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選択したその先へ  作者: 圭作
ある日
24/24

ごぶごぶ

 ゴットーと名乗る者が現れたその場所は、確かにニッキー達が先ほどまで居たはずなのに、その姿がなぜかなく代わるようにソイツが居た。


 ようやくオットーを倒すことができ、残すはニッキーのサングラスを俺の手でバッキバッキにカチ割り、地獄の七日間中にボスから植え付けられたトラウマとも綺麗サッパリおさらばするだけだと考えていたが、あそこまで追いつめておいて逃げられたのだとしたらこんな情けない話はない。


 もう一度だけ注意深く周囲をキョロキョロと見まわしたが……。

 ゴブリン達の姿はどこにも見当たらなかった。


 (……なんだかなぁ)


 二匹が消える前にシャボン玉のような緑色の光の玉をほわほわっと沢山溢れさせ、その後急に眩しい光が走り、コイツが現れた訳だし何かしら関係があるのかもしれない。

 それにゴブリン達の頂点に立つ予定の者だとも口にしてたしな。



 こんな事になるなんて分かっていればリサに構っていなかったのに!!

 


 後悔しながらも俺はある疑念を抱いた。


 それは、コイツは本当にモンスターなのだろうか。

 それすら怪しかった。



 なぜならゴットーは――ふざけたピエロのような衣装に身を包み、鼻筋と耳はピンッと伸び、それでいて綺麗に整った甘い顔をしており、身長も高く180cm位だろうか――いわゆるイケメン風の男でモンスターというよりは人に近かったからだ。



 だがゴットーは残念な語尾とは別に、もう1つだけ大きな特徴をしていた。


 

 その特徴とは……。



 イケメンなのに、残念なくらい肌がゴブリン色なのだ。



 イケメンなのに、もしかして本当にゴブリンなのだろうか。



 だとしたら悲しい運命(さだめ)を背負ったモンスターである。



 そして先ほどからリサはというと……。


 ちょっとだけ悪そうな顔をしたゴブリンから受けた屈辱を思い出し古傷が疼いているのか、俯きお尻を押さえながら独りブツブツと何かを呟いていた。


 (リサの地雷だけは踏みたくないしそっとしておくか)



 ――――俺は悲しみを背負ったモンスター? が本当にゴブリンなのかどうなのか観察するように眺めていると、何を思ったのかゴットーは、ニヒヒヒっと笑みを浮かべ、白く綺麗な歯を輝かせ、それが緑色でゴブリン色な肌と合わさって残念さを更に際立たせながらも右手を空へと突き上げる。


 するとオットーの槍のように何もない空間からポンッとサングラスが出現し慣れた手つきでスッとかけ、俺はそこでようやく目の前にいるのは間違いなくゴブリンで、恐らくはあの二匹なんだと確信することができた。


 だがオットーは間違いなく瀕死だったはずだ。

 しかもニッキーまで消え、まるで生まれ変わったかのように別のモンスターになっている。



 「なぜだ?」



 俺の素直な気持ちが思わず口からこぼれた。

 そんな疑問にフンっと嘲笑うかのような態度でゴットーが答える。


 「ニヒヒ、驚いてるでゴブス驚いてるでゴブス。我ら双子は元々1つの大きな魔力が2つに別れ生まれた者。だからこそ、2つが1つに融合することなど造作もないでゴブス」


 「その割には派手に泣いてたよな」


 すかさずジーーっとゴットーに不信そうな目を向けると。


 「こ、この姿になるともう元には戻れないでゴブス。だが宣言しよう。お前等は我には勝てないでゴブス。」

 「それはどうかな。やってみないと分からないだろ?」


 「ニヒヒヒ、融合した我は、通常のゴブリンの20倍の力と100倍の魔力を有する、いわば最強のゴブリンでゴブス」


 普通ならここで絶望するんだろうが、俺は絶望する事はなかった。


 ――――確かにゴットーからは凄い力を感じる気がするが、見た目は普通の人間に近いし、入口付近に居たゴブリンが20匹居たところで大して怖くなく、100倍の魔力で最強だとか言われてもイマイチ分からなかったからだ。


 そんな事よりもゴットーにどうしても言いたい事があった。



 ……それは。



 「お前その語尾似合ってないぞー! なんてか違和感が凄いんだよ」

 

