出会い
――――叫びながら落下していく途中。様々な景色がねじれたかのように映る本当にそこは不思議な空間で、想像したこともないような景色が異世界へと通じているものだと自然と思わせてくれ徐々に気持ちが高ぶっていく。
そして急にシュッと沢山の木が生い茂る景色が目の前いっぱいに広がり同時に何とも言い表せない自然のいい香りがしてくる。そしてテンションが上がりきり大きく息を吸い込み思いっきり叫んだ。
「ヤッホーーッ!」
って違うか!
1人はしゃいでいると何か目線がいつもより低いような違和感を覚える。
(あ、あれ? ち、ち、縮んでねーか?!)
何でだ? 書類には間違いなく書いたはずだ。
ただ少しだけ、少しだけ、サバを読んだだけだ!
168㎝の所を。
(やっぱ男は180㎝は欲しいよな! これで俺もイケメンの仲間入りだぜ!)
少しだけ、少しだけサバを読んだだけなのに。
――な、な、なんて日だッ!
前よりもかなり縮んでるんじゃ……。
え? え? えぇ? って事はでも何㎝だ?
クソッ! 分からない。
――――嘘だろう。こんな事があるのかよ。パニックに陥りながらも必死に状況を理解しようとしていると、今度は後ろから耳障りな音が聞こえてくる。
『ビィィィビィィビィビィビィ』
俺は音がする方を振り返り大声で怒鳴るように言い放つ。
「今考え中なんだよ。うるせぇぞ!」
振り返った先には――バスケットボール程の大きさのテントウ虫のような昆虫――が羽音を鳴らしながら目前に迫っていた。視線がぶつかると昆虫は俺に向けペッと緑色の粘液を吐き出す。――ドロドロッとした粘液が直撃する。
だが俺は田舎で育ち夜中の自動販売機に群れをなしてたかる虫との死闘を何度となく繰り広げてきた。だからこそ虫なんぞにビビることなく、すぐさま足元に落ちていた木の棒を拾い、力いっぱい強振し昆虫を遠くまで弾き飛ばし、気持ちよく叫んだ。
「ざまぁみろ! ホ―ムランだ。ホ―ムラン!」
――――身長の事を忘れ遠くまで昆虫を弾き飛ばした事で少しだけ気持ちが落ち着き、いつまでもこんな所にいても何も分からないしまずは村でも探してみるか。
――その場を離れようとした……その時だ!!
急に心臓の鼓動が早くなっていくのを感じ。
段々と音が大きく聞こえてくる程に強くなり。
俺はその場に崩れ落ちる。
血を吐き息を詰まらせ(もう死ぬのかよ)と思った。
――その時。
「大丈夫ですか? 大丈夫ですか?! xxxすか!?」
薄れゆく意識の中でそんな声が聞こえた気がした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――――(なんか眩しいなぁ)そんな差し込む日差しで目を覚ます。
確か俺は森の中で倒れた気がするけど……ここはどこだろうか。
そして何より俺は生きているのか死んだのかすら分からない。
ただ、まだ痛みの残る重い身体を起こすことで恐らく生きているのだと実感できたが、まだまだ不安だったので最終確認をするように下腹部に視線を移す。
――すると、こんな状況にも関わらずモッコリと元気に自己主張していた。
(これは生きてるわ!)
絶対的な自信を得たことで心にも余裕ができた俺は、どんな部屋にいるのかが気になり今度は部屋の中を見渡してみる。どうやら屋根裏部屋のような広さのこじんまりとした部屋で全体的に少しだけ埃っぽくそんな中で鏡がある事に気が付いた。
そういえば今どのくらいの身長になってしまったのか。
正確には分からないが縮んでいるのは間違いない。
男の身長は死活問題だ! だからこそどうしても気になり重たい身体を引きずるように何とか鏡の前まで移動し姿を確認してみる。
鏡には――赤髪で赤い瞳をした身長155㎝位の少年――が映り。
前とは違いすぎる容姿に愕然とし、思考が停止し固まり。
―-大きな声をあげた。
「マ、マジかあぁぁぁぁッ!」
いやいやいやいや! あり得ないだろう。どこをどう間違ったらこうなるんだ?
身長しか嘘は書いてないはずなのに……。
(許さねぇぞ! あのモジャモジャ野郎!)
――――鏡の前で痛みも忘れ盛大に混乱しモジャモジャへの怒りを募らせていると、ドンッドンッと勢いよく階段も軋むような足音をたて誰か駆け上がってき。
「無事で良かったあぁぁ!」
いきなりギュッと強く抱きしめられ――大きなおっぱいに俺は頭ごと包まれた。
(モジャモジャ、イヤ、神様……Thank you)
見た目は子供。中身は18歳。
しかも長年むさ苦しい男子校生活で俺は女に飢えていた。
だからこそ状況が理解出来るよりも先に。そう何よりも先に!
