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05 ナギス村から旧鉱山へ

この話は別途連載中の「異世界冒険戦記 ルイン・ブリンガーズ」の前日譚です。

以前投稿していたものを大幅加筆修正してあり、独立して読むことが出来ます。

「ルイン~」を読んでくれた方も、内容にかなりの改編・挿入話がありますので楽しんでいただけるかと思います。


SFもファンタジーも盛り沢山ですがハイファンタジーものです。

異世界冒険譚がお好きな方には是非!

 ミーナが村はずれの芝生を一面に張った係留場に船を止めると、一行は地面に降り立った。

一面に刈り込まれた芝生が広がった芝生港ターフポートには、宙に浮いたまま色とりどりの草小舟グラスディンギーが桟橋に係留されている。


 村の中は、人族ヒュームの一般的な村と比べると特段変わらない風景で、木造家屋が建ち並んでいた。ただし、目を引くのはシナギー族の体格に合わせて様々なもののサイズが人族ヒュームの半分くらいに小さく造られていることと、村内の道が全て芝生で覆われていることだ。

 聞くと、草小舟グラスディンギーが各家々まで直接乗り付け出来るようにするため、芝生が敷き詰められているらしい。その他、村内では帆が無くロープで牽引する草筏も荷運び用として使われており、シナギー族の体格の問題もあることから、車輪のついた荷車よりも有用されているのだそうだ。


 4年前のラナエスト武闘祭の際に、お祭り騒ぎの中で小さな子供が宙に浮かぶ風船を引っ張って歩いていた風景をシャティルはなんとなく思い出した。

 なんとなく癒される記憶を思い出したのが表情に出ていたのか、ミーナの視線が若干冷ややかに思え、慌てて脳内妄想を打ち消し、宿屋に向かう事にする。 


 村内を中央広場を抜けて東側の通りをゆくと、白壁に緑の屋根の大きな建物が見えてくる。それが、ミーナの自宅兼旅籠であるらしい。しかも、ミーナの自宅はシナギー族サイズの建物が並ぶ中では珍しく、人族ヒュームサイズの建物であった。


 聞けば、ナギス村の迎賓館的な位置づけで、外からの多種族が寝泊まりできるよう、人族ヒュームサイズで造られているらしい。明るい色調の木造2階建てで、横に長い造りは結構な人数が止まれそうだ。


 看板には「緑風亭」と書かれていた。

 ミーナが白木のドアを開けて入り、シャティル達を招き入れる。


「ただいまー!お母さん、お父さん、お客さん連れてきたよ-!」


 奥からぱたぱたと足音をさせてやってきたのは、ミーナと同じく赤毛で背格好も瓜二つ、ただし、若干目尻の小じわで辛うじて一見の印象よりは年配であると判る女性であった。


「あらまぁ、ナギス村へ皆さんようこそいらっしゃいました。宿屋緑風亭の女将ジーナと申します。ささ、どうぞこちらへ」


ジーナはシャティル達に挨拶すると、ミーナにも向き直り労った。


「ミーナもおかえりなさい」

「ただいま、お母さん!」


 ミーナはそのまま自室へ向かい、シャティル達は食堂へ案内してもらって卓につき、宿帳を持ち出してきたジーナの説明を聞いた。


 今は他にお客がいないので一人一部屋用意できること、一泊素泊まりで4千コトス(1コトスは銅貨1枚、ちなみに100コトスで銀貨1枚、1000コトスで大銀貨1枚である)、食事は別料金で注文があれば提供、ということであった。

 ちなみに王都ラナエストでは一泊6千コトスは掛かるので比較的良心的な値段であろう。


 なお、村の中では飲食の出来る場所は他にはなく、村内のシナギーが憩う事で常に盛況、名物料理は「シナギー風草原の炊き込みご飯」と米から蒸留したクスイという酒、なのだそうだ。

 シャティル達は宿泊の手続きを頼み、夕飯時までとりあえず部屋で一休みすることにした。



 夕刻、緑風亭の厨房ではドワーフと間違うような低身長でがっしりした体格、顎髭を蓄えたシナギーの男が鉄鍋を振るっていた。

 ミーナの父にしてジーナの伴侶、マッサウである。その剛腕にして繊細な腕前が、今宵も緑風亭のテーブルに広げられる料理を次々と作り出しているのだ。


 緑風亭は、夜は村の居酒屋として繁盛するため、ジーナとマッサウの二人だけでは切り盛りできない。幸い、日中の畑仕事を終えてからアルバイトとしてきてくれる臨時従業員が何人もいるため、どうにか食事の提供が成り立っている。