 「よ、よくも我のアイデンティティをバカにしたでゴブス。 許さない、許さないでゴブス! ゴブリンの――」



 ――ゴットーが何かしようとしたその時だ。



 先ほどからずっーと隣でブツブツと呟いていたリサが遮るように。


 「ゴブリンは敵。ゴブリンは敵。ゴブリンは敵なのよぉおおお! ――――――クラインフレイムッ!!」


 ドゴォンッと爆音を響かせ大きな火の玉が、「ごぶ?」そんなキョトンとした表情のゴットーに直撃する。

 「アチチチチチチチチ」情けない悲鳴をあげながら転げまわるゴットー。 


 (えぇ……いきなりですか)


 俺も若干引いていると……。

 リサが熱さで転げまわっているゴットーに向けキリッと言い放つ。


 「ゴブリンは、今日滅びるのよ」


 いける!! そう確信し俺も続けた。


 「そうだ! そうだ!」


 

 ――――なんだか急に頼もしい相棒が復活し、一気にコレいけるんじゃね? そんな空気が漂い始め、俺もやってやろうと思ったが……ゴットーは姑息にも転げまわりながら距離を取り、遠くへと離れムクッとようやく立ち上がり怒鳴るように叫んだ。


 

 「お、お前ら人間の癖に、ひ、卑怯でゴブス!!」



 ゴットーが叫ぶと。

 リサはチッと舌打ちすぐさまイラついたような表情で詠唱を開始し。


 「――――――クラインフレイムッ!!」

 

 ドゴォンッと再び爆音を轟かせ火の玉がゴットーを襲い、また「ごぶ?」そんなキョトンとした表情のゴットーに直撃する。

 遠くの方で「アチチチチチチチチ」再び情けない悲鳴をあげながら転げまわるゴットー。


 リサは完全にゴブリンを狩るためのマシーンとなり果てたように容赦なく攻撃し、俺はガクガクと膝を震わせ、アレ……リサって、こ、こんな感じだったっけぇ??

 1人戸惑っていた。



 ――――ゴットーは更に俺達から距離を取るように転げまわり、なんとか表情が見て取れる程の位置でムクッと立ち上がり、無言のまま素早く両手をバンッと地面につき、焦ったように早口で何かを呼ぶ。



 「こ、来いッ! ボロッボゴーレムッ!!」



 ボロッボボボボ、ボロッボボボボ、不気味なアイドリング音と共に地面からゆっくり浮かび上がってき、巨大でメカメカしいゴブリンの顔の形をしたゴーレムが俺達の前に姿を現し、すぐさまそのゴーレムの中にゴットーは逃げ込むように乗り込んだ。


 

 俺は2階建ての一軒家ほどの大きさのゴーレムを見てあまりのデカさに思わず唾を飲み、能力を使わせてしまった事にも後悔したが、今日の俺の隣には頼れる相棒がいる。

 そう、冷徹なゴブリンハンターになり果てた相棒リサがいるのだ。



 やっちゃって下さい。 親分!




 そんな感じでチラッとリサに視線を向けると……。




 パクパク中袋を頭から被り、現実逃避しようとしているリサがいた。



 「おいいいいい! 何1人逃げようとしてんだよ!!」

 「ふぁってふぉんなのふぉーしふぉうもふぁい」


 「何言ってんのか全然わからねえよ! まず袋を取って喋れよおお」


 「ぶふぁっ! だってあんなのどうしようもないじゃない! 無理よ無理。絶対無理よ」

 「さっきまでの勢いは何だったんだよお! てかそれで逃げ切れると思ったのかよッ」



 ――――そんなゴタゴタしたやり取りをしていると、拡張器で大きくしたような耳にキーンと響くゴットーの声がゴーレム方から聞こえてくる。


 「ニヒヒヒ、お前等よくも散々コケにしてくれたでゴブス! だがこのボロッボゴーレムを召喚させた時点でお前らの負けは確定したでゴブス」


 ゆっくりとゴーレムが動き出し、パカッと口が開き、そこから大きな大砲の筒のような物が出てき、照準を合わせるように俺達に砲身を向けた。



 こ、これヤバくないか!?



 すんごいのが来そうな予感がし。



 すぐさま俺はリサを腕を掴み。



 急いで砲身から逃げるように走り出した。




 ――だがすぐに、ゴットーが。




 「逃がさないでゴブス!! 超圧縮ゴブリン波動砲――発射!! ポチッ」







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