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選択したその先へ  作者: 圭作
ある日
15/24

新人x2

 《フォルタナの北西に15年前からボスモンスターが棲みつきゴブリンばかり沸きだした鉱山がある。その名はジュメレ鉱山といい未だボスモンスターが討伐されていなかった。そしていつしかダンジョンと呼ばれるようになり初級向けのダンジョンとして人気のある場所となっていた》



 《そんなジュメレ鉱山の奥深くへ通じる坑道にて今日も己たちの欲望を満たすためダンジョンへと潜っている1組のパーティがあった》






 ――――僕達はダンジョンの奥にある薄暗く遠くまでは見渡せないが、だだっ広いそしてモンスターの沸いていなかった空間で連戦の疲れを癒すように一休みしていた。


 

 「道なりに来れたけど奥まで進んでも大丈夫なのかな?」

 「なんだよドイルびびってんのかよ? ブブブッ」


 「そうじゃないよグンタ君! ミツヒコ君が強いのは知ってるけどミツヒコ君以外ダンジョンなんて初めてだし……」


 「心配しないで下さい。みなさんはこの僕、ミツヒコが守ってみせますよ!」

 「キャーッ、ミツヒコ君素敵ッ! どっかの弱虫と大違いだわっ」

 「止めて下さい。マユミさん、僕は当たり前の事を言っただけですよ」

  

 『ドゴォォォン』



 確かに僕はダンジョンが初めてで不安だった。

 でもそれよりも怖かったのは、坑道のどこかから何度も、何度も、身体に重くのしかかるような音が轟いてきてたからだ。

 だから1秒でもこんな場所から早く帰りたかったし素直に伝えてみる。


 「今日はもう帰ろうよ? みんなもこの音聞こえるでしょ?」


 するとグンタは僕を馬鹿にするような笑みを浮かべ、大きな声でからかうように答えた。


 「ブブブッ。冒険者の癖してこんな弱虫だなんて帰って母ちゃんのオッパイでもすすってな。ブブブッ、みんなドイルなんて置いてもっと奥に行こうぜ!」 



 「そうですね。この僕がいれば、こんなダンジョンなんゴォッ」



 ――――――それは一瞬の出来事だった。



 誰も警戒していない。



 ほんの一瞬だった。



 暗がりから屈強で人よりも巨大なゴブリンが現れ。

 

 ミツヒコが歪むような鈍い音をたて吹き飛ぶ。

 


 「キャアァァァァ―!!」

 「ミ、ミツヒコォー!!」

 


 僕は声すら出ず。

 マユミの悲鳴とグンタの叫び声が坑道内に響く。



 そして思ったことを何とか口にする。



 「に、にげなきゃ! ミツヒコ君はも、もうだめだよ」

 「クッソォガァアアッ! ミツヒコのおグボォッ」

 「――――だ、ダメだよ!! グンタく……」



 更に2体同じゴブリンが現れ。

 

 グンタも呆気なく吹き飛ばされる。

 

 


 僕はマユミの所へ走った。





 そして手を伸ばす。





 マユミが指さす。

 



 

 僕は振り返る。





 そこにはこん棒を振り上げたゴブリンが……。

 



 (もうだめだ)僕は諦めた。



 

 ――――――その時だ!


 


 『ソニックブレイブッ!』



 ズンッと空気を震わせ重く鋭い音が響いた時。

 斬撃のような何かにゴブリン達は両断されたのだ。




 『――――クラインフレイムッ!』



 奥から出て来た1体にもすぐさま燃えるさかる玉が直撃し……。

 『ドゴォォン』轟音と熱風をまき散らし爆発と共に消え去る。


 僕はその様子をただただ眺めていることしか出来なかった。



 その後すぐに薄暗い中から。

 小さな体格には相応しくない程大きな剣を持った赤い髪をした少年と。

 金髪でついつい胸に目がいってしまったが美人なお姉さんが。

 

 機嫌良さそうに現れ。



 『フハハハッ! ゴブリン共がまるでゴミのようだッ!』

 『フフフッ、私達の前に出てきたのが運の尽きねッ』



 お姉さんはミツヒコとグンタに回復魔法をかけてくれ、その後二人は何事もなかったように立ち去り薄暗い鉱山の奥へと消えて行った。




 それからすぐに僕たちはこのダンジョンを出る事を選択した。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 ――――俺達はジュメレ鉱山の坑道へと向かい順調に奥まで進んでいた。