 給仕についてはシナギーの女性が数人いるが、近所の主婦達が昼と夜の作業を手分けしながら、良い小遣い稼ぎにしているらしい。


 そんな説明をミーナから聞きながら、シャティル、レド、オルフェルの3人は食事に舌鼓を打っていた。


「この草原の炊き込みご飯、美味いな!」

「平原で採れる野草と野ウサギ肉から出る出汁が決めて、かな?」


シャティルは素直に感想を言い、レドは研究癖なのか食通なのか、味の分析をしてみるが。


「鶏肉っぽい感じだが、野ウサギか。その割には2種類の肉が入っているような」


 舌の正確さではオルフェルが上手のようだ。


「すごいねー、良く判ったね、オルフェル。確かに2種類のお肉が入っているけど、二つ目はウサギじゃないんだよ」


にぱっと笑うミーナが続ける。


「とっても出汁が出る、二つ目のお肉は、平原の用水路で獲れる鰻蛙(ウナトード)なの!」


「「「ぶっ!」」」


 途端に咽せそうになる3人。


『ウナトードって、あのデカイ蛙かよっ!』

『成長しても尻尾が残る珍しい生態だったな。確か内臓に猛毒があったはず・・・・・・』

『青白コントラストの、ぬめぬめした奴か・・・・・・里にも居たが・・・・・・』


 シャティル、レド、オルフェルの心に三者三様のイメージが浮かんでは消え・・・・・・


「まぁ、美味いからセーフと言うことで」


 そう言って取り皿から二杯目をよそいだすシャティル。一方、レドはシャティルの切り替えの早さに呆れるが、レド自身は少し食欲が減退したようだった。

 オルフェルはと言うと、クスイをグイッと飲んで口の中の気分と過去のトラウマを誤魔化している。もう結構な量の酒が入っているはずだが、顔色は全然変わっていない。


「オルフェルはお酒強いのねぇ」

「いや、顔に出ないだけで、結構酔いは回ってきてるよ。しかし、このクスイという酒は美味いねぇ。上質なワインに引けを取らない、薫り高く飲み口もさっぱりしている」


 そこへ一人の男がやってきた。


「おーう、エルフの兄ちゃん、いい飲みっぷりだねぇ。なんならもっとすげえの出してやろうか?」

「お父さん!?」


 それは、厨房を抜け出してきたミーナの父、マッサウであった。 

 マッサウは給仕に何か話して、別の酒を持ってこさせる。

 それは、クスイとはまったく別種の、白く濁った液体であった。


「こいつは鬼クスイ、通称“キクスイ”だ。加水調整前の原酒でな、強さ、口当たりもまるっきり違う。4日前に泊まってったドワーフもこいつには大満足してたぜ」


 どれどれ、とオルフェル。一口口にすると、


「こ、これはー強い!でもまったりしたまろやかさと微発泡がまたいいね!」

「だろう!明日から南の丘陵地帯の旧鉱山に行くんだってな。なんならこいつをもたせてやるよ」

「是非お願いします!」


オルフェルも上機嫌だ。


「あ、その件で、私も一緒にいってもいい?」


 思わぬミーナの申し出に、シャティルとレドは顔を見合わせた。


「ミーナが、なんで?」


レドの問いに、答えたのは意外にもマッサウである。


「さっき話した、4日前に泊まったドワーフ、名前はギルビーと言ってたな。こいつが、実は同じ鉱山に向かったんだ。」

「なんだ、御同業か」

「滅多に人の行かないところなんでちょっと心配でな。あんたらも行くなら丁度いいし、ミーナもこう見えてここ辺りの山には詳しい。親父の俺が言うのも何だが、森守レンジャーとしても中々の腕をしてるはずだ。一緒に連れて行って、それでギルビーの無事を確認して欲しいんだ」


