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選択したその先へ  作者: 圭作
ある日
18/24

気配

 ――――俺達は迷っていた。








 ……これからの選択を。






 

 ――右に行くか。



 ――左に行くか。



 ……迷っていたのだ。



 ここまでは道なりに進んできたけど、遂に分かれ道がやってきた。

 地図を見た限りじゃ右に進むと奥はただの突き当り。

 でも左に進むと最深部は大きな空洞で、いかにもボスがいそうなエリアだ。


 しかし地図を見て思ったが。




 (このダンジョンここしか分岐点ねぇじゃねぇか!)



 クソッ! あのオヤジに騙された!


 「ダンジョンに行くのかい? なら坊ちゃん地図持っていかなきゃね。おっとここで開けちゃ商売にならないだろう?」


 なんて言われ確認しなかったがまずかったな。


 ま、まぁでも……分岐点の先がわかっただけでもいいか。

 と、とりあえず今はこの先どう進むかだ。

 正直ここまで苦戦もしなかった訳だし。

 いきなり敵が馬鹿みたいに強くなる事なんてないだろう。

 

 てかないよね? ないんだよね? ねぇねぇ?


 不安だしリサに聞いてみるか。



 「あのさぁ、ダンジョンって急に敵が強くなったりするのか?」


 「そんな事知る訳ないじゃない?」

 「そうだよなぁ。リサが知ってる訳ないよなぁ。ごめんな。難しい事聞いて」


 「な、な、なによ? 私だってこの世界の本があれば勉強できるのよ! そうよ私は本があれば出来るの! できる子なのよ!!」


 「そうだなぁそうだなぁ。リサは出来る子だなぁ」


 頭を撫でてやり子供に言い聞かせるようにしていると。

 リサは大人しくなったが何も問題が解決していないことに気付く。

 

 そしてある事にも気が付いた!!



 それは……。





 最近ラッキースケベすらないなぁ。

 

 (はぁ、おっぱい揉みたいわぁ)



 ――――意識しだすと聞かずにはいられなかった。

 たとえ結果が分かっていたとしても。

 

 そう、たとえ殴られると分かっていたとしてもだ!

 

 聞かずにはいられなかった。



 「なぁリサぁ、おっぱい揉ま――かはっ!」



 リサは体をゆらゆらと左右に揺らしフッと視界から消え。

 狙い澄ませたかのごとく、えぐるようなレバーブローを放ってき。

 俺は何とか踏ん張りながらも片膝をついた。


 更にリサはペッと唾を地面に吐きつけ――次はないわよ?

 そんな視線でギロッと睨み付けてくる。



 分かっていた。

 こうなる事くらい俺だって分かっていたんだ。

 ……でも、でも、少しくらい夢みたっていいじゃない。

  

 泣いてない。

 泣いてなんていないんだい!! 

 


 「ウオォォォッ」虚しく叫びながら。

 やりきれない思いと悲しみを剣に乗せ俺は斬り込んだ。

 この感情を少しでも晴らす為。

 ボスの潜伏してそうな左の最深部を目指した。



 ――――幅の広い坑道をさらに奥へ進むと見慣れないゴブリンに遭遇した。


 そいつは――ゴブリンとハイゴブリンの中間位の背丈で、鎧に兜それに盾と剣まで装備した――エリートゴブリンだ。

 その装備どこで手に入れたんだ? とか考えていると。


 ゴブリンと視線がぶつかり。

 どのゴブリンよりも素早く間近に迫ってき。

 

 瞬時に斬りつけられる。



 ――俺はとっさに剣で防いだが。



 ゴブリンは体をねじり間髪入れずに蹴りこみ。

 


 ―-距離をとった。



 動きまでエリートみたいだ。


 しかし蹴り自体はリサのパンチに比べれば生ぬるく。

 俺も速攻で反撃に移り間合いを詰め大剣を振り下ろす。



 盾で防ごうとしてたがそのまま斬りつけ吹き飛ばした。



 やったか。

 

 と思ったが……。

 立ち上がり瞬時に突き刺すように突撃してくる。



 飛び込んできたところに合わせ。

 薙ぎ払い仕留めた。

 

 でも2発か。

 

 ――――流石エリートといったところだ。

 迫ってきた時はヤバイと焦ったし訓練前なら確実に一撃食らっていた。

 それに1匹でこれじゃ2匹以上は無傷とはいかなそうだな。

 流石にそろそろスキルを使っていくか。



 考えもまとまりカンテラの淡い光で照らしてもまだ仄暗い坑道を進んでいくと、俺達の足音に混じり小さな軽い音がトットットッと聞こえてき恐らく何体かいるのだろう俺は静かに剣を抜き前に出て身構える。


