表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
選択したその先へ  作者: 圭作
長い長い準備運動
9/24

蜂蜜大好き

 ――――無事にリサがクレリックに転職出来た事を疲れを吹き飛ばすように、パァーッと祝おうとあの後2人で酒場にやってきていたんだが……。


 揉めていた。

 

 「だめだぞ! お前が飲むと引きずって帰るのは俺なんだからな」

 「だ、大丈夫よ! 1杯! 1杯しか飲まないからあぁ!」

 

 この世界で定番の酒ボブを、未だ飲めていたないリサの目の前でゴクッゴクッと喉を鳴らし俺は勢いよく流し込み言い放つ。 

 

 「ぷはぁ~ボブは最高だぜぇ! どうしても飲みたいなら1人の時に飲めよな。」

 「ひ、人見知りの私が、こんな大勢の場所で1人飲める訳ないじゃない!」

 「知らねぇよ、それにみんな一杯で止めれたら苦労はしねえよ!」

 「ひ、酷いわマコちゃん! 私そんな風に育てた覚えないわッ!」

 「いや、育てられた覚えもねぇけどな」

 「そ、それに今日は私の転職祝いじゃない! そうよ! 私の誕生日みたいなものなのよ! お願いよ~」


 リサはどうしても飲みたかったのか泣きついてくる。ここまで必死にお願いされると、流石に気の毒になりしょうがないか。俺は諦めたように駄々っ子に答えた。


 「お祝いだし1杯だけだからなー」

 「ありがとう! マコちゃん! 外見だけは愛してるわッ」


 ――――そして翌朝宿屋前にて待ち合わせていた。


 「おはようマコちゃん! 昨日もよく寝れたわ」


 また何食わぬ顔でリサは挨拶をしてきた。


 昨夜あの後は俺も酒がすすみ、リサは当然1杯で終わることなく酔っ払い。

 「1次転職した私を称えなさい! 下級冒険者さん」などなど暴言を浴びせてきた。そして何とか引きずって帰ったのである。


 (絶対コイツ忘れてやがるな)


 そう飲ませた俺が悪いんだ。大人になり話を進めることにした。 

 

 「おはよう、今日は俺1人で冒険者ギルドに行って試験案内してもらってくるから、リサは教会で待ってていいよ」

 「わ、分かったわ。教会なら1人で行けると思うし待ってるわ」

 「じゃぁまた後でな~」


 ――――リサと別れ俺は1人冒険者ギルドへと向かった。

 到着すると不意に後ろから抱きつかれ話しかけられる。


 「やぁやぁやぁ? 今夜は帰さないよ」

 「お前そんなキャラだったか?」


 冷静にツッコむと、無言で背中に哀愁を漂わせながら窓口へ戻っていく。

 聞きたい事もあったしミューゼスが居たのは都合がよかった。トボトボと歩いている後を追うように窓口に向かい話しかける。


 「よう! 昨日はリサが無事転職出来たよ! ありがとな」

 「そうかそうか~、なら僕も紹介した甲斐があったよ」

 「それで今日は俺も転」


 言い終わる前にミューゼスは、スッと何かを出し。

 

 「――――これが君へのお勧めさ~」


 出来る男のオーラを前面にだし格好つけて何枚かのカードを差し出した。

 無駄に格好いい男をスルーし、すぐさまカードを手に取り選び始める。


 大体見てみたがどれも大剣を扱いやすそうな職で、大剣+他の武器だったり、大剣+体術のような感じだった。


 (くっ、流石ミューゼスいい仕事しやがるぜッ!)


 チラッとミューゼスに目線を移すと、静かに親指を突き立ててくる。

 そんなミューゼスを見て何かイラッとしたが、残っていた他のカードに目を通すと、少し変わった職を発見した。そこで、ただのナルシストになり果てたギルド職員に聞いてみた。


 「ちょっといいか? ブレイダーって職は武器が載ってないけど何なんだ?」

 「ごめんよ~、それはまだ君に関係ない職だったよ~」

 「そんな職あるのか?」


 「それはね~1次転職の後に一定レベルまで上げると、もう一度1次転職してあげきる事で、ようやく2次転職できるんだけど、そのブレイダーは、まず1次を1つ上げないとなれないのさ~」

 「……先の長そうな話だな」

 「そうでもないさ、2度目の転職後もステータスやスキルも上乗せしていくし、最初の転職したて程じゃないさ~」

 「因みに勇者は何次職なんだー?」

 「4次職だったかなぁ? 特殊な職だから転職方法すら不明だけどね~」


 (……流石BIGな当りクジだな)


 まだまだ先の事だし正直転職方法より、彼女の作り方の方が知りたかった。

 だからブレイダーや勇者の事は忘れ、重剣士かウォーリアで迷っていた。

 しばらく悩んだ結果、身軽な大剣+体術のウォーリアになることを選択した。

 

 「じゃぁ俺はウォーリアにするよ」

 「僕も君には素早く一撃を加えられるその職が良いと思ってたんだ~」


 ウンウンと顎を触りながら今度は渋く頷きミューゼスは紹介状を手渡してくる。


 「じゃサクッと済ませてくるわ!」

 「頑張っておいで~」


 ギルドから出ようとした時に聞きたい事がある事を思い出す。慌ててまだ受付にいたミューゼスの元へと戻り尋ねてみた。


 「そ、そうだ、まだ聞きたい事があったんだ!」

 「どうしたんだい? 今夜僕は忙しいよ?」

 「そうじゃねえよ! 昨日リサの試練の時に森でバカでっかい熊のようなモンスターを見かけたんだけど……何か知らないか?」


 そう告げるといつも、ひょうひょうとしているミューゼスが珍しく驚き、真剣な表情で答えた。


 「アレにあったのかい!? アレはボスモンスターだよ! 既に何名かの冒険者がやられて懸賞金までかかってるほどさぁ。しかも本当に狡猾なヤツで初級冒険者しか狙わない危険なボスモンスターだから注意しなよ」

 

 《ボスモンスターとは、通常のモンスターの変異種や魔力の吹き溜まりから生まれてきたりと様々な特殊個体の事で、ダンジョンの奥深くや気に入った場所に棲みつき固有の名前を持つ強力なモンスターの事》


 「アレがそうなのかぁ……何とか走って逃げ出せたけど、勝てる気が全くしなかったよ。でもアイツは何て名前なんだ?」


 「そらそうさぁ! 何にしても見かけたらすぐに逃げることをお勧めするよ。確かタイラントベアックルだったかな? 二つ名は――そう【蜂蜜大好き】だ」


 「……随分可愛い二つ名だな」

 「あぁ……だがその可愛い二つ名とは裏腹に狡猾で残忍なヤツだ! 十分君も注意しなよ~」

 「あぁ! ありがとな」



 ――――話を聞いている時背筋がゾッとしたがやっぱり相当やばいやつだったか……何にしても生き延びる事が出来たわけだしもっと強くなるためにも転職しなきゃだな! 俺はリサの待っている教会へと向かう事にした。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