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第一話 鬼ごっこは程々のスパイス

 ぐぅぅぅぅぅ…………と呼んでもないのにお腹が自己主張を続けている。

 この音をずっと聞いていると段々イライラしてくるのよね。

 はいはい、分かってますって。

 何か食べられそうなモノはっと…………。

 見渡す限り木だけはたくさん立ってるけど、木の実はなさそうね。下には草とムカデ一匹。


 私は地面を這うムカデをつまむと口の中へと放り込んで頭を噛み潰す。

 ブチッ、クチャクチャクチャ。

 ムカデって頭を噛みつぶしても口の中で必死になって這いまわるから微妙に噛みづらいのよね。

 でも食べモノはしっかり噛まないと。

 ほら、ごはんはよく噛んで食べましょうって言うでしょう?そんなことはその辺のクソガキでも知ってるわ。

 よく噛みつぶして口の中ですり身になったムカデを飲み込むと目の前に変な文字が宙に浮かび上がってきた。


[森ムカデ完・食! 取得経験値 1 取得能力値 なし 取得スキル 毒 小(1/2)]


 は?なにこれ?

 食べれるの?


 文字を手で掴もうとするが全然掴めない。

 クソッ、無駄に体力を使わされて最悪の気分だわ。ムカデだけじゃ腹の足しにもならないし、他に食べモノはないっての?


 辺りを注意深く見回すと変な生き物と目が合った。

 緑色の肌をした人型の生き物。

 背は私より低くくて瘦せている。おまけに顔は皺だらけ。

 手には木でできた棍棒のようなものを持っている。

 野蛮そうな雰囲気が全身から滲み出ているわ。ウフ、緑人間って呼ぼうかしら。人間も野蛮だし、ね?


「ねぇそこのあなた。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「ギギッ!?」


 どうやら言葉が通じないらしい。

 あのクソみたいな青服どもと一緒ね。あらあら、棒を振り上げて私の方へと向かってきたわ。

 ホント野蛮。

 でもね、お前はあの糞共と違って一人でしょう?


「ウフフ、ごちそうさま」

「ギッ!?」


 私は棒を振り上げようとする緑人間の腕を掴み上げ、頭を右手で押さえつけてそのまま緑人間を押し倒して馬乗りになると思わず笑みが零れた。口の中の唾液も止まらない。


「いいえ、この場合はいただきます、かしら」

「ギ、ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 そのまま緑人間の首に歯を立てるとそのまま肉を食いちぎった。

 もぐもぐと味を確かめるように口の中で咀嚼する。

 不味まずっ、見た目通りクソみたいな味しかしないわね。でもお腹が満たされるなら贅沢なんて言ってられないわ。


「それにひとつ答え合わせもできたしね。肌は緑なのにやっぱり血の色は赤、人間と一緒!ウフフフフ…………やっぱり緑人間で正解だったようね」


 ビクンビクンと身体の跳ねる緑人間から二口目をいただく。

 すると痙攣していた緑人間はすぐに動かなくなった。

 これで食べやすくなったわね。手足を捥いでも良かったんだけど、今回は上品に頭から順に食べていこうかしら。大きいと喰いごたえはあるんだけど喰いにくいのが難点よね。とはいえまだ食べられるだけ幸せだわ。まともな食事にありつけたのは何か月ぶりだったかしら?…………やめましょう、思い出したらもっとお腹が空いてきそうだわ。

 脳も、骨も、肉も、内臓も、ひとつ残らず噛み砕いてお腹の中へと納めていく。

 ご飯は残さず食べるものだから。

 私、ご飯を残すクソみたいな奴を見ると思わずぶち殺してやりたくなるのよね。


「ごちそうさまでした」


 口の周りにべっとりと付着した血を手で拭うとまた目の前にあの糞みたいな文字が浮かび上がってきた。


[ゴブリン完・食! 取得経験値 16 取得能力値 なし 取得スキル 繁殖力 大(1/2)]


