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「やっぱりアメノヒは綺麗だなあ……」
僕がしみじみと呟くと、アメノヒは完璧に俯いてしまった。
「もう……、止めてくださいよぉ…………、善太朗さん……」
頭の上からふしゅう、と煙でも出て来そうだ。
と、急に僕達の会話を見ていた篠田が、
「そう言えば、さっきのおばさん、いつからあそこに住んでるんだ?」
と尋ねて来た。
「え? 豊川さんの事?」
「ああ、向かいのおばさん。いつから住んでるんだ?」
なんだよ唐突に。そう思っていると。
「巧一あなた、あんなおばさんにまで手を出すの!?」
花園さんの悲痛な叫び声がこだました。
「いつもは多目に見てるけど、さすがにそれはダメよ、巧一」
「恭香さん、落ち着いてください。篠田さんも一時の気の迷いでそんな事をおっしゃったのです。恭香さんも十分大人の魅力に溢れてると思うんですけど、もっと熟成した方の魅力に、一瞬くらっと来てしまっただけですよ、きっと。元気出してください」
アメノヒが微妙にずれた慰め方をしている。
「で、篠田。何でそんな事が気になるの?」
僕は悲しみに暮れて何も言えない花園さんを置いといて、そう篠田に尋ねた。だってさ、大した理由も思いつかないんだもん。もしかしたら本当に篠田は豊川さんに……。
それだけは止めて頂きたいなあ。
「ちょっと伏見。こっち来てくれるか?」
篠田は小さく手招きをして、僕をリビングから廊下へと引っ張って行った。花園さんは未だに天を仰いでしまっていて、こっちの動きには気付いてないみたいだ。
ショックがよっぽど大きかったんだろうなあ。
心の中で両手を合わせて、リビングへと続く扉を閉じた。
廊下はもう薄暗くなっていて、玄関のドアのガラスから一条の光が飛び込んで、そこだけ光の壁が出来たみたいになっていた。篠田はリビングの扉を静かに閉めると、ゆっくりとその扉にもたれかかった。僕も篠田の隣に立って、同じ様にもたれかかる。
「さて」
篠田は何かを整理する様な間を取ると、おもむろに口を開いた。
「何から訊こうかな。さっきはいきなり豊川さんの事訊いちゃったけど」
「何の話だよ」
全く篠田の話の見当がつかない。




