バザール
《この世界ではみな魔力を宿し生まれてくる。そして通常モンスターは動物や植物または昆虫等が宿す魔力によって変異し繁殖したものだと考えられている》
《しかし例外的に強力な魔力を宿すボスモンスターが棲みつく事により、その場所に溜まった魔力によってモンスターが生み出されていきボスモンスターが討伐されるまでは生まれ続けてくる》
《そしてそのような場所はダンジョンと呼ばれるようになり、ダンジョンから生まれてきたモンスターは稀に魔力の塊である魔塊を落とし、これはマジックアイテムの材料となり高額で取引され、それを求める冒険者達で常に賑わっているのである》
俺達もまたそんなダンジョン攻略に乗り出した。
そう乗り出すはずだった!
さかのぼる事1ヵ月前。
――――俺達は早速冒険者ギルドへ向かった。
そこで体格のいいギルド職員さんに、ダンジョンについての情報や指導を受けていた時の事だ。
俺達の装備やスキルを伝えると。
「そんな装備で大丈夫か?」
真顔で言われ不安になりフォルタナの町で1ヵ月後に開催される大規模なバザールにて装備を整える事にし、それまでは依頼やカチキの元での土木作業で実のいい仕事をしてお金を貯め数日前にスキルも新しく覚え準備をしていたのだ。
――――そして今日その日がやってきた。
朝からまずは町の中央に向かい、リサもだいぶこの町に慣れてきたお陰で話しながらこの大規模なバザールを見て回る。
「しかし長かったな」
「そ、そうね! 毎日こんなに働いたのは初めてよ」
「しかし溜まったな」
「そ、そうね! 沢山溜まったわ。このまま宿屋で過ごしてもいいと思えるくらい溜まったわ」
「そ、そんなに溜まったのか……」
「冗談よ」
――――そんな何気ない会話を楽しみながら見て回っていると、昼頃にようやく沢山の武器が店頭に並び大剣も販売している店を発見する事ができた。
早速店主に話しかけてみる。
「ちょっといいか? そこの大剣を見せてもらえないか?」
「悪いが坊ちゃんには少し早いんじゃないかな」
「いいから見せてくれよ」
商売人だけあってもう一度伝えると飾ってある大剣を手渡してくれ。
《鋼の大剣》
俺はその場で大剣を片手で試すように素振りしてみると、それだけで風を切る音がビュンッとし今ある大剣より軽くて凄い扱いやすそうだった。
そこでキョトンとしたままの店主に早速交渉を開始する。
「おっちゃんこの大剣いいな! いくらだい?」
「そ、そうだな。坊ちゃんを疑っちまった礼に負けて12万=(金貨1枚と銀貨20枚)でどうだ?」
俺の予算は8万アンラ(銀貨80枚)だしもう少し何とか値切れないかダメ元で交渉してみる。
「おっちゃん何とかもう少し負けてよ! お願いッ!」
「そうだなぁ……。よし大負けで10万だ! これ以上はまけらんねぇ」
「うううう、」
これ以上は値切れないと諦めようとした時だ。
見かねたんだろうリサが話しかけてきた。
「いくら足りないのよ? 足りない分貸してあげるわよ」
「2万アンラだけどもう少し他も見てなかったらお願いしようかな。それにリサも装備揃える必要あるだろ」
「おっちゃん悪ぃ! もう少し見て回ってなければ来るかもしれない!」
「そうかぁ! 一応今日の間だけは残しておいてやるからいつでもまた来な」
――――スゴスゴとその場を離れ他の店を探し歩き回っていると、久しぶりにツヨシを見かけ話しかける。
「よう久しぶり! ツヨシも何か探してるのか?」
「こ、こんにちは」
「久しぶり! 試験の時に盾が壊れたから武器も新調しに行くのだぁ」
「どこか安くていい店あったら教えてくれよ」
「じゃぁ今からオラについてくるのだぁ」
――――以前ツヨシがバザールで槍を買った店のあった場所に俺達は案内してもらう事になり町の南側にある来たことのない区画に到着した。
