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「でも、困りましたね……。麦茶でいいでしょうか」
「そうだなあ」
と、僕が腹を括ったとき。
「おーい、伏見。何かジュースとかないの?」
あいつめ、こっちの話を聞いてたみたいにナイスなタイミングでそう言う事言いやがって。
ヤツに気を使う必要も無いよな。
「麦茶しかないよ」
「じゃ、それで頼む」
篠田の答えと同時に、冷蔵庫の扉を開けてスタンバイしていたアメノヒが、僕の並べたコップへ麦茶を注いで行く。
二人で作業をすると、一人でやるよりスムーズに進む。
なんだか、最近アメノヒと二人でなんかをするとき、息があって来た気がしてちょっと嬉しい。嬉しくて叫んじゃうとかそう言う感じじゃなくて、くすっと一人で思い出しては笑っていたい感じの嬉しさなんだ。
五つのコップをトレーに並べて、皆の待つリビングへと向かう。篠田はグデッとソファに沈み込んで、すっかりリラックスしてしまっていた。反対に、花園さんはぴしっと背筋を伸ばしてソファへ座っている。
ホクトがいない所を見ると、上に着替えに行ったのかもしれない。
「お待たせー」
僕がそう声を掛けると篠田はぬーん、と体を起こして、
「さんきゅー」
と言いながら、麦茶を啜った。
「うぁー、生き返るーぅ」
篠田のおっさん臭い台詞を聞き流しつつ、テーブルへグラスを並べて行く。
ちょっと暑いなあ。
「窓開けようか?」
「あ、私が開けるよ」
アメノヒがとてとてっ、と小走りで行って、リビングの窓をからりと開けた。気持ちのいいけど、確かに梅雨も感じさせる空気が静かに流れ込む。
「じゃあ、始めようか」
手を叩いてそう言った僕に、花園さんは何とも言えない視線を向けた。え? 何かな?
「あなた達、何かすごく所帯染みてない?」
「あー、それすげー解る」
篠田も麦茶のグラスをテーブルに置きながらそんな事を言っている。
「……そうかな?」




