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お狐さまのかえる場所  作者: 杉並よしひと
第二章 お狐様と散歩
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「ふー、食った食った!」

 ホクトが自分のお腹をさする。ホクトは、背は高いけど細身な人だ。どこに吸い込まれて行ったのか、醤油ラーメンのチャーハンセットはあっという間にテーブルから消え、「私はあまりたくさん食べられませんから」と言うアメノヒから、さらにラーメンを半分程貰って行った。その後、更に油そばを一つ平らげた。それなのに、全く体のラインが変わっていない。あんたはブラックホールか。

 そのうえ。

「何か甘いものの店、知らないのか?」

 と、僕に横柄な言葉で訊いて来たのだ。すげー食うなこいつ。

 でもまあ、知っていて教えないのも趣味が悪いしな。

「隣の『笹子』ってたい焼き屋、美味しいよ」

「すみません、こし餡三つ!」

「はーい、こし餡三つですね。四百五十円です」

 中学生くらいの店員さんが、奥へと引っ込んで行く。そうそう、子どもが手伝ってるお店って言うのも結構あるんだよなあ。労働は尊いぞ、君。そこのホクトみたいに名ばかりの「護衛」とは違って、ね。

 それにしてもホクトは相変わらず動くのが速いなあ。何故だか感動さえ覚える。あれだけ欲望と自分の思いに素直だと、清々しささえ覚えるよ。

 とりあえず欲張りなホクトの事は置いておいて、この後の事を考えようか。

「アメノヒ、もう少し吉城寺を見て回らない? アメノヒは吉城寺久し振りみたいだし、楽しいと思うんだ」

 言うまでもなく、僕は楽しいです。

「ええ。ちょうどお天気もいいですし、そうしましょうか」

 やった! アメノヒと吉城寺をそぞろ歩けるぞ!

「アメ様、どうしたんですか? はい、アメ様の分です」

 ホクトはたい焼きを三つもって、こっちへやって来た。

「ありがとう、ホクト」

「えへへ、どう致しまして」

 あまりにも自然にアメノヒが手を伸ばし、ホクトも渡してしまうから、僕も手を伸ばしてしまった。

 でもね、忘れてたんだよ。

「何だ貴様、その手は」

「え、何って……」

「たい焼き一つ百五十円と、同額の手間賃を払えばこのたい焼きはやるぞ」

 こいつはこー言うヤツだった! 人を舐めてやがる。倍の値段を払う分けないだろ。

「じゃあいーや」

「おお、そうか」

 そう言うと、ホクトは一つ目のたい焼きを「はふっ、はふっ」と言いながら食べ終わると、二つ目のたい焼きをほぼ二口で食べ終わってしまった。ああ、なるほど。三つのたい焼きの内訳は、アメノヒの分の一つにホクトの分二つだったわけか。紛らわしいな勘違いしちゃったじゃないか。


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