98話 夜会も終わったので観光計画を建てました
グンナルとラセツの戦いが終了した後、貴族たちは大いに盛り上がったらしくいまだに興奮が冷めていない状態だった。・・・・あれ?ここってダンジョンじゃないよな?
「さすがグンナルや!オリジンの力を見せつけてくれたな!」
ゾアやランカ達は戦い終わったグンナルを褒め称えていた。俺も「よく頑張った」と一言声をかけて、ポーチに入っているポーションを取り出して飲ませる。
「ありがとうございます・・・と言ってもそれほど傷は負っていないのですが」
グンナルを見ると土埃などで汚れてはいるが外傷は全くなかった。そしてその汚れも【自動クリーニング】によってどんどん消えていく。
「ふーむ、やはり個人データをもとに刻印魔法のレベルを調整した方がええ見たいやな。グンナルやったら肉体強化はもう少し上げても大丈夫そうやな。いやー色々とええデータが取れた・・・今回、テオに来て正解やった」
ゾアはまたデータが取れたことで満足そうな顔をする。頼むからヤヴァイものは作らないでくれよ。
「そういえばラセツは大丈夫なのか?かなり高い所から落下したが」
俺が墜落したラセツの方を見る。まるでアメリカのカートゥーンに登場しそうな見事な人型の穴がぽっかり開いているのが見え、達磨と烏天狗の部下が必死に救助していた。
「ラセツ様・・・しっかりしてください」
「ったく、無茶をするからこうなるのです!もう少し自分の年を考えてもらいたいものだ」
なんとか引き上げられたラセツのおっさん、見事に白目をむいて気絶しているのが見えた。
「おーい、達磨の・・・えーと、ボダイさん。これ使ってください」
俺が上位ポーションをボダイのおっさんに投げ渡すと、すぐに高価なポーションだと気づく。
「かたじけない・・・このお礼はいずれ」
そう言って、二人の部下は気絶したラセツを連れて退場していった。
「やれやれ・・・相変わらず、とんでもない戦力ですねコウキさんの所の方は。ラセツを無傷で倒す実力がありながらフロアボスではないのですから」
呆れた様子で俺たちを見るセレナ。まあ否定はできない、俺だって逆の立場だったら同じ感想をだろうな。
「ますます、あなた達とは敵対したくないと思いましたわ」
「そういえば、このフィールドだけど俺たちが直しておこうか?ぶっちゃけ、あの大きな穴以外は殆どグンナルが壊したものだし」
フィールドを見ると中央に人型の穴以外にはグンナルの斬撃によってつけられた傷跡が所々見えた。
「別に構いませんが・・・」
「ゾア、修復はできるか?・・・もちろんフィールドを改造せずに」
「えー・・・まあ、それくらい余裕ですが」
改造禁止と言った瞬間不満そうな顔をしたが渋々了承してくれた。こいつが作ったらとんでもないギミックとか組み込みそうだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あら?何かあったの?」
丁度戻ってきたケイト・・・そして後ろにもう一人の美女が・・・まさか!
「ああ、さっきカグツチのラセツと光輝の所のグンナルが決闘をしていてな。丁度終わったところだ」
「そうだったの・・・見れなかったのは残念だったわ。ちょっとメドウの化粧に時間がかかって」
『え?』
やっぱり
昔の漫画でよくある展開がまさか現実に起こるとは思わなかった。あの牛乳瓶眼鏡のボサボサ女がまさかこんな美女に大変身するとは思わないだろう。
「ケイト、疲れたよ。研究服返してよ」
「駄目よ・・・少なくともパーティが終わるまでは私が預かります」
「じゃあ、ドレス脱いじゃう」
「やめい!」
やっぱり、中身は変わっていない変人さんだ・・・美人になった分ますます残念さを感じさせる。
「相変わらずだな、メドウは」
「あ、サイ君・・・久しぶり。以前あったのは・・・・いつだっけ?」
「マッドシープの新しい研究依頼をした時だな・・・どうだ?魔石を食わせた実験は?」
「ああ、あの時ね。すごいわよ・・・毛に魔力を帯び始めて調べたら魔糸の素材になることが分かったの!もっと伸びたら良い魔糸が作れそう」
どうやら才もリズアのマッドシープと同じことをしているみたいだ。
「でもやっぱり貴重な魔石を食べさせることに抵抗があるみたいで上に報告しても支給の数は増えなかったの。研究費はそこそこ上がったけど」
なんか、話がどんどんズレていっていないか?というか変人だけど研究とかそういう議題になると結構まともだなこの人。
「あ、そうだ。ダークエルフ探しに行かないと・・じゃあねサイ君とコウジ君」
光輝だ!
そしてそのままメドウはドレス姿で会場の奥へ走り出していく。そのダークエルフは目の前にいるのにな。
「なんや、あのネーちゃんワイのこと探しておったのか?」
「その声にしゃべり方、まさかゾアさん?・・・え?でもその肌」
ケイトも気づいていなかったのかよ・・・まあ分からんでもないが、ゾアもちょっとショックを受けているぞ。
「ケイトは気づかなかったのか?」
「・・・これって、もしかして以前聞いた『サブアカウント』ですか?」
「ああ、今回は種族だけを変えただけだからな。一応メリアスとワイトにも人間のサブアカウントを用意してある」
「なるほど、これはいいメドウ対策ですね」
納得した様子でメリアスたちをじっと見ているケイト。
「それで、コウジ明日の件だが。どこか行きたいところはあるか?」
「光輝だ・・・そうだな、やっぱりギルド本部は一度見てみたいかな。あと学校・・・ワイトとプラムをいずれ通わせる場所だからな」
「了解した、その二つと他の観光場所を色々と用意するから明日俺が案内するさ」
「え?いいのか?」
「お前もダンジョンの街を案内してくれただろ?大丈夫、仕事はなんとか詰めたから明日一日くらい問題ない」
そう言うと頼もしく感じた。後ろにいたスイちゃんが少し不満そうな顔をしていたからおそらくそのあとが相当詰め詰めなハードスケジュールになっているのだろう。
その後、俺たちは明日の計画を立てたあと再びパーティを楽しみテオ一日目を終了した。
ちなみに、ダークエルフと花の妖精少女を探していたメドウはパーティ終了後も場内を探し回っていたそうだ。