第七話 懐かしき故郷の味
死体を食べ終えた私は、その場に残ったレイラの服を着ることにした。
下着とズボンと靴を履き、上着着てマントを羽織る。
ちょっとダボダボね。とはいえボロや裸に比べれば全然マシかしら。寒くないし。でもマントは邪魔だから捨てていきましょう。
「さて、町はどっちかしら」
町の方向くらい聞いておけばよかったわね。
まぁいいわ。適当に歩いてればそのうちまた人間に会えるでしょう。
そのときにでも聞けばいいわ。
ぐぅ…………とお腹が地鳴りのような音を立てる。
人間のことを考えてたらお腹が空いてきた。
早く会えないかしら?
しかしその後私の予想に反して人間に出会うことはなかった。
いや、人間だけじゃない。
食べモノに会えない。
え?なんで?私が悪いの?お腹が空いて死んじゃうじゃない。
結局この日は何も口にできないまま寝ることになった。
ひもじい…………。
次の日、食べモノを探して彷徨っていたらついに森を抜けてしまった。
目の前にはだだっ広い大草原が広がっている。
目を凝らして辺りをよく観察すると、左の方の草が不自然に揺れるのが見えた。
何か動いたわ!
草の揺れる方へ走り出すと、草から一匹の犬が飛びで出してきた。
犬は私を見るなり、すぐに大草原を走って逃げだした。
棍棒を片手に追いかけるものの距離は縮まるどころかあっという間に離れていってしまう。マルと違って足が速すぎる。
これは…………、無理ね。
獲物を目の前に逃してしまう悔しさ、何度経験しても嫌なものね。
「あーもうやってられないわ!」
私は棍棒を投げ出して草っぱらに寝っ転がった。
追いかけて損した。お腹が空いて損した。はぁ…………もうなにもかもがどうでも良くなってきたわ。
もうこのまま不貞寝してやろうかしら。
「ウォォォォォォォォォォォン!」
犬の遠吠えが聞こえてくる。
もしかして勝ち誇っているのかしら。腹が立つわね。丸焼きにして喰ってやりたいわ。
こんなことなら弓も持ってくれば良かった。まさか私が鬼ごっこで敵わない肉がいるなんて。
ああ…………お肉…………。
マルが恋しいわ。
寝っ転がったまま空を見上げると、澄み渡る青空に白い雲がひとつぷかぷかと浮かんでいる。
その形はまるで肉塊にそっくりだった。
肉塊の形をした雲を見ていると胸の高鳴りを感じる。
もっとわかりやすくいえばドキドキしてくる。
恋ってこんな感じなのかしら?
素敵なものね。
私もあの雲のように素敵な肉塊と出会いたいわ。
いつの間にか出ていた涎を拭ってむくりと身体を起こすと、周りを犬に取り囲まれていた。
素敵!
「「「グルルルルルルル!」」」
いち、にぃ、さん、しぃ、いっぱい!
大きさも小型犬だったマルとは比べモノにならない。中型犬くらいだろうか。
これって夢じゃないわよね?
凄い、凄いわ!肉が私のところへ帰って来てくれるなんて!しかも仲間まで連れて!
地面に放り捨てていた棍棒を拾って両手で構える。
1日ぶりの肉たちが私の周りをぐるぐる回り始める。
空腹は最高のスパイスっていうけどそんなに焦らさないでよ。涎が止まらなくなるじゃない?
そして遂に犬が一匹飛びかかってきた。
「カッキーンッ!」
「ギャンッ!」
棍棒をフルスイングして犬の頭を殴りつけると首のところで綺麗に直角に折れて絶命した。
「ガルルルルウッ!」
しかし棍棒を振りきった私に向かってもう一匹の犬が飛びかかってきて勢いに負けて押し倒されてしまう。
私の喉目掛けて喰いかかってくる犬に腕を割り込ませて防ぐが、そこへもう一匹飛びかかってくる。
「ウフ、足の速さでは負けたけど早食いでは負けないわよ?」
次々と犬が飛びかかり、至るところに噛みつかれるが、こちらも負けじと腕に噛みついている犬に噛みつき返す。
痛いことには変わりはないが、不思議と腕の肉を多少食いちぎられたところで腕を動かすのに全く支障がない。
しかも首の肉を噛み切って飲み込むと、犬はもがいた挙げ句パタリと動かなくなり、私の食いちぎられた身体の食べモノ効果で傷も治っていく。
それでも犬たちは私に牙を突き刺し肢体に噛みついてくるが、私はそれに構わず次の犬の足の付け根に歯を立てた。
そのまま足を噛み切り飲み込むと体の傷はまた治り、足を一本失った犬は体をピクピクと痙攣させならがなぜか動かなくなってしまった。
それをいいことにその二匹の犬を一気にむさぼり尽し、噛まれたところから傷を修復していく。
周りの犬たちも負けじと私に噛みつき、爪を立て、肉を食いちぎるが、傷が癒える速度の方が速い。