 マッサウの説明にシャティル達は納得した。


「明日からもよろしくな、ミーナ」

「お姉さんにまかせなさいな、シャティル」

「どこがお姉さんだよ。幼女のくせに」

「幼女って言うな!」


 噛みつかんばかりの勢いのミーナに、どうどう、と獣をあやすかのように腕を出してふざけるシャティル。レドは場を納めようかと助け船をだすが。


「でも、ヒューム族換算したらミーナって俺らと同年代だよね。少なくともお姉さんではないかも」

「まぁまぁ。エルフから言わせたら、君らみんな同じく幼い扱いだけど」


オルフェルがレドのフォローをぶちこわし、さらには大笑いを始める。


「オルフェル、あんた飲み過ぎ!」


ミーナのツッコミにもアッハッハと笑い続けるオルフェル。


「あー、これやばそうだな。こういう酔っぱらい何人か知ってるよ。な、レド」

「確かに。部屋連れて行こうか」


 苦笑しながら、二人はオルフェルを部屋へ連れていくことにした。


「マッサウさん、飯美味かった!ごちそうさん!ミーナ、また明日な。」

「二人とも、今日はありがとう。おやすみなさい」


 オルフェルに肩を貸すシャティルとレドを、ミーナとマッサウは見送った。


「いい野郎共じゃないか。なんならこの後ずっとあいつらに付いてって旅に出ても良いんだぜ」

「ちょっと、お父さん、あたしはそんなつもりは・・・」

「お前もシナギーだ。いずれ出て行くと思ってたから遠慮する必要はねぇ。なにも難しく考える事はねぇよ」

「・・・・・・まぁ、気が向いたらね。じゃ、あたしも寝る。お休みなさい!」


 ミーナは、他の同年代の若者達ほど旅への欲求が少ないようだった。それは、王都に行けば珍しいものも見られるという環境で好奇心が満たされているためでもあるのだが、それでもそのうち放浪の旅へ行くのだろう、と親に思われていることを本人は知らない。


 娘を見送ったマッサウは若干寂しい気持ちになったが、『さぁ、仕事だ!』とすぐに気持ちを切り替えて厨房に向かうのであった。



 客室に入ったシャティルは、衣類を脱いで下着だけの楽な格好になると、ベッドに身を投げ出した。緑風亭は各部屋に簡易な湯浴み用の設備があり、お湯でぬらしたタオルで身体を拭く事が出来たため、久し振りに身体がさっぱりする。

 これなら、今晩は気持ち良く眠れそうだと、シャティルは微睡まどろんでいった。




―ラナート特級(エス)要塞(フォート)


 隕石衝突メテオストライクを逃れ、地中に沈降した要塞内司令室では、情報が錯綜している。


「駄目です。防護障壁の上に大量の土砂が溜まっているようです。このままでは要塞は浮上出来ません!」

「地上監視機器は全滅です。魔法による遠隔視は出来ましたが、丘陵地帯は全て吹き飛んだ模様!隕石はここより20ケリー北へずれて落下した模様です!」

「友軍戦力の状況はどうか?」

「壊滅です!いくつかの救難信号が来ておりますが、こちらからは手配出来ません!」


 司令室の中央では二人の連合軍幹部が状況を眺めていた。


 一人は司令官、ヨリトモ・オーギュネイ。連合軍を取り仕切る、元は剣の王国の騎士団長だった男だ。解放騎士リベレーション・ナイトNo.Ⅰゴールディ・ソーディアンの騎士であり、剣匠ソードマスターでもある。

 もう一人はトール・ネイラーン。副司令であり元は剣の王国の副騎士団長であった。解放騎士リベレーション・ナイトNo.Ⅱアージェン・リッターの騎士である。


「最後の最後で逆転負け、か・・・・・・完敗だな」


 ヨリトモの自嘲気味の声には諦めの響きが伺えた。そのため、トールは声を荒げる。


「そんな簡単に負けを認めるものではなかろう!」

「奴らはしたたかすぎたのだ。まさか、惑星丸ごと壊そうとするとはな」

「とは言え、我らには他に手段は無かった。せめて、剣聖達が居てくれれば・・・・・・」

「それは言うな。タルフィナスの神託があっただけでもマシだろう。よもや剣聖達が幽閉されているとはな・・・・・・」


 行方不明の10人の剣聖達について、知の神タルフィナスより神託があったのだ。当てにしていた戦力の消失については、これでようやく理由が付いたのである。この情報に、ヨリトモは自分がむしろ剣匠ソードマスターの格で良かったと安堵したくらいだ。


