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お狐さまのかえる場所  作者: 杉並よしひと
第四章 お狐様と帰る場所
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「巧一の行方を知らないかしら?」

 怖い! 何でも無い言葉なのに、大きな瞳の奥に炎がくすぶってる。綺麗な人なだけに、こうやって怒る表情がますます恐ろしい。

「えっと、篠田さんなら……」

「アメノヒ、ダメだって!」

 僕はアメノヒの口をぐいっと手のひらで塞ぐと、大慌てで笑顔を作ってみせた。

「篠田なら、僕も、知らないかな……、あはは」

 花園さんはうさんくさそうに僕を睨め付けると、はあ、と息を吐きながら腰に手を当てた。

「まあ、あんたと巧一がグルだって事くらい解ってるわよ」

 何か僕まで呆れられた気がするけど、仕方ないよね。

「あ、やっぱりバレてる?」

「当たり前じゃない。それより、早く手を離してあげなさいな」

 はっ、と思って自分の手をみると、未だにアメノヒの口許を押さえたまんまだった。アメノヒの顔が真っ赤になっている。

「うわっ、ごめん! 苦しかった? 苦しかったよね?」

「あ、あの、そんなに謝らなくても」

「ううん、ぜんっぜんそんなつもりなかったんだけど、ちょっとした勢いでこんな事になっちゃって、ほんとにごめん!」

「いいえ、その……、暖かかったです……」

「暖かかった……?」

 急に言葉が途切れて、僕もアメノヒも続く言葉を見失ってしまった。だんだんと二人して俯いて、さらに更に会話の糸口が見えなくなって行く。

 暖かかったって、アメノヒ的にはどういう事なの? 良い事なの? 悪い事なの? 「暖かかった」って言われた直後はなんだか心臓がドキドキして、色んな事が頭を駆け巡って、思わずアメノヒを抱きしめてしまいそうだった。

 そもそも断りも無くアメノヒの口を押さえたのは僕なんだし、謝ったのは間違いじゃなかったはずだけど。

 ……暖かかったって、何?

「はいはい、ごちそうさま。もうお腹いっぱいですよー」

 花園さんの呆れ返った声で僕とアメノヒは我に返った。

「まったくもう、そう言う初々しい事は人目につかない所でやりなさい」

「はい、恭香さん」

 え? アメノヒは、人目につかない所で「初々しい事」してくれるの? 何かすごく訳も無く恥ずかしいんですけど。

 ……ってか、だから、初々しい事って何さ。

「で、あなた達は巧一の居場所を吐く気はないと」

 花園さんは「だめだこりゃ」とでも言いたげな表情で肩をすくめた。


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