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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第七章 ダンジョン交易編
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97話 鬼が戦いたがっていたのでぶっ飛ばしました

グンナルを見るやいきなり抱き上げ泣き出す大男。


「っちょ!いきなりなんですか!というかあなたは一体誰なんですか?」

「ん?ああ、すまない。俺の名前はアベ・ラセツ・・カグツチのネサクという領地の長をしている」


鑑定スキルで見るとこの人も妖人族だ・・・しかも酒呑童子種と表示されている。種を持つ人族に固有名詞が使われている場合それは上位種を意味する。


つまり、種族という分類ならこの大男はグンナルより上ということ。


「長、そんな大声を上げないでください。他の方に迷惑ですぞ」


やってきたのは黒い翼をはやした鳥頭の男と真っ赤な布を被った強面のおっさん。鑑定すると二人共妖人族で、烏天狗種と達磨種と表示されている。


「・・・いい加減に放しやがれ!」


あ、忘れてた。

抱きつかれていたグンナルは膝でラセツの腹を蹴り力が緩んだ隙に離れる。


「貴様!ラセツ様になんてことを!」

「よいよい、いきなり抱きついた儂が悪い・・・しかしなかなかの力の持ち主だな。ただの鬼種とはとても思えん」


烏天狗の男が槍を構えるがラセツがすぐに止めさせ、感心したようにグンナルを見る。


「一体何の騒ぎですか?」


そこへやってきたのは慌てた様子のセレナだった、後ろにはフライドポテトを咥えたヒュウと焼きそばを持ったヒスイがいる。


お前らもう少しまじめになれよ!


「ラセツ・・・これはどういうことですか?私の友人に何か用でも?」


セレナは完全にこっちの味方という雰囲気でラセツを見る。


「いや、すまない。同族に会えたうれしさでついな」


ラセツも面目なさそうにセレナに謝る。


「お、そうだちょうど良い。セレナ嬢・・・外の訓練場を借りても良いかな?」

「謝罪の後にその要求ですか・・・構いませんが、破壊したら弁償ですよ」

「分かっておる・・・グンナル君、是非君と手合わせを願いたい」


手合わせだと?


「先ほどの蹴り。あれを受けてから鬼の血が騒ぐんじゃ。君も感じるだろ?強者と戦いたがる鬼の血が」


そう言うと、グンナルは必死に腕を掴んでいるのが分かる・・・おそらくラセツの言う通りなのだろう。


「・・・だが俺はコウキ様の護衛。勝手な行動は『いいぞグンナル』・・・コウキ様?」

「お前も暴れたいんだろ?いいぞ、せっかくなんだしその軍服の性能も試せば?それに俺たちの力を見せつけるのにはちょうどいいだろう」

「・・・御意!必ず勝利をささげて見せます!」


そう言うと、グンナルは嬉しそうにラセツと一緒に先に外へ出ていく。そして決闘の話が一気に広まり周りの貴族たちが急に嬉しそうに歓声を上げ外へ移動する準備に入る・・・・ここの人たちもノリがいいなオイ!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


訓練場はパーティ会場のすぐ近くで俺たちが外に出るとすでに貴族たちが待っていた。


訓練場には俺が以前作ったコロシアムのように石のタイルが敷き詰められたようなステージが用意されていた。審判はヒュウが務めてくれるそうで、何かあったらすぐに止めるそうだ。