 

 

 その途中で死にかけの冒険者も助けなんだか気分は熟練冒険者なのだ。

 初めてのダンジョンなのにもうノリノリ、そうノリノリなのである。

 

 そんな中リサが腰に付けていた革袋を外し。

 その中身を見せ機嫌良さそうに話しかけてくる。



 「見て、見て見てッ! 凄いの! もうこんなに魔塊が溜まってるのッ!」


 そこには換金が待ち遠しくなるほどに詰まっており俺もご機嫌で返す。




 「すっげぇ詰まってるなぁ! 今夜はパァーっとやろうか母さん」

 

 「そうね! そうしましょお父さん」


 


  ――――――だが突然!



 「キャアアアアアアア」


 

 突然リサが悲鳴をあげ俺は敵だと思いすぐさま大剣を抜き構えた。



 が。


 

 「魔塊ががが、き、き、消えたの! 消えたのよ?!」

 「え? そんな冗談つまらないぞっ」 

 「ほ、本当よ!!」



 だが俺はふと思った。


 こんな所であからさまな嘘をつくなんて何かあるんじゃないか?

 そして最近のリサの様子から俺は何となく当たりがついた。



 「落ち着けよ、こういう事だろ?」

 「な、なによ?」




 「魔塊はどこにあるでしょうか? っていうプレイなんだろ? フッ、リサも大胆になったな。俺はその胸にファイナルアンサーだ!」




 言い終わるのを待って思いっきりぶん殴られた。



 「酷いじゃないかっ」


 「こんな時に変な事言わないでよッ!」


 「どうせ腰につけたままだったわ。テヘッとか言い出すんだろ。キツイわぁ……色々キツイわぁ」


 「違うの! 違うのよ! このお婆ちゃんに貰った袋に大事にしまったら消えたの!」

 「そんなバカな事ある訳ないだろ?」


 そういいつつも一応その袋を確認してみると。



 《パクパク中袋》



 凄い怪しかった……。


 ――――早速調べてみる事になり袋を渡してもらい確かめる様に腕を突っ込んでみたがまるで袋の底に届かないのだ。


 なのでリサの見守る中、袋の口を地面に向け振ってみると……。


 ジャランッと音をたて地面に魔塊のたっぷり詰まった袋が落ちてくる。


 「「おぉー」」


 2人とも思わず声が出た。


 あのお婆ちゃんが騙すような真似するとは何となく思えなかった。

 だけどオマケと言いつつこんな良さそうな物をくれるなんて本当に何者なんだろう……。

 

 そんな事を考えているとリサが慌てた様子で今度は。

 バシバシッと何度も肩を叩いてき揺さぶりながら。



 「ま、周り、敵よ敵ー!」

 


 ――――面倒くさそうに周囲を確認すると見事に囲まれていたのだ。


 そりゃ坑道内なのに大声ではしゃいでいれば敵さんも集まってくるだろう。

 しかし、忘れないでほしいが今日の俺達は出来る冒険者なのだ。

 

 そこで一発かましてこい! とリサに合図を送る。


 フッ出番ですか、そんな感じでリサは頷き、詠唱を始め。




 「――――クラインフレイムッ」




 しゅぽんっとやる気なさげな音と煙と共に不発に終わる。



 「――――クラインフレイムッ」


 

 しゅぽん。

 

 

 「――――クラインフレイムッ」




 しゅぽんっ。

 全て不発に終わりゴブリン達が襲ってくる。




 フッ、どきな嬢ちゃん、そんな感じで大剣を抜き。


 大剣を斜め下に構え力を貯め、一気に薙ぎ払うようにスキルを放った!




 「ソニックブレイブッ!」



 スカッ! 虚しくもその場で大剣が風だけを斬る。

 俺はリサとは違う! 違うはずだ! そうそれだけの思いで。

 もう一度スキルを放つ!



 「ソニックブレイブッ!」





 を放つフリだけをして1体ずつ片づけた。




 ふう~、幸いにも一撃でゴブリンを仕留める事が出来たが……なぜだ?

 なぜスキルが出なかったんだ? 俺もリサもその場で考えたけど分からない。

 なので一度町に戻り換金やギルド職員に聞いてみる事した。



 ――――そしてそんなこんなで俺達はダンジョンを後にした。


 





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