――解き放たれた猛獣のごとく豊満な胸を俺は揉んでいた。
相手が子供だと油断しきっている女の胸に顔をうずめ押しつけ、更には両手で思う存分揉みしだいていると、お姉さんが少し興奮気味に話しかけてくる。
「目を覚ましてくれてよかったわぁ。僕もう身体は平気なのかなぁ? それに可愛いわねぇ。ジュルリッ。それに名前は何ていうのかしら? ハァハァ」
名残惜しかったが俺は身の危険を察知し――スゥッとお姉さんの大きなおっぱいから抜け出し距離をとる。そして――トロンッと蕩けたような危ない目をしている金色のロングでカ―ルがかった髪で、どこか上品なお姉さん――に向け答えた。
「大丈夫、大丈夫だからッ! 俺はマコトだ。
てか今のこの状況の方がヤバイかも?!」
「そういわずに、僕またコッチにおいでッ! ほらほら、リサお姉ちゃんがじっくりと回復魔法をかけてあげるからぁ! ふふふ」
ジワリ、ジワリと一歩ずつリサが近づいてき、危険な空気が漂いはじめる。
だが――突然。
階段の下の方から木の扉が開閉するような音が響きその後にハッキリと聞こえてくるくらい大きな声で呼びかける声がした。
「お―い! リサ! 少年は目を覚ましましたかなー?」
一瞬チッと舌打ちし、リサは階段の下に向け返事をする。
「もう起きてますよ―! この分なら連れて行っても良さそうです!」
「おぉ、そうかい良かったわい。じゃぁそのままギルドへ連れてきておくれ」
「もうせっかく楽しんでたのに!
そういう事だからお姉ちゃんについてきてくれるかしら?」
容姿も前とは大きく変わり今の状況をロクに説明もしてもらえずにいた俺は、不安だったが恐らく助けてもらった訳だしまずは信じてついて行こうと決め、静かにコクリと頷く。
「じゃぁお姉ちゃんについてきてね」
――――リサの後ろをついて歩き階段を降り。家を出て何気なく振り返り先ほどまで居た家を眺めてみると、舗装されていないデコボコ道とは対照的に家の壁は綺麗にコンクリートのような物で整えられているのが印象的な建物だった。
当然ながらどこへ向かっているのかリサに質問してみる。
「これからどこへ向かうんだよ?」
「鑑定よ? 鑑定! マコちゃんステ―タス表示の仕方は分かるかしら?」
「驚くかも知れないけど、俺はこの世界に来たばかりだから分からない!」
「そうでしょそうでしょ? 簡単よステ―タス表示と念じてごらん?」
てかステータス表示ってなんだ? まぁいいか。
俺は教えてもらった通りに早速試してみた。
???Lv1
するとモニタ―のような物が急に目の前に現れしかも何か書いてある。
「エッ」
思わず驚き声を漏らす。
すぐさまリサにこの理解出来ない状況について知らせる。
「何か出たぞ! しかも、???Lv1って書いてある」
「だからそれを鑑定して勇者かどうか確かめるのよ。さぁ着いたわッ!」
鑑定して勇者ってのがもうよく分からない。
ゆっくりと考える時間も貰えないままに、西部劇に出てくる酒場みたいな建物の前へと到着していた。
――――そのまま建物の奥にある部屋へと案内される。そこには中央に魔法陣のような物が描かれており、さらに老人とディ―ラ―の様な服装の人が居た。俺を見るなりディーラーの様な恰好の人に魔法陣に乗ってくれとお願いされ言われるがまま向かう。
「わしはアタリじゃ!」
「じゃぁ僕はハズレで!」
周囲からはそんな声が聞こえてきたが俺は気にせずに魔法陣に乗ると――ピカッと魔法陣が部屋全体を包み込む程に光った。
「村長後はお願いしますね―」
何だか分からなかったが鑑定が終わったのだろうか。一言だけ告げるとディーラー風の男は部屋を出て行き、残された老人は溜息を吐きボソッと呟く。
「はぁ~またハズレかぁ」
そんな老人の肩に手をのせリサが優しく励ます。
「勇者じゃなく"ハズレ"だったのは残念ですけど、可愛いしイィじゃないですか? それに召喚される人なんて山ほどいるしまた機会はありますよ~」
何となくステ―タスを確認してみると。
冒険者Lv1
体力15
腕力40
知力5
敏捷10
運8
――――俺は腕力だけのただの冒険者だった。