「コウキこっちだ」


声がする方へ見ると、才とセレナが用意されていた椅子に座ってこっちに手招きをしていた。


「随分と集まっているな・・・城の兵士たちも見に来ていないか?」

「そりゃ、カグツチの悪鬼と呼ばれていたあのラセツの戦いだからな」


悪鬼羅刹ってか?・・・というかあのおっさんそんなに有名人だったのか?まあ、この夜会に参加しているんだし偉いのは分かっていたが。


「そんなに強いのか?」

「昔はカグツチの中でトップ3の実力を持っていた冒険者だったらしいが、さすがに年には勝てなかったみたいで今は引退してカグツチの領地を納める地位についているんだ」


まあ、鬼種の上位種なんだから高い戦闘能力を持っているのは知っていた。


「というか、セレナ良いのかパーティの途中にこんなことやって?」

「問題ありませんわ。むしろこういうイベントが発生してくれたほうが盛り上がりますから」


ニッコリと笑うセレナ・・・だが、その腹の中では黒い計画を色々と企てているということは才しか気づいていない。


ラセツがステージに上がると和服の上部分を脱ぎ捨て上半身裸になる。さすが鬼種の上位版だけはありかなりの体格の良い肉体の持ち主だ。


「ボダイ、カワサギ!」

『御意!』


ラセツがそう叫ぶと、部下の二人が現れいきなり殴りかかる。だが、ラセツはどこに殴ってくるのか分かっているかのようにその攻撃を受け止める。


「コウキさん、あのオッサンはいったい何をしておるんや?」

「組手だな・・・おそらく準備運動だろう」


俺は武術関係はやったことは無いがなんとなく動きでそんな気がした。


「なら俺も準備運動するか」


組手を見たグンナルも銀剣のシルバー・エクソシストを手に持ち素振りをし始める。そして10分ほど経過し、お互いの体が温まりだす。


「そろそろ良いか?」

「ああ、準備万端だ」


ラセツの手には巨大な鬼包丁が二丁・・・二刀流か。


「では参る!」


真っ先に動いたのはラセツ。あの巨体からは想像できないものすごいスピードでグンナルに襲い掛かる。だがグンナルもしっかり肉眼でとらえており、【硬化魔法】でラセツの攻撃を簡単に防ぐ。


「その剣・・・魔剣か」

「そうだ・・・ウチの自慢の鍛冶師の力作だ」


そう説明しながらワイトの方を見る。もちろん観客はワイトのことを知らないため、ワイトが打ったとは思っていないだろう。


「よく使いこなせているじゃないか!」


そしてラセツの猛攻は続く。二丁の包丁で叩きつけるがグンナルはピクリとも動かずその攻撃を耐え凌ぐ。


「グンナルはん、なんで攻撃を仕掛けないんや?」

「カルラ様の教えです・・・『獲物を狩るときはまずは分析せよ』と・・・我々の戦い方はまず相手の動きなどを見定めてから行うのです」


ゾアは分からなそうな顔で戦いを見ているとランカが説明してくれた。なるほど・・・そういえばグンナルは生活部門でカルラの部下だったな。戦い方も彼女に叩き込まれたのだろう。


「おらおら!どうした!防いでばっかりでは意味がないぞ!」

「意味ならある!」


そしてグンナルが剣で初めてラセツの攻撃をはじき返す。


「太刀筋、力量、癖・・・大体は理解できた。それじゃ、狩りを始めるぜ」


グンナルが魔力を剣に注ぎ込み、剣の大きさが身の丈になるほどの大剣へと巨大化する。


「まずはあいさつ代わり!」


グンナルが剣を振りかざすと白い光をまとった剣から複数の斬撃が飛ぶ。


「むぅ!」


斬撃の嵐をラセツが防ぐが弾いた斬撃が地面に衝突し土煙が巻き起こる。


「小賢しい真似を!妖術『上昇鬼流』」


ラセツがそう唱えると突如突き上げるような風が吹き上げる。土煙は土砂とともに空へ舞う、そしてフィールドを見るとグンナルが懐へ入り込んでいた。


「あまい!」


だがそれを読んでいたラセツはすぐさま回し蹴りで蹴り飛ばす。だがグンナルはそのままラセツの足をつかむ。体格で言えばラセツはグンナルより一回り二回り大きい、にも関わらずグンナルは平然とした様子で軽々と抑える・・・もちろん、一ミリも足場は動いていない。


「な!俺の蹴りを受け止めただと!」

「いや、これは俺も驚いている・・・やっぱこの服の性能は違いすぎるな」


グンナルも驚いた様子で感心した様子で感想を述べた。


「どうやら、軍服の【衝撃吸収魔法】が発動したみたいやな。【肉体強化】や他の刻印もしっかり発動しているみたいやし」


ゾアがそんなことを呟いていたので俺も鑑定スキルでグンナルの軍服を見る。


「なんだよあれ!」


唖然も唖然


【衝撃吸収】、【肉体強化 Lv:5】、【温度調整】、【自然回復Lv:5】、【状態異常無効化 Lv:4】【魔法無力化障壁 Lv:4】、【重力調整】、【五感強化 Lv:6】、【超振動】、【破損個所自動再生】、【マッサージ魔法】、【自動クリーニング】


とんでもない効果があの軍服に付与されていやがった。どんなスーパーアーマーだよあれ!


「そんじゃ、そろそろ決めるぜ!」


まるでハンマー投げのようにラセツを振り回し上へ投げ飛ばす。


「吹っ飛べ!『霊鬼砲』!」

「見事!」


上空から落下するラセツに向けてグンナルの剣から鬼のようなオーラが飛び出す。そしてラセツを飲み込んだ瞬間大きな爆発が発生した。ボロボロになったラセツが落下し、まるで昔見たカートゥーンのワンシーンのように人型の穴がぽっかり出来上がる。


ヒュウが穴の中でラセツが白目で気絶しているのを確認すると大声で判定をくだした。


「勝者!グンナル!」


ヒュウの掛け声とともに歓声が沸き立つ。


その日、グンナルのステータス欄に『鬼を超えた鬼』という称号が追加された。

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