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選択したその先へ  作者: 圭作
長い長い準備運動
5/24

マイペース

 俺達は冒険者ギルドでパーティの組み方や依頼を受けるのは翌日早朝からという事で昨日はリサと別れた。なのに今俺は、この世界の綺麗な月を眺めながら、当然開業していない夜更けの冒険者ギルド前にいる。

 

 何でこんなに早くいるかって? 

 

 ……俺が知りたいよ。


 ――――昨日リサと別れたのがまだ昼過ぎだった事もあり、この村の中をゆっくりと見て回ったことがまだなく、俺は1人で散策してみたんだ。


 まずはこの村にも規模は小さいながらも市場があるのは知っていた。この世界での食べ物や売り物を見て回るにはいい機会だし、村の中の風景をのんびりと眺めながらも一番に向かう。

 

 到着するとそこには屋台のような店がいくつも立ち並んでおり店先には見たこともないフル―ツや、何の肉だか分からないがこんがりと香ばしい匂いがする美味しそうな食べ物などなど、心躍らせる物で溢れていた。そんな中で懐かしい食べ物にも出会えた。


 それは黄色くてちょっと尖がった、お馴染のバナナだ。


 すぐさま買いモグモグと食べ歩きながら市場を見て歩く。すると人混みの中で見慣れた人影を発見し声をかけようかと迷っていたら、相手も俺に気づいたのか近づいてき陽気な男が話しかけてくる。


 「やぁやぁやぁ? こんな所で珍しいね」

 「だろ? てか昨日は大変だったんだぞ」

 「何かあったのかい?」

 「実は年齢の事をリサに伝えてなくて、少しだけ揉めちゃってね」

 「それは悪かったねぇ。何かお詫びをしてあげたいけど僕はこの村を離れる事になったのさ~」

 「じゃぁ今日は一緒に飲むかッ!」


 ――――結局市場しか回れなかったがバナナも食べれたしいいか。この世界にきて早くも酒の味を覚えた俺は遅くまでギルド職員と飲み、結局なんとなく最後まで名前を聞く事なく別れ――ほろ酔い気分で宿屋に戻り久しぶりに爆睡できていた。



 ――そう悪魔が来るまでは。



 俺は気持ちよ~く寝ていたのに、何度も何度も強く扉を叩く音がし更に頭に響くような大きな声で呼びかけられる。



 ドンドンドンッ

 『起きなさい! 朝よ! 早く起きなさい!』

 ドンドンドンッ


 放っていればそのうち飽きるだろうと甘くみたのが失敗だった。


 ――――――しばらくすると奴は扉を開け遂に部屋の中へと踏み込んできた。そして俺の薄い掛け布団をバサッと勢いよく剥ぎ取りまた。



 『起きなさい! 朝よ! 早く起きなさい!』

 

 「もうお母さんかよッ! 何度もうるせぇよ!」


 流石に観念して起きると、そこには目をキラキラと輝かせたリサが居た。


 ――なんでこんな悪質な真似をしたのか。起きるなり問い詰めてみるとリサも今までパ―ティを一度も組んだ事がなく今日の事を考えていたら1人で舞い上がってしまったそうだ。


 ――旅行前に浮かれてしまうアレだ。


 俺も似たような経験があるし理由を聞いて許したが……。


 「早すぎるよ! まだ薄っすら月も出てるじゃねえか!」

 「だって、だって――で、でも一番乗りね!」

 「そのプラス思考がきついわぁ、むしろお前なんで元気なんだよ?」

 「別れた後早く寝なきゃって準備してたら早く寝すぎたのよ。悪い!?」

 「子供かよッ! てか逆切れかよ!?」


 ――――言い合ってるとようやくギルドの扉が開いた。リサとの会話を切り上げすぐさま窓口へと向かう。いつもの陽気な職員は既にいなく見慣れない職員だったせいかリサはスッと俺の後ろに恥かしそうに隠れ、しょうがないので俺がパ―ティについて尋ねてみる。


