表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お狐さまのかえる場所  作者: 杉並よしひと
第三章 お狐様と学校
48/109

14

 ふと、アメノヒの鉛筆が止まった。数秒間「うーん」と悩んでから、また鉛筆を走らせ始める。しかし、またアメノヒの鉛筆は止まってしまった。今度はなかなか動かない。

 ……、ああ、その問題ね……。

 アメノヒがくるりとこちらを振り向く。

「善太朗さん」

「あ、僕もそれ解んない」

 アメノヒは「むう」とふくれると、ぷい、と顔を机へ戻した。ごめんなさい、僕も数学は得意って訳じゃないんです。

 と言うか、アメノヒのやってる問題集も、それなりにレベルの高いヤツな気がするんですけど。

「まあ、テストにはそんな難しい問題出ないし、あんまり焦る事も無いんじゃないのかなあ」

「いいえ。私は定期テストのために勉強してるわけじゃないですよ」

 ふうん。初耳だ。

「じゃあ、何でそんなに焦ってるの?」

「善太朗さんは卒業したら、就職されるんですか?」

 唐突だなあ。

「ううん。大学でやりたい事があるんだ。アメノヒは?」

 僕の言葉に、アメノヒは数秒考え込むと、二つの拳を胸の前に持って来た。

「ええとですね……、私も、出来れば、進学を…………したいのです」

 こうして、少しでも具体的な人生設計をアメノヒの口から聞くと、どうも不思議な感じがした。なんでだろう。これだけ賢くて、頑張り屋な所だってあるのに。

 狐の皆さんは勉強をしないみたいだ。つまり、狐の皆さんの大半は、何もしなければ学校へ来る事も無いのだ。

 だから、不思議なんだろうか? そんな理由じゃない気がする。

 でも、それを訊き返すのは、いくらなんでも失礼に思えた。

「なるほどなあ。で、早い所追いつく必要があったんだ」

「はい。それに、解らなかった事が解るのって、楽しいんです」

 無邪気なアメノヒの笑顔をみて、僕はふとある事を思い立った。

「アメノヒ、みんなで勉強しようか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