表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お狐さまのかえる場所  作者: 杉並よしひと
第二章 お狐様と散歩
30/109

17

「彼女は…………、天野比奈あまのひなって言うんだ。小さい頃からのご近所さんなんだけど、ご両親が両方とも海外に行くことになって、今うちで色々面倒を見てるんだ」

「天野比奈です。よろしくお願いします」

 アメノヒは篠田に向き合い、いつか見た深々としたお辞儀をした。……巧く行ったか?

「そうかあ。そうならそうと早く言ってくれりゃ良かったのに!」

 篠田はにかっ、と笑うと、バシバシと僕の背中を叩いた。痛い痛いいたっ、おほん、ごほんっ、おえええ。

 隣では、アメノヒが花園さんにもお辞儀をしていた。ホクトだけが「?」と首を傾げているけど、そこはアメノヒが巧くやっていた。

「はじめまして、天野比奈と申します。私より背が高いですが、こちらは妹の天野北都あまのほくとと申します。両親が長期出張で家を空けておりまして、家族ぐるみのお付き合いをさせて頂いている善太朗さんの家でお世話になっています」

「ちょ、アメ様。何を言って……」

 ホクト、余計なことを言うな! 僕はそう思いながら、ホクトを必死の形相で睨みつけた。アメノヒは何がなんだか、と言う感じで、一応黙り込んだ。黙ってろよ、黙ってろよ?

 アメノヒが頭を下げるのを見て、ホクトもおもちゃのロボットみたいにギコギコと頭を下げた。油が切れてそう。

「そうでしたか。私は花園恭香、そこの男は篠田巧一と申します。どうぞ宜しく」

「はい。よろしくお願いします」

 不承不承、と顔に書いてありそうな空気を発しながら、ホクトもお辞儀をした。

 なるほどなあ。一瞬おろおろするけど、基本的にこう言うことに関しては器用なんだな、アメノヒは。

 とにかく、危ない所もあったけれど、何とか無難な形で収まったわけだ……、あっ!

 十二単! そんな地雷もあったよ、そう言えば!

 そして、花園さんはまさに今、その地雷を踏んづけた所だった。

「いきなりで失礼なんですけど……、何でそのような服装なんですか?」

 ホクトが「あちゃー」という顔をして頭を抱えた。僕も同じ気持ちです。

 ほんとにさあ、この格好は可愛いとか似合ってるとか抜きにすると、物凄く怪しいだけなのだ。だから、ここに来て服を買おうとしていたのだ。

 なのにね。ここに来てね。こんなことになるなんてね。

 上手くいかないなあ。

 しかし、アメノヒはもう焦らなかった。

「ああ、これは私の趣味です。ですが、妹と善太朗さんに『変だ』と言われた物ですから」

「……、あら、そう」

 花園さんは一瞬天を、いや天井を仰ぐと、次の瞬間には普通の表情に戻っていた。

「まあ、人の趣味は色々ですからね」

「はい。私もそう思ったのですけど、確かにこの格好が周囲と違うのも確かですから」

 アメノヒはそう言うと、「ふふふ」と控えめに笑って、

「こうして買い物に来た次第です」

 と言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