 そしてリサにカンテラで周囲を照らすように指示しハッキリと数は分からないがエリートゴブリンを数体確認できた。



 そのうちの1体に向けすぐさまスキルをぶちこんだ。


 「ソニックブレイブッ!」


 ドンっと空気を震わせ重低音が静かだった坑道内に響く。

 まず1体仕留めたが。


 

 スキルを放った時だ。

 その一瞬の隙をつき左右からゴブリンに斬りつけられた。


 斬りつけられたはずが殴打されたような痛みしかなく、俺はそのまま構え直し目の前のゴブリン達に備えた。


 すると今度は背後から突然ドンッと鈍く重い痛みが走る。

 反射するように振り向くとその隙を狙っていたのか。

 また背後から攻撃を受けた。

 

 繰り返しなぶられ続けリサも後方からヒールを頑張ってくれているけど、最初のスキルを警戒してかゴブリン達は攻撃してはすぐさま暗闇の中へ消えていき連携して攻撃してくる為中々この状況を打開できずにいた。


 

 ――そんな時だ。



 何となくほんと何となく微かに気配のような、息遣いのような、足音のような、ぼんやりと分かる気がした。

 

 

 ――そしてきたっと感じたその時。

 

 

 その感覚だけを信じて振り返った時だ。

 ゴブリンが飛びついて斬りかかってきているのが見え。

 そのままスキルをぶちこんだ!!


 

 「殺人強振(デススイング)!!」


 

 ゴリッめり込み軋む嫌な音をたて吹き飛ばし動かなくなる。


 その光景を見てゴブリンが怯んだのを見逃さずに。

 まだ正面に一匹居た奴に向け突っ込みもう一発スキルをぶちこんだ!


 その隙をまた狙ってたのだろう。

 一匹迫ってるのが何となく伝わりすぐさま振り向き大剣を振り下ろし。

 ブチあて地面にたたきつけ突き刺した。



 そしてまた静かな坑道に戻った時だ。

 リサが駆け寄ってき調べるように体を触りながら話しかけてきた。


 「マコちゃん大丈夫? 傷とか残ってないよね?」

 「ザックリいかれたかと思ったけど大丈夫みたいだな」

 「防御力と、わ、私の回復魔法のお陰ね!」

 「かもな! でもリサが狙われなくて良かったよ」

 「そうね。私だと流石に痛そう! でもよくカンテラの光も届ききってないのに倒せたわね」

 「なんか不思議と分かる気がしたんだ。スキルでも獲得できてればな!」

 「だったらいいわねぇ。最深部まではあと少し頑張りましょう」

 「オーッ! この薄暗い中も慣れてきたし任せとけよ」



 ――――不気味なほどに静かな坑道をまた進み始めたが、多くても2体しかまとめて出てこず楽に最深部まで到着することができた。


 辿り着き中の様子を探っていると数匹のゴブリンの集団が襲ってくる。

 集団戦もだいぶ慣れてきたお陰でうまくリサと連携出来るようになっていた。

 俺がまずスキルで1匹潰し敵の注意を引きリサが俺を狙ったゴブリンを魔法で打ち落とし、俺が気配を探りながら更にもう一匹を斬りつけた。



 ――その時だ。



 カンテラ程の灯りが暗闇の奥でほわぁっと光ったその時だ!


 

 火の玉が急に飛んでき直撃した!!


 俺は熱さのあまり転げ回っていると。


 「――――ヒールッ!」


 リサが瞬時に回復してくれたが――まだ奥に何かいる!


 光った先に俺はすぐさま突っ込み近寄るとそこには――杖を持った俺の身長くらいで頭に羽飾りを付けた――ゴブリンシャーマンがいた。


 

 そしてまた杖が淡く光ると同時に火の玉が飛んでき直撃する。

 リサがすぐにヒールをかけてくれ俺もスキルを撃ち返し何とか仕留めたが魔法はクソ痛い!

 

 沸騰した熱湯をぶっかけられたような、そんな熱さが全身を覆う。

 熱いを通り越して痛いのだ。


 多少防御力があってこれだし冒険者以外だと焼け死んでるだろう。

 でもリサの魔法に比べ火の玉も小さかったし知力も影響してるのかもな。

 


 と、とりあえずもう魔法は嫌だ! 

 


 出てくるなと願いつつ最深部のエリアを探索してみても何にもない。

 ボスが見つからないってのは本当みたいだ。

 せっかく最深部まで来たけど今日は諦めて帰る事にした。



 トボトボと歩いて帰っていると。



 ――また後ろから魔法が飛んできて直撃した。



 俺は涙目になりながらシャーマンを仕留めたが。

 本当にもう魔法は勘弁してほしい。




 


  ――――そんなこんなで逃げるようにダンジョンを後にした。










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