表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お狐さまのかえる場所  作者: 杉並よしひと
第四章 お狐様と帰る場所
97/109

33

「君には騙されたからね。もちろん、君は嘘を吐いてないと言うんだろうけど」

「解ってるじゃない」

 僕と葛葉さんの会話に、篠田が訝しんだ声を挟み込んだ。

「おい伏見、葛葉さんがどうかしたのか?」

「聞いていれば解るわ」

 僕の代わりに葛葉さんが答える。篠田はそれで納得したのかどうか、葛葉さんの声に言葉を返しはしなかった。

「それにしても聞き捨てならないわね。私があなたを騙したなんて。あなたが勝手にそう信じ込んだだけでしょう?」

 落ち着いた物言いが、ちくちくと癪に障った。

「葛葉さん」

 自然と声に苛立ちが混じってしまう。

「もうこんな事止めようよ」

「何の事?」

「そうやってさ、逃げようとしないでよ。決まってるでしょ?」

 にやり、と葛葉さんは笑うと、僕から目を逸らしてどこか高い所を見る目つきになった。

「どうしてかな。私が君の言う事に従う義理なんて無いと思うけど」

「ねえ、君、犬なんでしょ?」

 ぴたり、と葛葉さんの動きが止まり、彷徨っていた視線も空中に釘付けになった。

「答えてよ。『はい』か『いいえ』で答えられるんだ。僕を騙すか、騙さないのか、どっちなんだよ」

「何でそう思ったのか、理由を訊こうじゃない」

 あくまで葛葉さんは冷静を保っている。冷静を装っているのかもしれなかった。理由を聞かせろ、と言っているが、ここで僕の考えを全部話してしまっても大丈夫な気がした。

「あれから葛の葉狐について調べてみたんだ。有名な昔話だったね。君は自分の名前を『バレバレかな』って言ってた。つまり、葛の葉狐にあやかって自分で自分に名前を付けたんだよね。

 でも、アメノヒが僕の所へ来る前からも、葛葉さんは葛葉さんって名前だった。霊力でいくらでもそこら辺の記憶は弄くれるみたいだから、あんまり強い証拠にはならないかもしれないけどさ、おかしいと思うんだよ、僕は。

 葛葉、なんて名前、解る人が見たら絶対に狐と結びつけちゃうんじゃないかな? アメノヒも言ってたし、そういう風に暮らしてたけど、狐達は自分が狐だって事を隠しながら暮らすんだよね。アメノヒとホクトの名前がどこから来てるのか、僕は知らない。でも葛葉さん、君のはあんまりにも解り易すぎるよ」

「それだけ? 証拠にしては弱すぎるみたいだけど」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