 「早速で悪いんだけどパ―ティについて教えてくれない?」


 ギルド職員さんは――特に特徴のないのが特徴な人――だ。


 「わかりましたぁっ!」


 この返事に若干の不安を覚えつつもそのまま説明を聞く。


 「そもそもパ―ティとは何だと思いますか? そう! それはッ、それはッ、信頼、そう愛ッ、そう仲間なのですッ! さらにッ――――なんです!」


 (ここの職員にはまとも人が居ないのか)


 ――――職員のマシンガントークが終わると……すっかり日が差し外は明るくなっていた。


 「そ、そんな事じゃなくて、パーティの組み方が知りたいんだ」

 「そっちでしたかッ! 正面で相手に念じれば組めますよ」


 ……どうやら俺の質問の仕方が悪かったみたいだ。


 この分ならパ―ティを組むことでどんな事が出来るようになるのかなども、正確に答えてくれるだろうと安心して尋ねてみる。

 

 「気になりますよねッ? そうパ―ティを組むことでっでっですね――こうモンスタ―の経験値がふわふわ~ってなってど~と半分に分配されるんですッ!」

 

 「あ、どうも」


 ――――ドッと朝っぱらから疲れながらも何とかパーティについての情報も得る事ができた。早速組んでみようと振り返ると……リサはそこには居なくいつの間にかそばから離れギルド内にあるテーブル席でうつ伏せで寝ていやがった。

 なので今度は俺がリサに近づき耳元で。



 『起きなさい! 朝よ! 早く起きなさい!』

 


 耳元で大声を出すと、リサはビクンっと跳ね起き「イヤアァァッ」そんな悲鳴を発した後、ペチンッと痛そうな音がギルド内に響いた。確かに、確かに俺も悪かったが……ビンタしなくてもいいじゃない。リサは寝ぼけて覚えてないわ。そんな嘘くさい表情で謝り、気を取り直して俺達は依頼を選ぶことにした。


 「で、どれがお勧めなんだよ?」

 「断然キッコリ―ね。アイツならすぐよ!」

 「パ―ティなんだしもっとこう歯ごたえがある奴にしようぜ!」


 パ―ティという言葉にリサは反応しあからさまに目の色を変え1つ選んできた。


 「ハイキッコリ―か、キッコリ―系なのは分かるけど今度は動くのか?」


 そんなのも知らないのかよ?

 これだから駆け出しは――フッ、そんな顔で。


 「勿論動くわよっぬるっぬるに! 私も倒した事ないけどそう聞いたわ」

 「倒した事ないのかよ。でも丁度いいかもな!」

 「じゃぁ受けましょう」


 ――――パーティでの初依頼を受けハイキッコリーの生息地へと向かう途中。リサの話を聞いた限りじゃ今回はまともに動くモンスターみたいだし恐らく簡単には倒せないだろうと考えていた。

 

 それに異世界にきてようやくモンスターと戦える思うと不安は勿論あったけど、それよりもこれから戦う事を考えていると自然と気持ちが高揚した。いやキッコリーもモンスターなんだけどね。そして到着したはいいがある事を思い出す。


 「そいやまだパ―ティ組んでなかったよな」

 「い、いつでもいいわよ」


 緊張して固くなっているリサの前に立ち何となく焦らしていると、「早く! ねぇ早く!」とうるさかったのでサクッと念じてみた。


 「来たわ。これねっ? どうかしら?」


 俺の所にも目前にモニターが現れ【リサ・ファニル】加入と表示された。そしてリサのステ―タスも同時に確認することができ眺めてみる。


 魔法使いLv7


 体力22

 腕力12

 知力42

 敏捷24

 運5


 するとある疑問を抱きリサに質問してみる。


 「魔法使いってさ冒険者よりやっぱり上の職業なのか?」

 「いいえ? 冒険者が物理全般の見習いなら、魔法使いは魔法全般の見習いね」

 「なぁ? 何で俺とレベル2つしか変わらないんだ?」

 「だって私もハズレでヒ―ルしか持ってなかったのよ。だから毎日、毎日、キッコリ―を仕留めたわっ!」


 ずっとあのモンスターを相手にしていたなんて色々あったのだろう。

 リサの悲しい過去を察した俺は依頼を進める事にした。


 ――――そして発見しましたハイキッコリ―!


