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お狐さまのかえる場所  作者: 杉並よしひと
第四章 お狐様と帰る場所
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16

「葛葉さん、どうしたの?」

 そう、この人はあの葛葉さんだ。篠田が遊びに誘って、花園さんに叱られてたなあ、とぼんやり思い出す。

「と言うかいつの間に現れたの? さっきまでそこにいなかったのに」

「えっと、ちょっと通りかかっただけなの」

 そう言いながら、恥ずかしそうに微笑む。ああ、やっぱりこの人も綺麗な人だよなあ。なんと言うか、落ち着いた美しさって言うのが滲み出てる。決しておしとやかなばっかりじゃなくて、活発な人なんだけど雰囲気そのものは落ち着いていると言うか。なんだろうね、学年中の男子どもが逆に畏れ多くて声を掛けられないのに、篠田は平気でデートの約束なんか取り付けちゃって。

 残念ながら僕はそこまで葛葉さんと親しいわけじゃない。長い事一緒にいても気まずくなるだけだし、さっさと謝って返ろうと思った。

「驚かせてごめんね」

「良いわ、別に」

 短い会話だけで終わると思ったのだ。でも。

「突然だけど伏見君、あなた、天野比奈さんと仲良いみたいね」

「えっと……、まあ、そうだけど……」

 それがどうかしたのかな。僕が葛葉さんの真意を測りかねていると、彼女は唇に人差し指を当てて、妖し気に笑った。

 そう、西日の射し込む林の中で、その笑みの妖しさは、本当に僕の心をとらえた。

「付き合ってるの?」

 答えない、と言う選択肢を与えないかの様に、葛葉さんの目には力が籠っていた。

 何で親しくもない女の子にそんな事聞かれてるのかなあ、僕は。

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