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お狐さまのかえる場所  作者: 杉並よしひと
第三章 お狐様と学校
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 もちろんこの土日にあったことは、篠田と花園さんに話したことと矛盾している。だから僕は篠田に、

「転校する時には、色々あるんだよ」

 とだけ言っておいた。今度は篠田も騙されたみたいで、

「なるほどなあ」

 と言っている。ふ、騙され易い奴め。あ、僕がこういう事思うのって珍しいかも。疲れてるのかなあ。

「でもさ、天野さんがお前のいるこのクラスに来るって言うのは、やっぱりどっかで根回しとかしたわけ?」

 どきり、と心臓が跳ねた。たまに篠田はこうやって、無意識に真実を見抜くのだ。ああ、心臓に悪いよ。

「あなたたち、幾つなの?」「さあ、もう数えてもいません」「ならとりあえず学校に行きなさい」

 と言う母さんとアメノヒのやり取りで、急に決まったアメノヒとホクトの転校だけど、案外スムーズに手続きは進んだ。二人はあのとき、隣の部屋で霊力についても母さんに語ったみたいだから、母さんもそれを織り込んで手続きをしたんだろう。

 なにしろ、霊力はとんでもなく便利な代物らしいのだ。アメノヒは

「使い方によっては道に反しますし、消耗がひどいのであまり使いたくは無いんですけど」

 と言って、学校の事務の人に、「自分は転校生だ」と信じ込ませてしまったらしい。

 そんなことを洗いざらい話すわけにも行かない。

「いいや。ただ知ってる人がいるならそっちの方が良いだろうって、学校が気を回してくれただけ」

「ふうん。なるほどな」

 ……篠田はいつか詐欺に引っ掛かりそうな気がする。

 と、チャイムが鳴り、みんなはまだ静まらないまま自分の席へとついた。篠田も「じゃあな」と言って、自分の席へと戻って行った。

 教室の空気を入れ替えるかの様に、担任の先生が入って来た。三十代半ばの女性の先生で、名前を大友優子と言う。普段はからっとしてて良い先生なんだけど、人をからかう癖があるんだよね……。嫌な予感がするぞ。

「おはようございます。朝の会を始めます。ほら、そこ座る」

 先生は教卓に両手をついて、クラスを見渡した。

「じゃあ突然だけどね。みんなに転校生を紹介したいと思います」

 クラスが波の様にざわめいた。なんだろうね、こういう時に自分だけ裏事情を知ってるって言う、ちょっとしたくすぐったい感じ。もちろん日曜の朝に神経を削られたし、もっと言えばこの前は自動車に轢かれかけた。でも、同じ学校にアメノヒが来るって言うのは、これ以上望めないくらいの幸せなんじゃないのかなあ。

「先生! 男子ですか女子ですか?」

 勢い込んだクラスの男子が先生に食って掛かる。大友先生はにこり、と笑うと、

「とんでもない美少女よ」

 と言った。突如クラスの男子が湧き立った。

「おお! 神よ!」

「いよっしゃああああ!」

 その通りです先生! そんな言葉でさえ、アメノヒの前では無力です!

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