そこにはマジックアイテム関連の出店が並んでいたが武器を置いてある店は見当たらず更についていくと、建物の影にひっそりと隠れるように露店が見え、そこに居た――怪しげな雰囲気の鼻が長くローブを被った――お婆ちゃんにツヨシが話しかけた。
「ランダお婆ちゃん久しぶりだ! 3ヵ月ぶりぐらいだなぁ」
「ふぉふぉふぉっ、そうじゃなぁ今日はお友達も一緒かい?」
「そうなんだぞぉ! オラ達3人に武器を売って欲しいのだぁ」
「この間の槍はどうしたのかい?」
「ダハハッ! この小さいのに盾を思いっきり砕かれたぞぉ」
「ふぉふぉっふぉっ、そうじゃったかぁ。なら3人共少し待っておるんじゃ」
――――そう告げるとお婆さんは裏路地へ向かい見えなくなる。
「8万しかないけど大丈夫なのか?」
「私は11万アンラね」
「ダハハッ、大丈夫大丈夫! オラは前ランスと盾セットで7万だったぞぉ」
――――心配そうに待っているとお婆さんとその後ろに若い男が大きな箱を抱えて帰ってくきた。
まずはツヨシに武器を見せ説明し手渡し、そして俺だ。
「ふぉふぉっふぉっ、坊ちゃんにはコレじゃ」
《マギアロングソード》
パッと見綺麗な大剣で魔法陣のような刻印があり、どこか普通と違うそんな気がして不思議そうに観察しているとお婆ちゃんが説明してくれる。
「いくら見てもこの剣自体は普通の鉄の大剣じゃよ。でも特別な魔法を刻んでおるから武器に魔法を宿すことが出来るぞい」
「婆ちゃん……俺全然魔法使えないけど?」
「ふぉふぉっふぉっ、そこのお嬢ちゃんが使えるじゃろ? その子に属性魔法を撃ってもらうんじゃな」
「リサって攻撃魔法使えるようになったのか?」
「フフフッ、マコちゃん。私がいつまでもヒールしか出来ない女だと思ってたの? お笑いね。 覚えたのよ! そう私は遂に攻撃魔法を覚えたのよ!!」
「な、な、なんだってぇ!? いやまぁ知ってたけど」
そうリサは攻撃魔法を覚えていたのだ。
俺が工事現場で汗水たらして働いている最中に、ビッチから教会の信者を紹介してもらいリサより知力の低い魔法使いから即時学習で魔法を習っていたのだ。
「ごくり……。でもお高いんでしょう?」
「なぁに心配しなくても元はただの鉄の大剣じゃから6万アンラじゃ」
「買ったぜ! 婆ちゃんっ」
ついでに銅の大剣も下取りしてもらえ5万5千アンラまで負けてくれた。
ツヨシも俺も良い武器が手に入り満足できたしリサはどんな武器か来るのか楽しみに待っていると、盾とメイス?を取り出してくる。
「ふぉふぉふぉっ、最後はお嬢ちゃんじゃな。これとこれじゃ」
《マジックシールド》《マジックメイス》
見た感じ盾は普通の鉄の小盾だったが……。
メイスは先端の部分に宝石のような物がはめ込んであり。
それがピカッピカッとたまに光っているのだ。
そうオモチャのステッキのように!
だがリサは……。
「こ、このメイス、ひ、光ってるわよ! マコちゃん! 素敵だわ」
凄く嬉しそうにはしゃいでいたしまぁいいか。
そしてこれもお婆さんが説明してくれる。
「盾は魔法防御の上がる魔法付きじゃ、そしてこのメイスじゃ……で、魔塊が砕けたら補充するのじゃ。そうすればまた元通りになるぞい。これは8万アンラじゃ」
「わ、分かったわ! お婆ちゃんありがとう。」
「ついでにサービスじゃ。これを持って行きなさい」
リサは袋のような物も貰い俺達はお礼を婆ちゃんに伝え、その後またバザールを見て回り身軽な普段着と変わらないような防具を安く揃え最後は酒場でパーッとやりツヨシと別れた。
――――そして翌朝遂に俺達はダンジョンへ向かう事にした。
武器 《マギアロングソード》
ウォーリア Lv2
体力36
筋力79
知力15
敏捷48
運9
攻撃スキル
殺人強振 ソニックブレイブ
能力スキル
パワ―アップⅣ ガ―ドアップⅣ
残P3




