」
何が?
そう思った瞬間、急に地面が揺れ始めた。
「地震だ・・・少し大きめだな」
異世界に来て初めての自然災害・・・ダンジョンで生活していたからこういった災害経験は初めてだ。
「コウキ様、大丈夫ですか?」
地震に驚いたグンナルたちは急いで俺の所へ駆けつける。
「ああ、大丈夫。ヒスイの言ってた通り地震が起きたな。ジェームズ、中にいるコリーたちと一緒に屋敷の中で破損しているところはないか確認してきてくれないか?ついでにゾアたちを起こしてこっちに来るように伝えてくれ」
「かしこまりました」
俺はジェームズに指示を出した後、俺は庭の奥にある山を見た。遠くからでもかすかに鳥の鳴き声などが聞こえる。
「さっきの地震で山の動物とかが暴れだしたか?」
「一応、こちらの方に魔物などがやってこないか確認してきます」
「ああ、よろしく頼む」
ランカは少し気になるのか山の方へ走り出した。そしてすぐに才から連絡が入ってきた。
『よ、光輝おはよう。さっき地震があったがそっちは大丈夫か?』
「ああ、こっちの世界では初めての自然災害だったから少し驚いただけ。今、ジェームズに中の被害が無いか確認してもらっている」
『そうか・・・今日の観光の話なんだが、予定通りギルド本部と学校・・・あと買い物でいいんだな?』
「ああ、色々と買い物もしたいからそれで頼む」
『了解した、一時間ぐらいでそっちに行くから準備をしておいてくれ』
「ああ、楽しみにしている」
そう言って、才との連絡を切り俺たちは観光モードに突入した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一時間後
山から戻ってきたランカの報告によると問題ないとのそうで、庭に入ってこないように罠を仕掛けてくれたそうだ。ゾアたちも起きて朝食を済ませ、俺たちが出かける準備を整えると才の言う通り丁度一時間で入り口のベルが鳴った。
「才様、ようこそいらっしゃいました」
「ああ、お邪魔するよ。光輝たちはいるか?」
玄関に向かうといつものコート姿の才とスイちゃんが立っているのが見えた。そしてその後ろにはマヤちゃんが待機していた。
「才、本当に一時間で来たな・・・正確すぎて怖いぞ」
「時間調整は得な方だからな・・・それより光輝、あの倉庫はどういうことだ?」
あの倉庫?・・・あ!光学迷彩で見えない状態にしたままだったんだ。才は【万能鑑定】で倉庫のことはもうバレているみたいだが、そう言えば夜会で伝えるの忘れていた。
「・・・まったく、とんでもない技術者たちがいるなお前の所は」
呆れた様子で才はゾアとワイトを見る・・・本当、俺だってビックリしているんだから。
「悪い、勝手に改造しちまって・・・あまりにも人に見せられる姿じゃないから」
「っちょ、コウキさんその評価は酷すぎやないですか?ワイら一生懸命頑張ったのに!」
「頑張る方向性がズレているんだよ!ったく誰が倉庫をSF要塞に改造しろって言った!せめて見た目は普通の倉庫にしろよ!」
「なるほど、見た目と中身のギャップ・・・それは面白い発想ですな。ならまた後でレンガの姿にしておきます」
そういう意味じゃないんだが!まあ、見た目が普通なら問題ないか。
「・・・やれやれ、一日で倉庫を魔改造とか。常識を逸脱しているぞ」
「普通の人間だったら20回過労死しているスケジュールを平然とこなしている才様も十分に常識を逸脱していますが」
呆れた様子で才がため息を吐くが、その後ろでさらに大きなため息を吐くスイちゃん。・・・あいつのスケジュールってどうなっているんだ?
「・・・まあ、雑談はこの辺にして皆準備は整ったか?」
『おー!』
あ、話をそらした
「それじゃあ、王都テオを存分に楽しんでいけ」