 だから何なのよこれは。まぁどうでもいか。どうせすぐ消えるんだろうし。食べられないし。考えてもお腹は膨れないし。

 緑人間の持っていた棍棒を手に取る。

 とりあえずこれは貰っておこうかしらね。餌集めに使えそうだわ。

 棍棒を手に立ち上がると私のお腹がぐぅ、とまた悲鳴をあげた。

 はぁ…………それにしてもお腹が空いて仕方がないわ。お腹をさすってみるものの、空腹感がまぎれる気配はない。

 昔はこれくらい食べたら少しくらいはお腹が満たされていたのに、今は全然喰いたりない。

 腹の足しにもなってない。

 もうずっと何も食べてなかったからお腹が空きすぎてるのかしら。喰い溜めならぬ空腹溜めね。

 もっともっともっともっともっともっともっともっとたくさん食べないと。

 はぁ…………、とため息をつきながら顔を上げるとまた緑人間と目が合った。


「ギャッ!」


 あら、今度は逃げだしたわ。

 服…………といってもボロだけど、ボロに付いた緑人間の血に怯えたのかしら?


「ウフフ…………鬼ごっこはたくさんしてきたけど、鬼をするのは初めてね」


 手に付着した血をペロリとひと舐めして余韻を楽しむと私は緑人間を追いかけて走り出した。

 緑人間は森の中を必死になって走って逃げているみたいだけど全然遅い。あの青服たちよりもずっと。足が短い分だけ遅いのかしら?背中がぐんぐん近付いてきたわ。


「アハ、アハハハハッ!鬼って面白いのね!もうすぐあなたを食べられると思うとお腹が減って仕方がないわ!これって焦らされてるのよね!あなたはさっきの食べモノよりもずっと美味しく食べられるような気がするの!ねぇ、試させてよ。ねぇ!!!」

「ギャギャ!ギャッ!ギャッ!」


 今度の緑人間は右手に錆びたナイフを持っている。逃げ切れないと思ったのかそれを滅茶苦茶に振り回しながら後ずさっていく。


「あらあら、諦めたらダメじゃない。子は捕まったらおしまいなのよ?」


 私は手に持った棍棒でナイフを持った手を打ち払うと、緑人間の頭に向かって真っすぐに振りおろした。


「ギャブッ」


 頭蓋骨が砕けるような感触が手に伝わり、緑人間はその場で崩れ落ちて動かなくなった。


「つーかまーえたっ!ウフフ」


 へしゃげた緑人間の頭を両手で掴みあげる。


「あらら、汚くてとっても不味そう。でも心配しなくていいわ。残さず全部食べてあげるから。やっぱりひとくち目はその柔らかくてすぐに折れそうな喉元からかしら?それじゃあ、いただき・ます!」


 私は大口を開けて餌にかぶりついた。

 初めて捕まえて食べた緑人間はさっきのよりもほんの少しだけ美味しいような気がした。


[ゴブリン完・食! 取得経験値 27 取得能力値 なし 取得スキル 繁殖力 大(2/2)]

名前 黒絵(クロエ)

クラス 魔物喰らい

レベル 3 (経験値44)

 力 飢餓に苦しむ16才の少女が食べモノを目の前に発揮する凶暴性

 体力 飢餓に苦しむ16才の少女が食べモノを目の前に発揮する諦めの悪さ

 魔力 飢餓に苦しむ16才の少女が食べモノを目の前にしても発揮されない枯れ井戸

 知性 飢餓に苦しむ16才の少女が食べモノを目の前に発揮する野生

 敏捷 飢餓に苦しむ16才の少女が食べモノを目の前に発揮する機敏さ

 器用 飢餓に苦しむ16才の少女が食べモノを目の前に捨て去った器用さの残りカス

 魅力 飢餓に苦しむ16才の少女が食べモノを目の前に捨て去った魅力の残りカス

 運 現代社会で飢餓に苦しみつつも16才まで生き抜いてきた悪運


装備

 武器 棍棒

 防具 ボロい布きれ


専用スキル

 存在捕食そんざいほしょく 食べたモノの半分を得る。

 悪食無道あくじきむどう 食べたモノを全て消化する。

 絶交満腹ぜっこうまんぷく 満腹感を完全に失う。


汎用スキル

 繁殖力 大 自然排卵から交尾排卵へ変化。異種交配可。着床率、安産率、飛躍的に上昇し、妊娠期間が大幅に短縮される。

 毒 小(1/2) 物理攻撃に毒(極小)を付与することができる。

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