「友軍に連絡を発信しろ!隕石衝突メテオストライクの被害は最小限にすることが出来た。しかし、戦力消失のため連合軍の維持は不可能。最後命令である。関係者は身を隠せ。来るべき再戦に備え、今は身を隠すべし!」


 ヨリトモの命令に司令室の通信手達は情報を発信するが、その目には涙が溢れている。敗北を認めざるを得ない内容なのだ。そして、これを受け取る味方がほとんどいない事も、受け取れる者も救助を待つ者がほとんどで、それらを切り捨てる内容であることも、その涙に拍車を掛けていた。


 ヨリトモはその後、桜花八州島にある、剣聖用に開発していた解放騎士の開発施設の封印と、要塞内に残る解放騎士の隠蔽を指示し、全員に最後の訓辞を伝える。



「奴らは俺達の痕跡を徹底的に消し回るだろう。そして目立つ行動を取れば確実に連合軍出身者ということは突き止められる。死して霊魂となっても俺達は精霊界において選別され、管理されるだろう」


 ならばどうすればいいのか。兵士達の動揺に、ヨリトモは静かに続けた。


「国を作るんだ。荒廃した地上に、これからは新たな国が必要となる。そしてその中に真実の伝承と、俺達の後継者への情報を隠すんだ」


 トールがそのヨリトモの言葉に声を荒げる。


「そんなことが簡単にできるかっ!第一、たった今目立つことをするなと言ったばかりだろうがっ!」

「だからこそだっ!俺達が王になるのではない。あくまで裏方に回れっ!いずれこの地は復興する。その時に未来への可能性を残すことが、生き延びた我々の使命だ。そして、死した後は精霊界で解放軍を再び結成し、物質界の支援に回る!」


 一般に霊界と呼ばれる精霊界に人は死ねば魂が集められるという。そこからは精霊界に留まって精霊となるもの、精霊力を取り込みつつも自我を残した英霊となるもの、神界に行き直接神に仕えるか、再び輪廻転生をするか、そして魔界に堕ちるか、と言われているのだ。

 これに関しては魔法の王国で研究が盛んであり、そもそもの戦争の発端は、これら神の領域に人が足を踏み入れたからだとも言われている。真実はもっと深いところにあるのだが、現実に今回の戦争では霊界、神界、魔界からの干渉が多々あったのだ。これでは物質界の戦争だけで勝利を得ようとする連合軍は圧倒的に不利であった。


 今回、連合軍に参加したものは、おそらく普通の輪廻転生の枠には入れないだろう。むしろ霊魂を封印されるか、または消失する可能性が高いとヨリトモは踏んでいる。


「死ぬことすらリスクが高い。既に大勢の同胞は霊界へ向かったが、物質界に何らかの手段で留まるのも一つの方法だろう。手段は問わないが、“我々の痕跡を残す”これが私からの最後の願いだ!諸君の検討を祈る!」


