大人な空間
――――俺達は町へ帰ると諸々の事は後回しでそのまま酒場へ向かった。
まずは色々あったけど初ダンジョン探索と魔塊の大量獲得を祝い。
大いに飲んで食べて飲んではしゃぎ盛り上がる。
その際にダンジョンに居たパーティの奴らともたまたま出会い一緒に飲んだ!
途中からいつも通りリサは「魔法も使えない愚民共め! 教えてほしい? 教えないわよぉ」など相変わらず悪酔いしていたが……。
帰りは引きずろうかと思ったが転職したお陰で抱えて帰るのも楽だった。
――――翌朝宿屋前に集まるはずだったのに中々リサが出てこない。
ようやく出てきたのだが……。
「あぁ……飲みすぎたわぁ。うブッ、きぶ、悪ッぅ」
「おっさんかよぉッ! いやぁ生々しすぎてひくわぁ……」
帰り道、抱えるついでにふざけて振り回しすぎたのがまずかったか。
完全にリサは二日酔いだった。
「ちょっと、マッ、うっててッ……ぅう」
そう言い残ししばらく待っていると……。
酒と酸っぱい臭いを漂わせスッキリした表情で帰ってきた。
「いいわ! いつでも、どこでも行けるわ!」
――――そんな全然頼もしくない奴をを連れ冒険者ギルドに向かう。
到着し窓口を見渡すと見慣れた奴を発見でき直ぐに移動し話しかける。
「よう! 久しぶりだな」
「お久しぶりです」
「やぁやぁやぁ! 久しぶりだね」
「それでさ今日は聞きたい事があるんだけどいいか?」
「もちろんいいさぁ~、どうしたんだい?」
――――ダンジョンの奥でスキルや魔法が急に使えなくなった事を説明するとミューゼスは呆れながら教えてくれる。
「普通は覚えたときに気づくんだけどね~、スキルや魔法にも魔力を使うから単なる魔力切れだね~。むしろ今まで気づかなかったのが不思議なくらいだよ」
「そんなに使う機会無かったしな!」
「わ、私も杖でなぐってましたし!」
「Lvが上がれば魔力総量も増えるし、少し休めば回復するから簡単な魔法やスキルは使い放題になるけどね~」
そういえば昨日はスキルを撃ちまくって蹂躙するのが楽しすぎて、全然Lvは確認してなかったな。
ついでに確認してみるか。
武器 《マギアロングソード》
ウォーリア Lv12
体力56
筋力119
知力20
敏捷78
運10
攻撃スキル
殺人強振 ソニックブレイブ
能力スキル
パワ―アップⅣ ガ―ドアップⅣ
残P13
10、10、10も上がってるぅぅぅ!?
俺は当たりだったんじゃ?!
そんな事も密かに思いちょっと自慢気に。
フッ俺凄いだろと言わんばかりのドヤ顔で伝えてみた。
「な、なぁミューゼス。昨日一日で10もLv上がってるんだけど……」
ミューゼスが驚き口を手で覆い聞き返す。
「え? な、なんだって~!? じょ、冗談だろ~?」
「本当だって! 俺もう12だけど?」
この反応を見て俺は確信した。
今日から俺は勇者なんだと!!
俺の時代が来たんだと!!