[グレイウルフ完・食! 取得経験値 126 取得能力値 狼の敏捷(1/2) 取得スキル 牙Lv1 爪Lv1]
[グレイウルフ完・食! 取得経験値 132 取得能力値 狼の敏捷(2/2) 取得スキル 牙Lv2 爪Lv2]
「ごちそうさま。あなたたちも十分美味しかったわ。でもマルの方が柔らかくって味は上ね」
次に足に噛みついている犬の首もとを鷲掴みにする。犬は咄嗟に私に噛みついていた口を放して頭を振って逃れようとするが、ぐっと地面に押さえつけるように抑え込もうとすると、爪が犬の首もとにグサリと食い込んでいく。
「グルルルルル…………クゥーン」
すると先ほどの犬と同じように痙攣して動かなくなってしまった。
あら、何か様子がおかしいわね。
犬の首から手を離してみると長く尖った爪が指から生えていた。
ふーん、なるほど。これで刺すと犬は動かなくなるわけね。
私は周りに纏わりついている犬たちに片っ端から爪をぶっ刺していく。
肉がひとつ。肉がふたつ。肉がみっつ。肉がいっぱい。
順番に爪を突き刺していくと、やがて周りに動ける犬はいなくなっていった。
「これでゆっくり食べることができるわね」
なんて素晴しい爪なんだろう。
敵を捕えて動けなくする。まるで蜘蛛の糸みたい。
マルよりは美味しくないけど緑人間よりはずっと美味しい。
何よりいっぱいあるのが嬉しいわ。
でもこれで足りるかしら?
[グレイウルフ完・食! 取得経験値 154 取得能力値 なし 取得スキル なし]
[グレイウルフ完・食! 取得経験値 86 取得能力値 なし 取得スキル なし]
[グレイウルフ完・食! 取得経験値 116 取得能力値 なし 取得スキル なし]
[グレイウルフ完・食! 取得経験値 130 取得能力値 なし 取得スキル なし]
[グレイウルフ完・食! 取得経験値 102 取得能力値 なし 取得スキル なし]
[グレイウルフ完・食! 取得経験値 96 取得能力値 なし 取得スキル なし]
[グレイウルフ完・食! 取得経験値 129 取得能力値 なし 取得スキル なし]
[グレイウルフ完・食! 取得経験値 123 取得能力値 なし 取得スキル なし]
[グレイウルフ完・食! 取得経験値 121 取得能力値 なし 取得スキル なし]
全く足りなかったわ。
名前 黒絵
クラス 魔物喰らい
レベル 15 (経験値5802)
力 飢餓に苦しむ16才の少女が食べモノを目の前に発揮する凶暴性
体力 グレイウルフ程度。最大速度で20分。半分の速度なら7時間走り続けることができる。
魔力 Eランク魔術師の半分程度。低レベルの魔法を数回使うことができる。
知性 Eランク神官の半分程度。肉と野菜の区別がつく。
敏捷 グレイウルフ程度。最大速度70km/hを記録する。
器用 Eランク弓士の半分程度。簡単な罠の解除にも苦戦する。
魅力 若作りショタ神官の半分程度。百人中四十九人に負ける平凡な美貌。肌年齢29歳。
運 現代社会で飢餓に苦しみつつも16才まで生き抜いてきた悪運
装備
武器 棍棒
防具 レイラの服
レイラの下着
耐性
毒・麻痺・幻覚・精神喪失
弱点
光
専用スキル
存在捕食 食べたモノの半分を得る。
悪食無道 食べたモノを全て消化する。
絶交満腹 満腹感を完全に失う。
汎用スキル
繁殖力 大 自然排卵から交尾排卵へ変化。異種交配可。着床率、安産率、飛躍的に上昇し、妊娠期間が大幅に短縮される。
不死 死亡しても活動可能となる。光属性に弱い。
吸血 小 他者の血を摂取することでHP・SP・MPを小回復する。
猛毒 大 攻撃に猛毒(大)を付与することができる。
麻痺 大 攻撃に麻痺(大)を付与することができる。
幻覚 大 攻撃に幻覚(大)を付与することができる。
マインドブラスト マインドブラストを放つことができる。
ネット 中(1/2) スパイダーネット(小)を射出することができる。
統率Lv1 統率する仲間の行動にボーナスを与える。
斬撃Lv1 斬撃攻撃にボーナスを得る。
剣技Lv4 剣の扱いにボーナスを得る。
鈍器Lv2 鈍器の扱いにボーナスを得る。
杖術Lv1 杖の扱いにボーナスを得る。
弓技Lv5 斬撃攻撃にボーナスを得る。
牙Lv2 噛み付き攻撃にボーナスを得る。犬歯が伸びる。出し入れ不可。
爪Lv2 爪攻撃にボーナスを得る。爪が伸びる。出し入れ可。
精霊魔法Lv4 精霊魔法を扱うことができる。
神聖魔法Lv3 神聖魔法を扱うことができる。
罠設置Lv4 罠の設置にボーナスを得る。
罠解除Lv3 罠の解除にボーナスを得る。