 その後、要塞内の兵士達は転移門ゲートを使い、まだ無事な脱出先へとそれぞれが散って行った。最後に残ったのはトールとヨリトモの二人だけである。


「ヨリトモ、私の転移先は西方250ケリーほど先の転移門ゲートにしてくれ」

「あの、桜花オウカ様式の寺院の所か?」

「そうだ。あそこの近くには村があってな、私はそこから手をつけてみたい」

「判った・・・・・・霊界へ行くならまた会おう」

「お前はどうするのだ?」


 トールの質問にヨリトモは静かに答えた。


「まだ決めていないが、おそらく俺はこの地に留まると思う。まずは植物研究室ガーデンラボから、先日完成した生命樹セフィロトの種を地上に散布するところからだな」

「なんだ、それなら手伝いが居るんじゃないか?」

「いや、一人でやらせてくれ・・・・・・おそらく俺は人外になるだろうからな。人に留まったままでこのカルマは拭いきれんよ」


 ヨリトモの静かな瞳に、トールはそれ以上言葉を口にすることは出来ず、二人は転移門で別れたのであった―




 翌朝、ガバッと跳ね起きるシャティル。

 相変わらず、何か長い、すごい夢を見た気がするが・・・・・・寝汗が酷い。


 シャティルは身体を冷たい水で絞ったタオルで拭き、それから身支度を調えることにした。


 朝食後、シャティル達一行はマッサウ、ジーナに見送られ、緑風亭を出発した。ここからはミーナの案内で進むことになる。


 ナギス村の北側は一面の水稲田が広がるが、南側は丘陵地が広がっている。

 村の出口からはシナギー族二人が並んで歩けるくらいの山道が整備されているが、ミーナによるとこの道は丘二つも超えると次第に藪に埋もれ、そこからは獣道しかないらしい。


 村人は普段は近場で野草採集や狩り、薪拾いなどを済ませてしまい、奥へ行くのはしっかりと知識を身につけた狩人や森守レンジャーのみなのだそうだ。


 6月の半ばということもあり、濃密な生育を見せる森の中をミーナを先頭にシャティル、レド、オルフェルの順番で進んでいく。

 ミーナは獣、もしくはドワーフが付けたと思われる草木を寄せ開いた後の獣道を、しっかりと追跡していた。


 ナイフと鉈を腰に差し、背負い袋からは矢筒とクロスボウをぶら下げた姿がミーナの森守レンジャースタイルだ。


 鉈を振るい、邪魔になる小枝や草木を処理するのだがおそらくは先行したギルビーのおかげか、ほとんど枝払いをする必要はこれまでのところない。

 一方で、2番手のシャティルは、小剣を振るって、ミーナの背丈を超える邪魔な枝を払う事に集中している。


 なにしろ、普段通るのがシナギーと猪や鹿、そして直近で利用したのがドワーフということであれば、人族ヒュームには開かれていない道も当然である。


「ところでシャティル、刀使いの君が予備武器に小剣なのはなんでだい?」


鍛冶師であるオルフェルには気になった事であったらしい。


「理由は色々あるよ。一つには剣の扱いを忘れないようにってのかな。刀とは感覚が違うし。それから、狭いところでは刀は使いにくい。小刀でもいいけど、刀鍛冶が少なくて修行に出る4年前には入手できなかったんだ。それと、野外生活するには、ミーナの鉈もそうだけど、重さで切る刃物のほうが便利だからな」


一息つくシャティル。


「いずれは大小二本の刀を腰に差して、腰裏に小剣ってスタイルにしたいなぁ」

「あたしも武器についてはちょっと考えたいわぁ」


 武器スタイルの話題にミーナが加わった。

どうしたいのかとレドが聞くと。


「クロスボウが大きいのよ。手に持って歩けば重いし邪魔だし、こうやって後ろにぶら下げてるけどこれも結構邪魔。かといって弓だと身体が小さい分、張りが小さいから不利だしね。なんか、こう、もっと小さくてそれでいて強力な飛び道具って作れないものかしら」

「ふうん・・・小さくて強力な飛び道具か、面白そうだな、ラナエストに帰ったらちょっと考えて見るか」

「レド、作れるの?」

魔法マジック道具(アイテム)とか作ってるからね。古代秘宝アーティファクト級のものも作ってるよ」


 さらっととんでもないことを言う。

一般の、市井に居る魔法使いにそこまでの技術はない。レドが極めて例外なのだ。


「へぇー!たいしたものねぇ。出来るならお願いしたいわ」

「まぁ、やってみましょうかね」

「これは是非とも一度、皆でレドの所に遊びに行かないとな」

「来ても良いけど。危険なものもあるから自己責任だぞ、シャティル」


 苦笑しつつ答えるレドであった。

 何しろ、魔法学院は入り口からして守護騎士ガーディアンやガーゴイルが守っているのだ。来訪の仕方をきちんと教えないと来客は跳ね退けられてしまう。


 その後、一行があきらかに獣道と思われる空間を見つけ、進んでからおよそ1時間後。ミーナが立ち止まった。シャティルが後ろから声を掛ける。


「ミーナ、どうした?」

「気づいてる?さっき、この獣道に合流してる別の道があったのだけど・・・・・・誰かが別方面から来て、同じ方向に向かってる。少なくともシナギーではない。人族ヒュームの背丈で枝が払われてるし、足跡を見ても複数の大人の跡」


鉱山狙いの冒険者か?とのオルフェルの問いにミーナは首を振る。


「この辺に来て、ナギス村をわざわざ避けるってのが信じらんない。ちょっと注意したほうがいいかもね」


 なにか後ろくらい所のある集団の可能性があるということだ。一行はそこからは口数を少なく、より注意して進むようになった。


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