そしてミューゼスは深く息を吐きこう告げる……。
「はぁ~、ダンジョンは育ちやすいしLvが低いうちはすぐ上がるよ~」
「だろうなっ!!」
勇者ごっこはあっさりと終了した。
そんな事より魔塊袋を目の前に置きもう1つ尋ねる。
「昨日結構魔塊集まったんだけど、金に換える方法ないかな?」
「おぉ、結構集まったんだね~。冒険者ギルドで買い取りか自分で販売ルートを作るのが一般的かなぁ? なんなら査定するよ~」
「じゃぁとりあえず査定頼むわ!」
伝えるとミューゼスはルーペなような物を取り出して鑑定を始めた。
そんな中俺とリサは待ち切れずにもし大金だったらどうするか。
ヨダレを垂らしながら相談していた。
「なぁなぁデッカイ屋敷を建てようぜ」
「私は大きい宿屋がいいわ。大きい宿屋を建てましょう」
「その発想はなかったわ。それでもいいな!」
「「フフフッ」」
「終わったよ~」
ごくりと唾を飲みこみ、祈るように俺達は鑑定結果を聞いた。
そしてどこか言いずらそうにミューゼスが結果を伝える。
「そうだねぇ~。低純度の魔塊だから20万かなぁ。1日でこの量は凄いけどね」
「「安ッ!」」
「低純度は割ととれるからね~、どうするかい?」
俺達は夢破れながら慰め合い。
先月の苦労を思えば1日10万なら十分過ぎるし換金する事にした。
そしてリサとホクホク顔で分け合い。
懐が温かくなったことだし一週間はのんびりする事にした。
――――この日の夕方俺は1人町にある共同浴場に向かい。
綺麗さっぱりしある場所へ向かう準備をしていた。
この世界でも一応風呂はあり町以上になら共同浴場が何ヶ所かあるらしい。
そして夕方になるとごったがえしているのだ。
個人でも金持ちの商人や貴族や王族等は当たり前に風呂が家にあるんだろうが、庶民には共同浴場しかない。
そして庶民な俺が初めて行った時だ。
も、も、もしかしてこ、混浴なんじゃね!?
と期待したが、残念ながら男湯と女湯は別だった。
でももし混浴だったらそれはそれで色々ときつかったかもな!
――――そして町の北西にひっそりとある店の前へと俺は辿り着いた。
扉の前には強面でガッシリとした男が2人立っており。
俺が扉の前に着くと1人が手で扉を遮り。
「申し訳ございませんが坊ちゃんにはまだ少々早いかと」
もう1人の男はニヤニヤと馬鹿にするような笑みを浮かべていた。
だがもう慣れっこだ。
俺は無言で胸元からスッと冒険者カードを取り出し見せると。
「申し訳ございませんでした。どうぞ」
男達は重い扉を開け中へと導いてくれる。
そこは仄暗く外の世界とはまるで隔離されたような場所で、扉の開閉する音が響き渡るくらい中は静かで他の音は聞こえてこなかった。
そして独特のいい薫りがしてくるそんな大人な雰囲気の空間だった。
奥へと進むと老人が、イヤどこか凄みのある老人が。
受付の席に座っており俺は慣れた様子で1人の女性を指名した。
老人はニカッと不気味な笑みを浮かべボロボロの歯を見せ。
おもむろに鍵を俺に手渡し。
「では、こちらの部屋でお待ちください。ヒッヒッヒ」
鍵を受け取り部屋に向かいはじめると。
「ごゆっくりお楽しみ下さい」
後ろから老人はさり気なく伝えてくる。
振り返ることもなく仄暗い空間を進み部屋に入る。
するとホワァ~ッとほんのりいい薫りがし。
中には硬そうなベッドと、浴衣のような服が用意されており。
着替え、ベッドに横たわり女性を待った。
リサには内緒でお金が入ると来ていたが何度来ても緊張する。
そして……。
「お待たせしました」
指名した女性がやってくる。
俺はそのまま動かずベッドで待ち緊張を隠していると。
……慣れた様子でその女性はゆったりと近寄ってき。
プロだけあって俺の緊張具合を察してくれたのか。
ほぐすように首からゆっくりと手を這わせ、肩を揉んだ。
そしてしばらくすると小さな体に乗るようにまたぎ……。
一言だけ発し何かを始めた。
「ふふっ。痛かったら言って下さいねぇ」
俺は思わず声を漏らす。
「あぁ気持ちいいわぁぁ」
女性はまた一言
「ふふっ。可愛いですねぇ」
そしてまた女性はツボを押した。
さらにツボを押した。
場所を変え強くツボを押した。
またもやつい声が漏れる。
「あぁ気持ちいわぁぁぁぁ」
ここは現場作業時代にカチキの仲間に教えてもらい、たまにお金が出来ると通っているのだがすんごく気持ちイイのだ。
もう病みつきになるくらい気持ちいいのだ。
大人な空間で最高のマッサージを受けスッキリし、いろいろスッキリし、本当にスッキリし、オバチャンにお礼を伝えマッサージ店を後にし最高に身体の調子もよくなり今夜も酒場にくりだした。