 最初は本当にこの場所にいるのかよッ!? ちょっとだけ疑っていたが、リサの言ってた通り発見できた。しかも動いている。のしっのしっと、歩くごとにその大木を揺らしながら徘徊しているのだ。


 今回は役割を決めた。


 俺が前衛として前に出て斬りかかりリサは後ろから俺のサポートだ!

 やっと異世界に来て冒険者らしい事が出来るぜ! これまでの土木作業やキコリ作業を思い出し薄っすらと涙を滲ませ。

 

 ……覚悟を決めそして。


 「キッコリーの様に一刀両断してやるぜ!」

 

 宣言し、駆け出し大木めがけ突撃する。




 大木に迫り踏み込み、仰け反り。



 

 大剣を大きく振りかぶる。


 



 大木は気づいたが……。




 ――遅かった。


 


 俺は力強く握った大剣を大木めがけ振りきった!!



 

 

 「やったか!?」

 「まだよっ!」



 大木は深々と傷ついていたが……。

 リサの声と同時にすかさず枝を伸ばし反撃してくる。



 

 俺は鞭のようにしなやかに伸びてくる攻撃を何発か全身に受け、痛みが体中を駆け巡ったが何とか堪え、もう一度その場で振り抜き大木を切り裂いた!

 

 ――――そしてようやく仕留めることが出来た。だが思った以上に攻撃を食らってしまい全身傷だらけで倒した後に急に痛みがましてきた。

 

 「いってぇ! 鞭みたいに強烈な枝がぬるっぬる飛んできやがる!」

 「――――ヒ―ルッ! この位なら私でもすぐ治してあげれるけど……マコちゃんみたいな可愛いらしい子が傷つくのは複雑ね」


 リサもすぐに駆け寄り治療してくれているが……華麗に避ける事も一撃で倒すことも出来ず。理想と現実の違いにションボリしながら愚痴をこぼす。


 「俺もリサみたいに何かスキルがあればなぁ」

 「私は回復魔法強化にポイントを使い切っちゃったわ」

 「ポイント?!」

 「えぇ? ステ―タス画面の下に表示されてるでしょ?」


 ポイントなんて聞いてないぞ! そんな風に文句を言うよりも先に期待しながら早速ステータス画面を表示すると――本当に画面を下へとスクロールすることが出来た。そこにはスキルが表示されており俺も最初から持っていたのだ!

 どんなスキルかというと……。


 殺人強振(デススイング)

 

 効果:対象が人型であれば効果大UP

 リキャストタイム:15秒


 これ絶対に死んだ時のだよな。

 スキルに煽られてるそんな気もしたが。

 と、とにかく持っていたのだ!

 

 そして他のスキルも一通り確認してみたが大剣で使える技のようなものは何も無く、全部常時発動の能力UP系だったけど筋力UPと防御UPを取ってみたりと夢中でスキル周りを弄り倒し、ようやく終わりそんな様子を隣でニコニコと見守っていたリサに報告する。


 「なんか俺もスキル持ってたぞ」

 「良かったじゃない! さぁ思う存分ハイキッコリ―をやっちゃいなさいっ」

 「おし! 早速スキルを試してやるか! アイツでいいな」


 狙いを定めるように指さしスキルを早くつかってみたい。

 そんな焦る気持ちを抑えきれずに駆け出し。



 大木の後ろから勢いのまま大剣を振りかぶり。



 ――大木が気づくより早くスキルを発動させた!!



 『殺人強振(デススイング)!!』



 大剣がバッドの様に瞬時に変わり――――えぐるようにブチ叩きこんだ!!



 ――――――大木はベッコリとえぐられ一撃だった!


 (凄い! 超気持ちいいッ!)


 初めてスキルを放ち最高に気持ちが揚がってた。

 そして揚がり切った気持ちを思わず叫ぶ。


 「ヒャッハーッ! 異世界最高ッ!!」


 それなのに奴は……。


 「ねぇねぇ? 一撃で倒したら私する事ないんだけど! ねぇねぇ?」


 ……俺は黙々と依頼数狩り続けた。


 冒険者Lv10


 体力28 

 筋力60

 知力15

 敏捷20

 運9


 攻撃スキル

 殺人強振 


 能力スキル

 パワ―アップⅣ ガ―ドアップⅣ


 残P2



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