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「今日、転校生が来るらしいぜ」
篠田の嬉しそうな声を、僕はめんどくさいなあ、の一心で聴いていた。
だってさ……。転校生ってあの方しかおらんでしょう。篠田がそれを解ってこれを言ってるわけじゃないけど、知ってる側としてはそれをごまかすのも疲れるんだよなあ。
「どんなヤツだと思う?」
「金髪で色白で礼儀正しい可愛い子だと思うよ」
「……なるほど」
さすがに、これで気付かない程、篠田も鈍く無かったみたいだ。
「なんだ。知ってるなら教えてくれれば良かったのに」
「色々あってね……。篠田に教えるわけにはいかなかったんだよ……」
あの日の事を思い出す。ああ、思い出すだけでげんなりするなあ。




